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『半沢直樹』の帝国航空案件が現実に起きたら…銀行関係者ならツッコみたくなる「貸倒引当金」の存在

会計とファイナンスで読むニュース

Hachi888/Shutterstock

「やられたらやり返す、倍返しだ!」——第1シーズンから7年の時を経て帰ってきた『半沢直樹』。高視聴率を記録して先ごろ最終回を迎えましたが、東京中央銀行を中心にしたバンカーたちの奮闘に心奪われた人も多いのではないでしょうか。

何を隠そう、私もその一人。自宅になかったテレビをわざわざ買って毎週楽しむほどハマってしまいました。

『半沢直樹』の魅力のひとつはそのリアリティです。銀行内での派閥を含めた社内政治や他部署との連携や縄張り争いを含めた人間関係など、銀行関係者なら「あるある!」と膝を打つような細部の描写は、三菱銀行(当時)出身の原作者である池井戸潤さんならでは。私自身、新卒で12年間強銀行に身を置いていた経験もあり、物語の小ネタも含めて楽しめる作品でした。

ただし「リアリティがある」とはいってもそこはドラマ。銀行関係者ならば「実際にはそうはならないだろう」と思う点も当然あります。

そこで本稿では、もしも『半沢直樹』の帝国航空案件が現実世界で起こったら……という想像を働かせながら、銀行の中枢業務の一つである「融資」と、その際に重要な役割を果たす「貸倒引当金」について解説してみたいと思います。

※以下、『半沢直樹』2020年版第2部のネタバレが含まれます。

鍵は「500億円の債権放棄」

『半沢直樹』2020年版第2部のストーリーは、およそ次のようなものです。

主人公・半沢直樹(堺雅人)が所属する東京中央銀行は、帝国航空に対して700億円にも及ぶ融資をしています。しかし帝国航空の経営は危機的な状況。そこで国土交通大臣の諮問機関である再生タスクフォースは、東京中央銀行ら銀行融資団に対して7割もの債権放棄を要求します。

要求を飲めば、東京中央銀行は500億円もの損失を被ることに。そうはさせまいと、半沢直樹は帝国航空、国交大臣、金融庁、国会議員、銀行の頭取や取締役らを巻き込んで奔走します。

結局、東京中央銀行は「帝国航空の債権放棄」という国からの要請を拒否。すると金融庁検査を通じて検査官の黒崎(片岡愛之助)が送り込まれ、帝国航空の過去の再建案について銀行の重大な過失が見つかってしまいます。

この過失により、東京中央銀行は金融庁から業務改善命令を受けて大ピンチに——。

ドラマ『半沢直樹』第6話の予告動画

TBS公式 YouTubeチャンネルより

「今回の件で万が一うちに落ち度があったと判断されれば、金融庁から業務改善命令が出されることは避けられない! そうなったらもう、うちは沈没だよ! 銀行沈……没(ヴォツ)!!!」

このセリフは、東京中央銀行の大和田取締役(香川照之)のもの。500億円の債権放棄という国からの要請を拒否したことがもとで、東京中央銀行は業務改善命令を受けることになり、さながら銀行が沈没するほどのダメージを負ってしまいます。

出演者たちの迫真の演技も手伝って、まさに手に汗握る展開に私も思わずテレビにかじりついて見ていました。ただし銀行の内実をよく知る立場からすると、ここで多少の違和感を覚えたのも事実です。

業務改善命令といえば、銀行にとってイエローカードをもらうようなもの。業務改善がうまくできなければ一部の業務に対してレッドカードをもらい、業務「停止」命令を受ける可能性もあります。500億円の債権放棄をするよりもよほど手痛いペナルティです。

ドラマでは、東京中央銀行は融資先である帝国航空の再建案の数字を改竄していたことを金融庁に指摘され、業務改善命令を受けることになりました(※1)。

場合によっては銀行の経営に大きく関わるほどのインパクトをもたらす業務改善命令を甘んじて受けてまで「500億円の債権放棄」を拒否する姿勢を貫くなんてことがあるだろうか……。というのも、現実の世界ではこのような場合、銀行は「貸倒引当金」を積んでいるはずだからです

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