東京は3年連続「割高」に分類された。
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スイス金融大手UBSは9月30日、世界の主要25都市の居住用不動産価格の動向を分析する「グローバル不動産バブル指数(Global Real Estate Bubble Index)」(2020年版)を公表した。
各種の分析レポートでもすでに指摘されているように、新型コロナウイルスの市場への影響は大きく、世界的に住宅価格の上昇が進んでいる。
また、パンデミックを受け、生活拠点を見直す動きもみられる。在宅勤務(による住宅のオフィス使用)の増加に加え、家賃の高い都市圏のマンションに住む人たちの家計がひっ迫したことで、郊外の広くて比較的安価な住宅環境が脚光を浴びている。
UBSによると、こうした都市圏の居住用不動産へのネガティブな影響は、長期にわたるものになりそうだ。
UBSが発表した「グローバル不動産バブル指数」のマップ版。「バブルのリスク」(赤)都市は欧州に偏在しているのがわかる。
出典:UBS Global Real Estate Bubble Index 2020
具体的に、不動産バブルのリスクが高いとされたのは、トロント(カナダ)、香港、パリ、アムステルダム(オランダ)、チューリヒ(スイス)の7都市。東京はニューヨークやロンドンとともに「割高(Overvalued)」に分類された。
チューリヒが「バブルのリスク」に分類されるのは今回が初めて。バンクーバー(カナダ)は「バブルのリスク」が減り、東京などと同じ「割高」グループに入った。
UBSが発表した「グローバル不動産バブル指数」のリスト版。ここ数年、分類に大きな変化はみられない。それだけに、今回は「適正水準(Fair Valued)」にとどまったが、指数低下の大きいドバイやシカゴの不透明感が目立つ。
UBS Global Real Estate Bubble Index 2020
調査対象の25都市のなかで大幅な下落を記録したのがドバイ(アラブ首長国連邦)とシカゴ。
ドバイの状況については、地元英字メディアのガルフニュース(9月30日付)がUBSのレポートを引用して、「居住用不動産の価格は2014年に比べて40%(インフレ調整後の実質値)低下し、2008年の世界金融危機後と同レベルの落ち込み」と報道している。
ドバイでは人口急増と緩い金融規制にもかかわらず、住宅価格が低迷している。
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UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの中東・アフリカ代表は、ドバイの状況を次のように分析している。
「ドバイの不動産市場は景気の底にいる。ハイピッチな人口増と緩やかな住宅ローン規制は本来であれば住宅価格を引き上げる要因として作用するはずだが、昨今の過剰な住宅供給と(主要輸出品目である)原油価格の低迷によって、相殺されているのが現状だ」
香港、チューリヒ、ニューヨーク
また、UBSが2020年版の不動産バブル指数公表に伴って特記した事項は以下の通り。
- 香港の住宅価格は過去2年間わずかの上昇にとどまり、2020年のパンデミックによって引き起こされた景気後退のなかでも持ちこたえている。魅力的な住宅ローン金利、市場のファンダメンダルズ(基礎的条件)、さらにはレジリエントな(=強靭で回復力の強い)需要がその背景にある。
- チューリヒでは、都心部に住宅を購入しようというニーズは、これから数四半期は期待できないと思われる。もし現在のような危機モードの経済が長期化すれば、スイスの持家市場はそのうち下落するのを免れないだろう。
- ニューヨークは真のグローバルシティだし、新型コロナ感染拡大中ですら富裕層にとっては魅力的な投資先であり続けている。とはいえ、住宅物件の所有者たちはみな、近い将来、パンデミックが自らの保有する不動産の価値にネガティブな影響をもたらすのは間違いないと感じているようだ。
(文:川村力)