グーグルがリモートワーク時代の「フレキシブルな」働き方、人材を惹きつける働き方制度をつくり上げるのに四苦八苦している。
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- グーグル従業員のなかでパンデミック収束後にフルタイムでオフィスに復帰したいと考えているのは「わずか8%」にすぎないことがわかった。
- スンダル・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は、より「フレキシブルな」アプローチを採用するという。
- グーグルは競合から優秀な人材を集まるための新たな方策を必要としている。9月最終週、同社は学生ローンの返済をサポートするという、スマートな戦略を導入した。
グーグルは2021年夏まで在宅勤務を続けることを最近発表しているが、そのときが来たら本当に従業員たちはオフィスに戻ってくるのだろうか。
グーグルは従業員を対象に行った、オフィス復帰に関するアンケート調査の結果を公表した。62%がゆくゆくはオフィスに復帰したいと答えたものの、毎日オフィスに出勤したいと答えたのはわずか8%だった。
グーグル広報によると、同調査はグローバルの従業員を対象に行ったものだが、一部地域のデータについては、よりはっきりとした傾向が見てとれるという。
Business Insiderが入手した調査結果によれば、欧州・中東・アフリカ(EMEA)オフィスの従業員1万5000人超のうち、週1〜4回通勤したいとの回答は60%を占めた。
また、毎日オフィスに通勤するのは避けたいと答えた理由で一番多かったのは、仕事と家庭生活のより良いバランスを実現したいから、というものだった。
この調査結果は、グーグルがいまオフィス勤務に関するアプローチを再考する理由を雄弁に物語っている。
スンダル・ピチャイCEOは最近、対面で一緒に仕事をするのもある程度は必要との考え方を強調しつつ、将来を見据えて「ハイブリッド」な働き方モデルを模索していることを明らかにしている。
フレキシブルな組織のあり方は、これから新たに入社する従業員の目に魅力的に映ると思われる。ただし、無料の食事、マッサージルーム、社内ジム、美味しいおやつ……といった魅力的な特典が、グーグルに人材が集まる最大の理由のひとつであり続けてきたのも事実だ。
グーグルはいま、特典をちらつかせて競合企業から優秀なテック人材を引きはがすだけでなく、パンデミックでオフィスにまつわるすべての特権を失う既存の従業員を引き止めるために、何らかの方策を考える必要に迫られている。
本拠を置くサンフランシスコ・ベイエリアで、異常に高い家賃を払って勤務する社員を数多く抱えるグーグルは、もしオフィス勤務にこだわらないとなれば、多くの従業員たちによりフレキシブルな働き方を認める必要が出てくるだろう。
というのも、最近行われた別の調査によれば、サンフランシスコ勤務の従業員の3分の2は、永久リモートワークを選べるならベイエリアを完全に離れたいと回答しているからだ。
グーグルのオフィスは他社も羨む最高の仕事環境とも言われるが、それでも従業員たちは毎日オフィスに通勤するのは避けたいと考えている。
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リモートワークが浸透するにつれ、グーグルには人材を惹きつける新たな戦略が必要となる。その流れで、同社が最近導入したスマートな戦略がある。従業員が学生時代に借りたローンの返済を支援するというものだ。
アメリカのフルタイム従業員を皮切りに、1人あたり年間最大2500ドル(約26万2500円)を支給してローン返済に充てさせる。この方策は、同社に人材を引き込むのに大きな役割を果たすと思われる。
それでも、リモートワークがさらに長期化すれば、新たな人材を得て競合を退けるためのさらなる戦略が必要になる。
グーグルは4月、介護や育児のための休暇を追加で8週間取得できる制度を導入すると同時に、在宅勤務に必要な環境を用意するための手当てとして1000ドル(約10万5000円)を支給することを決めている。
それでも、何もない通常時だったら無料で享受できていた食事やマッサージ、フィットネス設備といった素敵な特権を、在宅勤務で活用できないからといって必要経費として領収書で落とすわけにはいかない。
そう考えると、このまま何カ月かリモートワークが続けば、グーグルが食事やフィットネスジムの料金まで支給する日もやってくるかもしれない。
(翻訳・編集:川村力)