楽天の新プラン「Rakuten UN-LIMIT V」は本当に“タダ5G”? エリアやサービスにはまだまだ課題も

楽天会見

5Gサービスでも月額2980円は変わらず。楽天モバイルがRakuten UN-LIMIT Vを発表した。

出典:楽天

楽天モバイルは9月30日、5Gサービスを開始した。これまで、4Gによる携帯通信サービスを月額2980円で提供していたが、料金やサービス内容は変更せず、既存ユーザーも順次5G契約に移行する。

新規契約も5G契約のみとする。同社では現在、1年間無料のキャンペーン期間となっており、5G契約でもこれは変わらず、1年間は無料で利用可能だ。

5Gプランも「2980円」「データ・通話 使い放題」

Rakuten UN-LIMIT 2.0

エリア内であればデータ通信が使い放題のRakuten UN-LIMIT 2.0。

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楽天モバイルの携帯サービスは「Rakuten UN-LIMIT 2.0」として提供されていた。楽天回線エリア内はデータ通信が使い放題で、エリア外でもau回線を使ったローミングを活用することで全国をカバーしている。

ローミングエリアは月5GBのデータ容量制限があるが、上限に達しても1Mbpsで利用できる。音声通話も独自アプリの「Rakuten Link」アプリを使えば、発着信無料。こうした点から、ほかの携帯3社と比べても月額料金は67%安い、という。

4Gプランの比較

楽天は「他社と比べて67%安い」という。

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しかも、現在は1年間は月額料金無料のキャンペーンを実施中なので、月額料金は0円だ。無料キャンペーンは1人1回線で300万人限定だが、6月の段階で100万人を突破したもののまだ300万人には達しておらず、2020年末までの300万人達成は「微妙なところ」(山田善久社長)だという。

発表された5G対応プランでは、名前が「Rakuten UN-LIMIT V(ファイブ)」となって、現時点では単純に5Gを追加しただけのサービスとなる。

三木谷浩史会長兼社長

楽天の三木谷浩史会長兼社長。

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既存ユーザーは、10月12日から11月30日の間に自動的に契約が切り替わるほか、「my楽天モバイル」から手動で契約変更すれば、現時点でも5G契約にアップグレードできる。契約変更に伴う料金はかからない。無料キャンペーンもそのまま継続される。

UN-LIMIT Vでも楽天回線がつながらないエリアは従来通りau回線につながり、5GBの制限と超過後1Mbpsになる点も変わらない。5Gでのローミングはないため、ローミングエリアは4Gでの接続になる。

Rakuten UN-LIMIT V

プラン内容は変わらず、5G契約が追加された形。1年間無料キャンペーンも継続。

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新規ユーザーの場合、9月30日15時30分以降は4G契約がなくなり、Rakuten UN-LIMIT Vのみの契約となるため、今後楽天モバイルのすべてのユーザーは契約上「5G対応」となる。

なお、既存の3キャリアに対して楽天モバイルは月額料金への追加はなく、楽天の三木谷浩史会長は「4Gに加えて5Gがタダで使える」とアピールし、「Tada 5G」と表現した。

Tada 5G

「Tada 5G」とアピールする三木谷会長。

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そうした他社と比べて、データ・音声使い放題で月額2980円は「71%安い」と三木谷会長と胸を張る。「非常に画期的なものと思っている」とアピールしつつ、家族4人の場合、同様のプランで4年間使った場合、総額では100万円以上安くなるという多少ムチャな比較も紹介し、安価な点を強調していた。

5Gサービスは“順次拡大”

71%安い

「他社5Gプランより71%安い」という。

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5Gエリアは、東京、神奈川、埼玉、北海道、大阪、兵庫の各都道府県のごく一部で、エリアはかなり狭い。4Gとは異なり、5Gエリアは携帯4社がともにゼロから構築しているため、「他社と比べてもエリアで大きな差はない」というのが山田社長の認識だ。

2021年3月末までに47都道府県でサービスを開始するとしており、2021年第2四半期中には5Gのみの電波で通信する「SA(Stand Alone)」方式でもサービスを開始する。

5Gサービスの展開

2020年度中に全都道府県で5Gが使えるようになる。

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現状は、エリアによって対応周波数帯がサブ6(3.7GHz帯)とミリ波(28GHz帯)の2種類あり、そのどちらもサービスが開始された。

通信速度は下り最大870Mbpsと物足りないが、5G基地局側のソフトウェアバージョンアップを1カ月をめどに実施。11月には下り最大2.8Gbps、上り最大275Mbpsまで高速化する計画だ。

速度

まだ下り速度はミリ波でも870Mbps程度だが、ネットワークのソフトウェアアップデートで2.8Gbpsまで高速化する。

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5Gを活用したサービスも準備。まずは、楽天が持つサッカークラブ・ヴィッセル神戸のホームスタジアム・ノエビアスタジアム神戸の観客席を5G(ミリ波)の2020年秋にもエリア化。「新しいスポーツ観戦体験の実証実験」を行う。

ヴィッセル神戸

ノエビアスタジアム神戸を5Gエリア化し、企業や自治体、大学などと共創して5G活用の新サービスの創出を目指す。

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三木谷会長は「社内でもいろいろ議論はあったが、思い切って4Gと同一価格で提供しようと、清水の舞台から飛び降りる気持ちで決めた」と話す。山田社長も、「かなり思い切った価格戦略。圧倒的に低い価格で、できるだけ多くの人に使ってもらう」と説明する。

価格と性能のバランスが絶妙な独自5G端末も登場

Rakuten BIG

オリジナル端末のRakuten BIG。製造はZTE。

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5G対応端末としては、オリジナル端末として「Rakuten BIG」を用意した。

6.9インチという大画面の有機ELディスプレイを搭載しており、正面カメラをディスプレイ内に収めた“フロントカメラ内蔵ディスプレイ”となっている。同技術の採用は「FeliCa搭載スマートフォンとしては世界初」だという。

Rakuten BIG 背面

Rakuten BIGの背面。

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深度測位、マクロを含む4つのカメラを搭載して、チップセットにはクアルコム製のハイミドル向け「Snapdragon 765G 5G」、メモリーは6GB、4000mAhの大容量バッテリーを搭載。おサイフケータイ、防水防塵といった機能を備え、5Gではサブ6とミリ波の双方をサポートする。

価格は6万9800円(税込)で、同価格の他社製端末と比べると高いスペックを持つスマートフォンだと言える。

また、すでに発売済みの「AQUOS R5G」は、今後ソフトウェアアップデートで5Gに対応する。

Rakuten Hand

4G対応のオリジナル端末Rakuten Hand。スリムなボディが特徴。

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加えて、4Gのみの対応だが、第3のオリジナル端末として「Rakuten Hand」も発表。5.1インチの有機ELディスプレイを備えたスマートフォンとしては「世界一スリムな横幅」という特徴。

チップセットにはクアルコム製の「Snapdragon 720G」を採用。おサイフケータイにも対応する。手帳型ケースやお買いものパンダケースなどのアクセサリーも含めて今秋発売予定。これで、既存のRakuten Miniを加えると画面サイズに応じて3種類のオリジナルスマートフォンを用意することになる。

“携帯料金値下げ”圧力が高まる中、楽天の立ち位置は?

楽天会見

楽天モバイルの山田善久社長(左から2番目)。右は楽天モバイルの代表取締役副社長兼CTOのタレック・アミン氏、左は常務執行役員兼CMOの河野奈保氏。

出典:楽天

政府や総務省による携帯料金の値下げ圧力が高まる中、2980円という料金プランで5Gにも対応した楽天モバイルの価格戦略は、日本の「平均携帯料金」を押し下げることになるだろう。ユーザー数が増えるほどその影響は大きくなるが、現状、ユーザー数は100数十万人にとどまっている。実態として、まだ既存キャリアを脅かすほどには達していない。

発表前日の9月29日には、NTTがNTTドコモを完全子会社化することを発表。NTTとNTTドコモは競争優位性の向上を目指しており、料金値下げにもつながれば、各社の料金競争が始まる可能性はある。

5Gのエリア構築や新サービス開発、楽天のほかのサービスとの連携など、今後さらなる事業拡大で携帯3社をキャッチアップできるかが注目される。

(文・小山安博


小山安博:ネットニュース編集部で編集者兼記者、デスクを経て2005年6月から独立して現在に至る。専門はセキュリティ、デジカメ、携帯電話など。発表会取材、インタビュー取材、海外取材、製品レビューまで幅広く手がける。

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