米電気自動車最大手テスラ(Tesla)のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)。韓国LG化学への機敏な出資で需要逼迫する車載電池の確保に動く考えか。
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米電気自動車(EV)最大手テスラが、韓国のLG化学の電池部門への出資を検討しているという。韓国英字紙のコリアタイムスが9月29日に報じた。
LG化学はEVの普及にともなう車載電池の需要急増を受け、12月1日に電池部門を分社化し、新たに100%子会社「LGエナジーソリューション」を設立することを発表。コリアタイムスによれば、テスラはこの新会社の「最大10%の株式取得を検討している」という。
テスラは自社EVの受注増を背景に、車載電池およびその原料となるリチウムの安定供給確保を急いでいる。LG化学の電池子会社への出資も、そうした取り組みの一環とみられる。
2021年夏の操業開始を目指して独ブランデンブルグ州グリュンハイデで建設が進むテスラのギガファクトリー。環境規制をクリアして、電池工場も併設されるか。
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同社はパナソニックと共同で米ネバダ州の車載電池工場「ギガファクトリー1」を運営。2017年に生産開始、今年8月には増産に向けて生産ラインを新設する計画を明らかにしている。
なお、テスラは当初、パナソニックと車載電池の独占供給契約を結んでいたが、2019年8月に解消し、翌9月からはLG化学も供給を開始。2020年夏からは、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)も続くなど、供給ソースの拡大と多様化を進めている。
また、ドイツ・ベルリン近郊ブランデンブルグ州でも、2021年夏の操業開始を目指し、車載電池工場を建設する計画が進む。ブルームバーグの報道(9月23日)によれば、同州の農業・環境当局は年内にも工場建設を正式に認可する見通しという。
さらに、9月22日には電池事業に関する説明会「バッテリーデー(Battery Day)」を開催し、低コストの車載用リチウムイオン電池を自社生産する方針を発表している。
世界のEV向け車載電池の「4分の1」をLG化学が供給
そうした車載電池への需要増を一身に受けたのがLG化学で、2020年第1四半期(1〜3月)のEV向け車載電池供給量で、同社は初めて世界トップシェアを獲得した。テスラが同期に販売したEVの14%をLG化学が供給している。
冒頭のコリアタイムス記事によれば、LG化学のEV向け車載電池供給量シェアは今年7月時点で25%を超え、中国のCATLやパナソニックを引き離しつつある模様だ。
LG化学はテスラ以外のEVメーカーとも車載電池生産プロジェクトを進めており、米ゼネラル・モーターズ(GM)との合弁事業では、米オハイオ州にアメリカで2件目となる電池工場を建設中。中国の吉利汽車(Geely)とも、2021年末までの操業開始を目指して合弁工場の建設計画を進めている。
最近では、2021年末の閉鎖を予定している日産自動車のスペイン・バルセロナ工場を10億ユーロ(約1250億円、別途スペイン政府から約750億円の補助金あり)で買い取り、車載電池工場に転換する方針を明らかにしている。
実現すれば、ヨーロッパではヴロツワフ(ポーランド)に続く同社2件目の車載電池工場となる。
(文:川村力)