撮影:鈴木愛子
今回は読者の方からお寄せいただいたご相談にお答えします。テーマは、「自信があったのに不採用になるのはなぜ?」。
よくいらっしゃいます。とても優秀で、書類選考での評価は高かったのに、不採用になる方。
私は転職エージェントとして、企業の人事担当者や経営者から、応募者を「不採用にした理由」について、フィードバックを受けてきました。
その経験を踏まえて、優秀な応募者がなぜ落とされるのか、よくある理由をお伝えしますね。
「理念」「方向性」が一致していない
Aさんはベンチャー企業に応募しているとのこと。
人事担当者や現場責任者の面接はクリアし、社長や役員面接の段階で不採用になっているとしたら、その会社と「理念」「目指す方向性」が一致していなかった可能性があります。
一般的に、人事担当者や現場責任者の面接では、「即戦力性(経験・スキル)」「人物(一緒に働きたいと思えるか)」が見られています。
その場で経験・スキルをほめられたり、気が合って話が盛り上がったりすれば、採用の手応えを感じるでしょう。
ところが、最終面接に出てくる経営トップは注目しているポイントが異なります。
「長期的な視点」で応募者を見ていることが多いのです。つまり「この先、会社の成長を支えていける人材か」ということ。
そこで重視するのが、自社の「理念」「目指す方向性」と、応募者のそれとがマッチしているかどうか、という点です。
どんなに優秀な即戦力人材であっても、これが一致していないと採用を見送られるケースは意外と多いのです。
経営陣との面接に臨む際は、企業サイトや採用サイトなどに記載されている「理念」もしっかり読みましょう。最近のベンチャーでは、「ミッション・ビジョン・バリュー」として掲げている企業も多く見られます。
その理念に共感できるのであれば、自身のエピソードも交え、自身の言葉で語れるようにしておくといいでしょう。
アピール方法が間違っている
「自分の強みをしっかりアピールできた!」と思っていても、実はこんな失敗をしていることもあります。
- 相手企業のニーズを理解せず、自分が自信を持っている経験・スキルを一方的にアピールしている
- 成功体験を語ったものの、それが転職先で「再現」できることを伝えられていない
- 「こんなことができます」だけをアピールし、「これがやりたい」「こうなりたい」を語れていない
上記については、この連載の第3回で詳しくご紹介していますので、そちらも参考にしてみてください。
そのほか、次のようなケースもあります。
- 「マネジメントしづらい」と思われてしまう
「自分の優秀ぶり」をアピールした結果、「自信過剰で謙虚さがない。マネジメントしづらいのでは」と警戒されてしまうケースもあります。
もしくは、「他の社員のレベルとバランスが取れず、調和を乱しそうだ」「うちの会社では物足りなくて、すぐに他社に移ってしまうのではないか」といった懸念から、採用を見送るなんてこともあるのです。
過度なアピールは控え、相手が期待するもの、自分がそれにどう応えられるか……という点にフォーカスして話すことが大切です。
「社風」にマッチしていない
ベンチャー企業の場合は、自社らしい「カルチャー」を醸成したいという思いが強いケースがあります。また、少人数組織では、「既存メンバーとの相性」にも注目します。
これが不採用理由だとしたら、「落ちてよかった」とも言えます。相手が「社風に合わない」と判断したのであれば、あなたが入社しても、雰囲気になじめず居心地悪く感じたかもしれませんから。
ちなみに、ある会社の採用担当者は、応募者の持ち物が海外の高級ブランド品であるのを目にして、「自社の社風に合わない人物」と判断したこともありました。
そんな「些細な違和感」が、採用判断に影響することもあるのです。相手企業の社風に無理に合わせにいく必要がないのはもちろんのこと、普段の自分とは異なる身なり、演出はしないほうがいいでしょう。
自分でも気づかないクセがマイナスに
私は転職エージェントとして、企業と応募者の面接に同席することもあります。
両者の質疑応答中に様子を眺めていると、応募者の「無意識のクセ」を目撃することがあります。例えば……
- 相手とまったく目を合わせない
- 身体を傾け、椅子の背もたれや肘掛けに寄り掛かる
- キャスター付きの椅子を左右に回転させる
- 腕を組む
- ペンを手でくるくる回す
- ペンの芯をカチカチさせる
- あいづちを打つ時、「はいはいはい」と「はい」を繰り返す(多い人は4回も)
- 相手が話し終わらないうちに、かぶせるように話し始める
こうしたクセは、本人はまったく無意識でも、見ている側からは気になって仕方ないこともあります。面接後、人事担当者の方と、「あの仕草、気になったよね」「そうですよね」と意見が一致することも。
もちろん、クセは誰にでもあるものですから、これが採否の決定打になることはあまりないでしょう(よほど不愉快なクセでないかぎり……)。
「応募者自身も気づかないクセ、面接ではけっこう見られてますよ」と森本さんは忠告する。
撮影:鈴木愛子
問題は、「クセが気になって話に集中できない」ということ。
「何を話したっけ」「この人の強みはなんだっけ」と、大事な話が記憶に残らないことがあり得ます。
気さくな面接担当者だと、つい気が緩んで、普段のクセが出てしまうこともあるので要注意。また、コロナ禍の今はオンライン面接が主流となっていますが、自宅にいるリラックス感から、注意散漫になることもあるでしょう。
転職エージェントのコンサルタントに「模擬面接」をしてもらって指摘を受ける、あるいは誰かと対話している姿を録画して見てみるなど、自分のクセをチェックしておくといいかもしれません。
以上、優秀な方が不採用になる理由として考えられるものをご紹介しました。
心当たりがあるかどうか、振り返ってみてください。
なお、転職エージェントを通じて応募する場合、転職エージェントから本音ベースの詳細な不採用理由を聞けることもあります。
担当コンサルタントからフィードバックを受け、次への対策を相談してみてはいかがでしょうか。
※この記事は2020年10月5日初出です。
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森本千賀子:獨協大学外国語学部卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。転職エージェントとして幅広い企業に対し人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。リクルート在籍時に、個人事業主としてまた2017年3月には株式会社morichを設立し複業を実践。現在も、NPOの理事や社外取締役、顧問など10数枚の名刺を持ちながらパラレルキャリアを体現。2012年NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」に出演。『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数。2男の母の顔も持つ。