- 火星の南極の氷河の下には塩水湖がある、と研究者たちは考えている。
- それらの高濃度の塩水には、微生物が存在する可能性がある。
- NASAの探査車「パーサヴィアランス」は、地球外生命体の痕跡を探すために火星に向かっている。
科学者たちは火星の南極の氷冠の下に塩水湖を発見した。このような湖は塩分濃度が非常に高いため、低温であるにもかかわらず凍ることがないと考えてられている。
2005年から火星を調査してきた探査機マーズ・エクスプレスは、これまでに湖の痕跡を発見したことはあったが、その湖が液体なのか、何を含んでいるのかは不明だった。
これを解明するために、イタリア、ドイツ、オーストラリアの研究者グループは、地球の観測衛星が南極の地下湖を検出するために使う無線エコー技術を応用した。彼らは2010年から2019年にかけてここを何度もスキャンし、9月28日、その解析結果をNature Astronomyで発表した。
それによると、火星の地下湖が液体で、塩分濃度が非常に高かった。
この研究を率いたイタリアのローマ・トレ大学の地球物理学教授、エレナ・ ペッティネッリ(Elena Pettinelli)はNBCニュースに対し、科学者は火星にこうした湖が存在することについて「今ではさらに自信を深めている」と語った。
「さらに多くの観測を行い、データを完全に異なる方法で処理した」とペッティネッリは付け加えた。
さらに、論文によれば、「地下の湖の周囲の至るところに水が存在する、もっと広範囲で複雑なシナリオ」も発見したという。
今回の発見は、火星に生命が存在することの新たな可能性を示している。
生物は火星の地下湖に退避したかもしれない
科学者たちは、火星の表面はかつては川や湖、海などがあったが、太陽からの粒子の流れが大気を取り払い、表面の水はすべて蒸発したと考えている。対照的に地球は、強い磁場のおかげで、大気と水を保持することに成功したのだ。
NASAの探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影した火星のシドニア地域の南部は、多くのクレーターと過去の水系によると思われる水路の残骸で占められている。
火星の表面に存在していたかもしれない微生物は、水がなくなったときに地下に移動していたかもしれない。おそらくは火星の南極の氷の下にある湖のような場所に。
新しい研究結果は、そのような湖が火星では多く存在する可能性があることを示している。
「単一の地下湖の存在は、火山の存在など、その場所に特有の状況に起因する可能性が高い」とペッティネッリはサイエンス・アラートに語った。
「しかし、水系としての複数の湖の発見は、その形成過程が比較的単純であり、おそらくは遍く存在することを示唆している」
しかし、懐疑的な科学者もいる。
惑星科学者のジャック・ホルト(Jack Holt)はNBCに、ペッティネッリのチームが地下の水だと言っているものは「せいぜい、まだらな湿った堆積物だ」と語った。
「しかし、それさえ無理かもしれない」とホルトは語った。火星は、地下の塩分濃度の高い水に対してさえも寒すぎるかもしれないからだ。これらの湖が液体であったとしても「極冠の端に沿って湧き出る泉があるはずだ。しかし、それは見つかっていない」と付け加えた。
火星に生命が存在したかどうかはわかっていない。その疑問を解明するために、NASAは2020年7月に原子力で稼働する探査車「パーサヴィアランス」を打ち上げた。このミッションは、赤い惑星の表面で古代の生命の兆候を探し、岩石のサンプルを地球に持ち帰るという将来のミッションの準備するように計画されている。 パーサヴィアランスは2021年2月18日に火星に着陸する予定だ。
NASA科学ミッション本部のトーマス・ズルブッヘン(Thomas Zurbuchen)局長は、探査機打ち上げの際に「そこの生命は存在するのか。我々はその問いに答えるために20年間火星の環境について学んできた」と述べた。
「初めての宇宙生物学のミッションを行う準備はできている」
[原文:Scientists detected a set of salty lakes on Mars, hidden below the glaciers of its south pole]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)