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「出演者が呼べない」「広告収入40%減」コロナ禍に苦しむ地方局のいま

コロナ禍で地方局はどんな課題に直面しているのか。宮城県内で活動するフリーアナウンサーから見た現状とは…。(写真は仙台駅)

コロナ禍で地方局はどんな課題に直面しているのか。宮城県内で活動するフリーアナウンサーから見た現状とは…。(写真は仙台駅)

GettyImages/Hiroshi Higuchi

新型コロナウイルスの収束が見通せず、地方経済への打撃も深刻さを増している。

地方のテレビ・ラジオ局も、もちろん例外ではない。新型コロナウイルスの影響は広告収入や番組の編成にも及んでいる。一方、制作現場では番組の構成や取材方法に頭を悩ませ、働き方を見直すに機会になっている。

宮城県でフリーアナウンサーとして働く私も、身をもってその影響を感じている。本来ならば毎週のようにあったCM収録が月に1本あるかないかまで減少。番組にはゲストを呼ばなくなった。

いつまで続くか分からないこのコロナ禍。地方の放送局で働く人たちは、いまどんな問題と向き合っているのか話を聞いた。

広告収入は前年度比40%減も

GettyImages/ Xióng Shòu Ye/EyeEm

放送局の収入源のひとつが広告収入だが、コロナ禍で数字は著しく落ち込んでいる。

ある東北のテレビ局では、広告収入が前年度同期比20%減。主催するイベントも軒並み中止となった。

緊急事態宣言の発令中、局の営業担当者は営業活動もほとんどできず、既存のスポンサーのフォローに回っていたという。

また、別の地方ラジオ局の広告収入は前年度同期比で40%減。スポット収入(番組やコーナーの間に流れるCM枠の収入)に限れば半減し、流れるCMが自社の「番宣」(番組宣伝)ばかりになった。

スポンサーの業績も悪化しており、当初は「一時的にCMを休止する」としていた企業が、そのまま今後の広告出稿を取りやめる例もある。

緊急事態宣言の解除後、しばらくは対面での営業もままならなかったが、各局とも6月ごろから徐々に再開。営業担当者は「今だからこそ地元企業に寄り添った提案やブランディングを」と試行錯誤している。

「少し厳しい条件をつける代わりにCM枠の単価を下げたり、タイムセール的な売り方をしたりと、企画のリリース頻度を増やしています。それでも反応が芳しくなく、消費の落ち込みを実感していますが、地元の企業を応援する意味も込めながら日々提案を考えています。自治体などの入札案件も少し出てきたので、広報としてラジオを活用してもらえるよう営業しています」(前出の地方ラジオ局営業)

東京から出演者を呼べない…番組編成、大きく変わった局も

仙台市内のアーケード

仙台市内のアーケード。

GettyImages/ kanzilyou

番組制作の影響も甚大だ。リモートでのインタビューのほか、対面取材ではマスクを着用。ハンドマイクは使用せず、ピンマイクや音声スタッフが持つガンマイクでソーシャルディスタンスを守りながら対応するようになった。

スタジオでは一般観覧は中止し、出演者同士の間隔も広くとっている。スタジオで一度に出演する人数も制限された。

ただ、ここまでは、東京などでもよく見られる光景だ。地方局には地方ならではの問題がある。東京など感染拡大地域から出演者を呼びにくくなったことだ。

私が仕事をしているラジオ局ではコロナ以降、レギュラー・ゲストを問わず、スタジオ出演者は県内在住者に限定。県外のゲストはリモート出演で対応している。

地元のテレビ局の中にはメイン出演者の大半が東京在住で、コロナ禍でほぼ全員がリモート生出演になった番組もある。局で感染者を出さないための苦肉の策だ。

局員の少なさゆえ、感染者が出ると「放送できなくなるかもしれない」という危機感を持っている地方局が多い。

単発の番組や外でのロケに限りゲストを呼ぶなど、局によっては状況改善の兆しが見え始めてはいるが、今後もしばらくこの状況は続くだろう。

取材の場合も同様だ。スポーツでは最小限の取材人員とし、大半の局が県外への出張を控えている。

ローカルタレントも仕事減「番組の作り方を見直さないと」

ラジオ出演中の筆者。ブース内には透明のアクリル板が設置されている。

ラジオ出演中の筆者。ブース内には透明のアクリル板が設置されている。

筆者提供

地元のフリーランスやタレントの活動にも影響が出ている。私が働くラジオ局では、仕事で県内と感染拡大地域を往復で移動した出演者が、番組出演を2週間自粛した。県外での仕事を抱えている人は、難しい判断を迫られている。

番組編成が大きく変わったところもあった。あるテレビ局では、緊急事態宣言の発令後、制作担当者を含めた社員全員が原則テレワークになった。そのため平日に毎日放送していた情報番組を一時的に休止せざるを得なくなった。

その間は遠隔操作で感染者数などの情報テロップを流して対応したが、宣言解除後も社員の外での取材は禁止のまま。そこで放送日数を減らし、番組そのものを急遽リニューアル。構成を大きく変えることで、何とか番組再開にこぎつけた。

それでも放送内容については検討すべき課題が山積みで、担当者も頭を抱えているという。

「番組の内容も、どうしても新規感染者についての会見などが中心になり、毎回同じような映像しか流れないんです。取材ができないから、変わり映えがしませんね」(前出の地元局担当者)

「似たような内容ばかりになる」——。この声は、地元でスポーツ取材に携わる人からも複数上がった。

「競技やチームにもよりますが、私が担当しているチームは、1回に取材できる人数が監督プラス選手2~3人。試合後、取材する媒体全社で相談して、どの選手に話を伺うか決めています。インタビューもリモートです。今までのように各社が個別に選手を取材できないため、独自性を出すのが難しいですね」(地方テレビ局スポーツ担当者)

いまだ取材禁止のところ、人数制限をしているところと多少の差はあれ、地方局においても、番組の作り方そのものを見直さざるをえない状況が続いている。

感染症対策が働き方の改善につながったケースも

感染症対策が思わぬ「働き方改革」に寄与している実態も…。

感染症対策が思わぬ「働き方改革」に寄与している実態も…。

GettyImages/ Hiroshi Higuchi

感染症対策は今やどの企業でも必須となっているが、地方局でももちろん徹底した対策を行っている。

私が働くラジオ局では、検温や手指消毒、入り口を1カ所に限定するほかに、生放送中もスタジオやサブ(副調整室)と呼ばれる前室のドアを全て開けた状態で放送している。また、同じスタジオで連続して生放送はせず、スタジオを分けるようになった。

ゲストが来たり、スタッフが近くにいたりする状態で放送する際には、アクリル板の仕切りを使用。スタジオやサブは使うたびに機材をアルコールで消毒し、ドアを開けて換気している。

地元のテレビ局では、制作スタッフを2~3班に分け、作業も班ごとに異なる階の部屋を使う措置をとり、違う班の人との接触を避けながら万一の事態に備えている。

報道取材に携わる記者も、本社と記者クラブのほか、街中の営業センターにも拠点を置き分散。直行直帰が基本となり、社内ではニュースの放送前でも記者をほとんど見かけなくなった。

このように局員同士の直接的なやりとりは相当減っている。だが、現場の局員によるとこうした体制は必ずしも悪いことばかりではないという。

「誰が何の仕事をしているのかが見えにくいというのは実感しています。ただ、感染症対策の面とコロナの影響での広告収入の低下などから残業ができなくなって、みんな前よりも早く帰れるようになった給料が減る厳しさはありますが、この状況になってようやく、働き方改革が少し進んだような気がします」(地元テレビ局員)

昼夜を問わない長時間労働が当たり前とされる業界に、思わぬ形で働き方改革が進んだ…という、思わぬ副産物はあるようだ。

ウィズコロナの局面に差し掛かる中、厳しい状況をどう立て直していくのか。現場では今も模索が続いている。

(文・丸井汐里、編集・吉川慧


丸井 汐里:フリーアナウンサー・ライター。1988年東京都生まれ。法政大学社会学部メディア社会学科卒業。NHK福島放送局・広島放送局・ラジオセンター・東日本放送でキャスター・アナウンサーを務め、地域のニュースの他、災害報道・原発事故避難者・原爆などの取材に携わる。現在は報道のほか、音楽番組のパーソナリティも担当。2019年よりライターとしての活動も開始。

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