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加藤官房長官、学術会議の任命拒否理由を問われ“不明瞭な”答弁(会見詳報)

加藤勝信官房長官。

加藤勝信・官房長官。

REUTERS/KIM KYUNG HOON

国の特別機関「日本学術会議」が新会員に推薦した6人の研究者を菅義偉首相が任命しなかった問題について、加藤勝信官房長官は10月2日午前の定例会見で、報道陣から6人を任命しなかった理由について再度問われた。

加藤氏は「専門領域の業績のみにとらわれない広い視野に立って総合的・俯瞰的観点」から「内閣総理大臣が日本学術会議法に基づいて任命を行った」という説明を3回繰り返した

会見では報道陣が「任命されなかった6名が総合的・俯瞰的観点から任命に至らなかったということか」と追及する場面もあった。

これに対し、加藤氏は「むしろこれは任命をするということであるから、もちろん裏側においてはそういうことにつながるが、私どもはそういう観点に立って任命したということだ」と、要領を得ない不明瞭な答弁だった

また、任命されなかった理由を学術会議側や当事者の6人に説明する意向があるか問われたが、「まさにそれを含めて、こうした場において説明をさせていただいている」と述べるにとどめた。

日本学術会議の任命拒否問題に関する加藤氏と報道陣の質疑応答は以下の通り。


——学問の自由を脅かすのではないかとの批判について。

昨日も説明させていただいた通り、日本学術会議の会員については、これまでも専門領域の業績のみにとらわれない広い視野に立って総合的・俯瞰的観点からの活動を進めていただくために累次の制度改正がなされてきた。

今般、これを踏まえて内閣総理大臣の所轄の行政機関である日本学術会議について任免権者である内閣総理大臣が日本学術会議法に基づいて任命を行った。そうした説明を引き続き行っていきたい。

——科学者など研究者の研究内容について、今後萎縮にはつながらないか。

あくまでも先ほど申し上げた通り、日本学術会議法に基づきながら、私どもとして専門領域の業績のみにとらわれない広い視野に立って総合的・俯瞰的観点からの活動を進めていただくために累次の制度改正がなされてきた。こうしたことを踏まえて実施した。直接そうしたことにつながるものではないと考える。

——昨日から「専門領域の業績のみにとらわれない広い視野に立って総合的・俯瞰的観点から」と述べているが、日本学術会議法の基準ではないのでは。これは菅政権における任命の基準なのか。

先ほど申し上げた通り、日本学術会議というのは我が国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上・発展をはかり、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として設置されたものだ。

累次改正されてきているが、直近の改正では「日本学術会議は科学者コミュニティの総体を代表し、個別学協会の利害から自立した科学者の組織とならねばならず、在来の学問体系や諸学問分野の勢力図から離れて組織が構成され、メンバーも選出されるべきである」と。これは総合科学技術会議の意見具申(平成15[2003]年2月)の中にある。そうした議論を踏まえて申し上げた。

——任命に至らなかった6名は、個々の理由は述べられないとしているが「総合的・俯瞰的観点から任命に至らなかった」という理解でよいか。

むしろこれは任命をするということであるから、もちろん裏側においてはそういうことにつながるが、私どもはそういう観点に立って任命したということだ。

——日本学術会議は戦前の反省に立って、学問は独立し自由であるべきだという根底がある。新会員を政権の判断で任命されなかったことは、政治介入と受け取られるのでは。どう説明するのか。

昨日も申し上げたが(日本学術会議は)内閣総理大臣の所轄のもとの行政機関である。運営にあたっては独立性が求められるが、あくまで内閣総理大臣の所轄である。そうした観点、そしてこれまでの法律改正の経緯等々を踏まえて、任命にあたって私たちとしてその責任を果たさせてもらっている。

——「形だけの推薦制であって学会からの推薦は拒否しない」という1983年の政府答弁があるが、長官は「この発言は科学者の学問、研究上の業績を最も適切に評価できる学術団体を基礎とする推薦制にあらためられた時の答弁だ」と説明した。政府が学会からの推薦を拒否しないという姿勢をとらなくなった平成16年の再任不可制度の導入からでよいか。

とらなくなったというよりも、その後再度推薦のやり方等が変更されてきている。そうした流れということは、まさに専門領域の業績のみにとらわれない、広い視野に立って、総合的・俯瞰的観点からの活動を進めていただくため、そうした改正がなされてきた。そうしたことを踏まえて、これまでもそうしたスタンスに立って任命してきた。今回、結果において推薦に比べて任命された人数が少なくなってきているということだ。

——制度改正の部分と総理が人事権が働かせることの関連性についてよく理解できないが。

累次の改正の中で、総合的・俯瞰的観点から活動を進めていく、そうした会議体であるということに関して、政府として任命する立場として責任があるから、その責任を全うしていくということに尽きる。

——日本学術会議内からは6名を任命するべきという声があるが見直すか。

私どもとしては、今回推薦をしていただいた名簿から先程申し上げたプロセスを経て任命をさせていただいた。

——日本学術会議は、2017年には軍事応用ができる基礎研究を助成する防衛省予算が増大したことで、政府の介入は著しく問題だと批判した。自民党側から政府・総理に対して意見や干渉はあったか。

承知している限りはない。

——東大の加藤陽子教授は「決定の背景を説明できる協議文書や決裁文書は存在するか。決定の経緯を知りたい」と報道にコメントしている。そうした文書はあるか。

どなたか任命の対象外となっているかは、私どもは個人情報ということで申し上げていない。

一般論としての質問だが、そうした文書については内閣府において公文書管理法に基づいて適切に対応すべきものだと思う。

——任命拒否の理由は答えられないというが、それだと学術会議側も知ることができない。推薦する際に学術会議側はどう判断すればよいのか。業績内容や政府の政策への発言で忖度して推薦せざるを得ないのでは。

推薦はあくまで日本学術会議がご自身の中で決めていくわけだから、学術会議の立場・観点に立って推薦していただければと思う。それを踏まえて政府は政府の視点に立って任命させていただく。役割分担だ。

——憲法23条では「学問の自由」を定めている。昨日の会見では、(日本学術会議は)総理の所轄のもとにあるという説明だったが、憲法は他の法律に優先するため、政府が推薦の認否を判断することは学問の自由の侵害になるのでは。

昨日の質問は任命に関する質問、憲法の条項だった。これは天皇の国事行為という憲法全体の中での話という意味だ。本件については日本学術会議法に基づいてやらせてもらっている。しかも日本学術会議は内閣総理大臣の所轄のもとにある。構造的に違うと申し上げた。

いま、また違う視点で質問なされた。学問の自由をどうするかは、これは当然私ども憲法に書いてある学問の自由は保証していかないといけないと思う。

——菅総理は自民党総裁選での勝利後、客観的におかしいと思ったことは正しくしていかなければならないし、国民にも丁寧に説明することが大事だと述べている。今回、推薦された研究者が任命されなかったことに疑念があるが、そこはあらためて理由を明快に説明するべきでは。

まさに国民のための内閣であり、その内閣総理大臣のもとに置かれている日本学術会議に対して、法律を踏まえ、これまでの改正経緯を踏まえて、私たちは私たちの責任を果たしていかなければならない。そういうスタンス。

他方で人事についてお話できることには限界がある。その中でできる限りの説明をおこなっているし、引き続き行っていきたい。

——日本学術会議の山際前会長は、文書で総理あてに6名が任命されなかったことに抗議している。

昨日の段階で、その前の日に提出いただいたと申し上げた。いま鋭意、事務方の方で検討されていると思う。

——何らかの回答はするのか。

そうしたことも含めて事務方の方で検討されている。

——学術会議で任命されなかった6人からは不満や疑問が出ている。少なくとも何らかの形で学術会議側、6人にしっかり説明をしたほうがいいのでは。

まさにそれを含めて、こうした場において説明をさせていただいている。

——任命するかどうかの協議文書について適切に対応するとあったが、作成しているという理解でいいか。

どういう文書を作成しているか承知していないが、いずれにしてもそうした文書については公文書管理法などがある。これに基づいて適切になされていなければならないし、いるはずだと思っている。あとはそれに則って対応していく。

——長官自身は相談を受けたのか。

いや、決裁の段階で説明を受けた。

——菅総理は国民には丁寧に説明していくべきだと抱負を述べている。任命権者の菅首相は会見を開かないのか。

政府全体の対応について、まさに説明をするのは内閣官房長官の役割。そのためにこうした場が設けられている。皆さんからの質問に対してはここで私が答えさせていただいている。


加藤官房長官は2日の記者会見で報道陣から「学問の自由の侵害にあたるのでは」と指摘され、問題への認識を問われ、「内閣総理大臣の所轄であり、会員の人事等を通じて一定の監督権を行使するっていうことは法律上可能」との見解を述べていた。

法改正で日本学術会議の会員を「首相による任命」とした中曽根政権下(1983年)では、政府高官が「実質的に首相の任命で会員の任命を左右するということは考えていない」と国会で答弁している。

教育・科学技術行政を司る萩生田光一文科相は2日午前の会見で、今回の任命拒否問題が「学問の自由」を侵害するおそれについて報道陣から問われたが、「会員は首相が任命するもの」「所管外につき、回答は差し控える」と述べるにとどめた。

日本学術会議の梶田隆章会長は2日午前、菅首相が6人を任命しなかった理由説明や、あらためて6人の任命を求める要望書を提出する方針を示した

(文・吉川慧

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