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【イベントレポート】東洋エンジニアリングに学ぶ「成功するDX」3つのキーワード

| Tech Insider

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日本マイクロソフトMicrosoft 365 ビジネス本部 エグゼクティブ プロダクト マーケティング マネージャーの春日井良隆氏(写真左)と、東洋エンジニアリングDXoT推進部長の瀬尾範章氏(写真右)。

コロナ禍を経て、多くの日本企業がいま、オンラインでの新しい働き方や、それを支えるDX(デジタルトランスフォーメーション)のあり方を模索している。企業に求められるDXとは、そしてそれを牽引するリーダー像とはどのようなものなのか。

2020年9月16日に開催したオンラインイベント「日本企業がDXで成功する秘訣とは? ~東洋エンジニアリングのDXoTから学ぶ~」から、DX成功のヒントを探った。

第1部では、「なぜ日本のDXは遅れているのか?」をテーマに、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授が登壇。Business Insider Japan統括編集長の浜田敬子がモデレーターとなり、経営学の視点に基づく日本企業のDXの現状と推進のポイントについて聞いた。

第2部では、2017年度からDXに着手するプラント専業大手、東洋エンジニアリングの事例をもとにトークセッションが行われた。登壇者はDXoT推進部長の瀬尾範章氏と、日本マイクロソフトでTeamsのマーケティングを担当する春日井良隆氏。“昭和的な”手法が残る業界でDXをどのように成功させるのか、改革を進めるためのポイントを聞いた。

第一部:早稲田大学・入山章栄教授が語る「日本企業のDXが遅れている理由」

入山

「日本のDXが遅れている原因、その一つは経路依存性にあります」(入山教授)

イベントの冒頭で入山教授はこう指摘した。「経路依存性」とは、人や組織の意思決定において過去の制約にとらわれてしまうこと。「失われた30年」と言われてきた平成の30年間、DXをはじめダイバーシティや新卒一括採用、評価制度なども、従来の仕組みから脱却できず海外に比べ2、3周遅れをとっていると入山教授は話す。

浜田統括編集長は「過去の経済成長が大きな成功モデルとなり、変えようとする強い動機がなかった。だがコロナ禍で企業の危機感は高まっている」と指摘する。入山教授も「今が転機」と捉えている。

「世の中はさまざまな仕組みが複雑に絡み合っており、変えるなら根本から変える必要がある。コロナ禍で強制的に働き方が変わり、DXの遅れが明るみになった。これは裏を返せば、全てを根本から変えるビッグチャンスになる」(入山教授)

浜田

Business Insider Japan統括編集長の浜田敬子(写真左)。

では、DXが進む会社とそうでない会社、両社の違いはどこにあるのか。入山教授はDXの進む組織は、リーダーに変えようとする強い意思があり、中長期のビジョンがある。そして現場の社員はトップの方針に“腹落ち”していることを挙げる。

「DXの一つの手段がデジタル化です。リモートワークが進みMicrosoft Teamsをはじめとする新しいツールの導入が進んでいますが、どう定着させていけばいいのかは現場の社員が最もよくわかっている。

トップは寛容と理解の心を持ち、現場へ権限委譲することが重要。DXはビジョン実現の手段であり目的。これからの時代、良きリーダーが率いる会社とそうでない会社との濃淡の差がはっきりと見えてくるでしょう。

一方で現場は、社内に蓄積した知見やノウハウを生かしながらも、スピード感を持って行動する姿勢が必要です」(入山教授)

近年はさまざまなクラウドサービスがある。入山教授は「まずは試してみて、トライアルを重ねていくといいのでは」と語った。

不確実性の時代に「両利きの経営」理論が思考のガイダンスとなる

入山

「不確実性の時代」と言われ、企業の持続的な成長も厳しさを増す現代。時代に即したビジネスモデルの構築と、新しい価値を生み出すイノベーションも企業の急務となっている。入山氏は「知の深化」と「知の探索」を組み合わせた「両利きの経営」理論が、これからの時代に企業のガイダンスになると語る。

「知の深化」とは既存知を徹底的に磨き込み利益化していくこと。これらの作業はAIやRPAが得意な分野であり、将来役割が置き換わる可能性がある。

一方で「知の探索」とは、自分の認知外にある知を探し、既存知と組み合わせて新しいアイデアを生み出すこと。米オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授による「将来人間の仕事の47%はAIに奪われる」という論文が話題になったが、入山教授曰く、AIが「知の深化」の作業を担うことで、人間は「知の探索」に集中できるのだという。

「人はゼロから新しいものは生み出せない。認知にも限界があり、つい目先のものを組み合わせて考えがち。イノベーションを生むためには『知の探索』を通してより遠くの既存知にたどり着く必要がある」(入山教授)

企業のように成果を求められる組織では効率が重視されがちだが、視野を広く持ち、遠くのものを見つめることからひらめきが生まれる。人間にしかできないこの作業がイノベーションの足がかりとなるというのだ。

「トップがビジョンを示し、組織は『知の探索』から芽生えたアイデアを『知の深化』で磨き上げていく。それにより企業にとって唯一無二の価値が生まれる」(入山教授)

では、DXを進めるために組織に、人に求められることとは何なのか。東洋エンジニアリングの取り組みを見てみよう。

第二部:「2024年に生産性を6倍にする」強いビジョンがDXの原動力に

瀬尾

東洋エンジニアリングDXoT推進部長の瀬尾範章氏。瀬尾氏は同社最大級の海外プロジェクトの設計責任者を担当したのち、2019年7月に30代でDXの舵取り役に抜擢された。

2021年に創業60年を迎える東洋エンジニアリング。同社がDXを推進する背景には、建設業界の生産性の低さがあった。建設業界の成長率は直近50年間でわずか1.1倍と、ほとんど改善されていないという実態がある。

設計業務は3D化が進みテクノロジーに適応はしているものの、日々の業務の進め方は古い慣習が残ったまま。契約書や図面のデジタル化も進まず、ある大規模な海外プロジェクトでは、最終成果物が800枚綴りのファイル6000冊分にもなったというから驚きだ。

「紙では探したい書類がすぐ見つからず、最終図面がどれかわからない。書類の承認にも上長のハンコが必要で、ファイルを元にデータベースに入力する作業もある。これが生産性向上を妨げる要因の一つとなっていた」(瀬尾氏)

瀬尾氏は「昭和な職場」をどう変えていったのか。

「ツールだけでは成功しない」DX成功のための3つのポイント

春日井瀬尾

日本マイクロソフトでTeamsをはじめとするMicrosoft 365のマーケティングを担当している春日井良隆氏(写真左)と、瀬尾氏(写真右)。

東洋エンジニアリングは、自社独自のDXを進めるため2017年からDXoT(Digital Transformation of TOYO)を立ち上げた。だが、役員や社員をうまく巻き込むことができず軌道に乗せられないでいた。

「その理由は、DXの定義が曖昧であったことと、社員に明確なビジョンを示せていなかったからだと考えた。そこでDXoT推進部長就任後は、まずビジョンと戦略を1カ月かけて策定した」(瀬尾氏)

瀬尾氏が推進したDXのポイントは大きく3つある。以下、一つずつ見ていこう。

1 構想・ビジョン・戦略

DXoTの主要タスクは立ち上がっていたものの、成果に繋がらない危機感を感じた瀬尾氏は「2024年までに生産性を6倍にする」とビジョンを策定。全社員にも発表し、具体的な戦略に落とし込んだ。

トップが社員に対してビジョンを掲げ、強く旗を振ることが大切だと春日井氏も強調する。マイクロソフトのDXでもトップが強いビジョンを示したという。

「方向性がないまま進めるのは失敗のもと。マイクロソフトでもサティア・ナデラがCEOに就任して、真っ先に取り組んだのがDXだった。CEO自らが『今取り組まないと会社が危機に瀕する』とメッセージを提示したものの、受け手側は当初、正直よく理解できなかったと思います。それでも、力強いメッセージが繰り返されるうちに、少しずつ浸透していきました」(春日井氏)

2 翻訳力:

DXoTの目標の一つは既存業務の改革だが、社員は目の前の仕事に忙殺されているだけに、「自分ゴト」として巻き込むためには工夫が必要だった。そこで瀬尾氏は各部署を回り、現場の課題をヒアリングする「DXoT意見交換会」を実施。そこで社員から挙がった「非効率だと感じている業務」の数は200~300件にものぼる。これをリスト化して一つひとつ改善していった。

人を巻き込むために必要なのが、相手にきちんと伝える翻訳力。

「自分も現場出身なので、現場とは業務の共通言語を使いつつ同じ目線で会話ができた。経営陣には意思決定をサポートしやすいよう、わかりやすく解釈して伝えたり、損益の観点から提案したりするなど、相手に合わせた話し方が肝心」(瀬尾氏)

3 巻き込み力:

国内1000人、全世界で5000人の社員を抱える東洋エンジニアリング。DXoT推進部のメンバーは11名と少数精鋭。だが、18の重要タスクにのべ240名の担当者が関わるなど、現場の社員を巻き込むことで、部署の垣根を超えて全社横断的に改革に取り組める体制を整えた。実際に仕事の非効率が解消され始めると、社員も徐々にDX を実感するように。こうして社内にDXが浸透していった。

「1年間走り続けて、少しずつビジョンが形になってきた。肝心なのは目的を明確にして、とにかく辛抱強く発信しつづけること。最初は周囲に受け入れられなくても失敗を恐れず、リアクションを楽しむくらいの姿勢が大切」(瀬尾氏)

こうした取り組みを続けてきたところにコロナ禍が発生。これがDXを強力に後押しすることになる。すでに東洋エンジニアリングは2019年に社内公式ツールとしてMicrosoft Teamsを導入しており、原則リモートワークになると加速度的にTeamsの利用が進んだという。

春日井瀬尾

東洋エンジニアリングがDXを通して目指しているのは、業務効率化にとどまらない。既に蓄積したデータをもとに情報を一元化し、新しい価値を生む「データレバレッジ」にも取り組んでいると瀬尾氏は話す。社員のデジタルリテラシーが高まるにつれて「知の探索」に時間を割くことが可能となり、データの力に本当の意味でレバレッジを効かせて「業務変革」を促進させていく。

「DXに正解はない。答えがないということは、誰からも否定されることはないということ。答えを探すのではなく、自分たちのオリジナルのDXを作っていくくらいのスタンスで、ぜひ自信を持ってチャレンジしていただきたい」(瀬尾氏)

春日井氏はこう締めくくった。

「今後、DX戦略を組み入れることはあらゆる法人、自治体にとって必要不可欠。業界の慣習や先入観にとらわれず、俯瞰する視点を持って、自分たちの組織なら、自分の仕事なら、どう変えられるかを真剣に考えてほしい。意外と他業種からヒントが得られるかもしれませんね」(春日井氏)

本記事のイベント動画はこちら


DXに必要なのは、企業が向かうべき方向を示す「構想、ビジョン、戦略」、そこで実際に働く人たちへの浸透を図るための「翻訳力」、そしてトップから現場までを「巻き込む力」。東洋エンジニアリングで実際にDXを牽引してきた瀬尾氏、それをツール面で支えてきた日本マイクロソフトの春日井氏のセッションは、これからDXに取り組む企業にとっても大きなヒントとなりそうだ。

Microsoft Teamsについて詳しくはこちら。

イベントで使用したスライドはこちら。

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