“アンチ消費社会”掲げ40年。無印良品が「H&MやZARAとは全く違う」大幅値下げに踏み切る理由

無印良品

良品計画は10月1日、“過去最大規模”となる衣料品72品の価格見直しに踏み切った。

撮影:西山里緒

「無印良品」を展開する良品計画は10月1日、2020年秋シーズンの衣料品72品目の価格見直し・値下げを行うと発表した。対象となる商品は、Tシャツ(990円・税込み)やニット(2990円・税込み)など暮らしの基本となる日常着。

良品計画は定期的に価格の見直しを実施しているが、72品目という幅広い商品を対象にした値下げは、衣料品としては過去最大規模だという。

「コロナの状況で、海外の営業も穏やかでない事実はあります。しかし(価格見直しをする理由は)今一度、私たちの日用品を使ってもらいたいからです。どんな状況があったとしても、この40年間こだわっている価格見直しを、私たちは続けていこうと思っています

記者会見の席で、コロナの影響で赤字が出ているなか、価格改定に踏み切ったことについて問われた良品計画 執行役員オープンコミュニケーション部長の大西克史氏は、力強くそう語った。

良品計画の決算資料によると、2020年第1四半期(3〜5月)の前年同期比売上高は約7割となった。オンラインストアなどを含まない、既存店の直営店舗に限ると、その割合は6割に落ち込んだ。その一方で、緊急事態宣言解除後の6月以降は業績が回復。8月の売上高は114%増と好調だ。

良品計画は定期的に商品の価格見直しを実施しているが、2020年はさらにその取り組みを強めている。2020年8月には「ずっと、見直し。ずっと、良い値。」をテーマに特設サイトをオープン。靴下やウレタンスポンジなど、日用雑貨を中心に値下げしている。

無印良品

世界最大の旗艦店「無印良品 銀座店」には、価格見直しの広告が大々的に打たれていた。

撮影:西山里緒

今回、衣類の値下げに踏み切った背景には、コロナ禍によって消費者のニーズに変化があり、売り上げの追い風があったことも関係しているようだ。

「日常の暮らしの役に立つ衣類はコロナにおいて明らかに消費が伸び、逆に外出や“ハレの場”で使う商品はマイナスに動いた。無印良品は“暮らしの普段着”を今後も強化していく。だからこそ、日本市場では、たとえコロナ禍であっても成長できると考えている」(良品計画 執行役員 衣服・雑貨部長 齋藤陽司氏)

コロナ以前から、アパレル業界には「脱・ファストファッション」の大きな波が来ている。

2019年には、アメリカのファストファッションチェーン「フォーエバー21」が破綻。最新の流行を取り入れながら、安い価格の衣服を短いサイクルで大量生産・販売する売り方に限界がきている、とする見方も強い。

1980年からアンチ消費社会を謳ってきた」とする良品計画は、こうした時代の流れに勢いづく。

「(新型コロナが猛威を振るった)3月から5月にかけて苦労した部分は当然ある。ただ無印良品は、ファストファッションと呼ばれるH&MやZARAのように、シーズンごとに違う商品を出して売り切っていくというビジネスをしていない。在庫としては(売れ残った服が)残っているけれど、来年売れるという状況にはなっている」(同・齋藤氏)

(文・写真、西山里緒)

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