国内最速、PlayStation 5実機を初プレイ。ソニーが目指す「ストレスのないゲーム環境」の意味がわかった

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11月12日発売のPlayStation 5実機をプレイ。メディア関係者がプレイするのは世界でもこれが2度目で、実機撮影が許されたのは、これが世界初だ。

撮影:西田宗千佳

11月12日に発売を予定している、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の最新ゲーム機「PlayStation 5」(PS5)。発売前の「予約合戦」が加熱したことで、その報道の印象が強い、という人もいるだろう。

一方、コロナ禍でイベントの開催中止・オンライン化が続いたことから、関係者をのぞき、実機に触れた人は世界でもごく少数しかいない。ユーザー向けのイベントも、今後開催の予定はない。

今回特別に、PS5の実機でのゲーム体験取材が許された。

試遊にあたって、システム周りは体験できず、あくまで「ゲームのみの取材」となったが、取材では制約なく自由にゲームプレイができた。そこから、次世代機「PS5とはどんなゲーム機なのか」を探ってみよう。

なお、プレイの様子の動画も記事末尾に収録している。そちらも合わせてご覧いただきたい。

実機でわかったPS5。「大型ボディーは“静かに冷やす”ため」

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PlayStation 5。今回使ったのは、UHDドライブを搭載したモデル(税別4万9980円)。ディスクドライブのない「Digital Edition」(税別3万9980円)もある。

撮影:西田宗千佳

まず外観から。PS5は、PS4までのゲーム機よりボディーサイズが大きくなっている。白い曲線のボディーが少々目立つ。

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本体を正面と右側からみたところ。ディスクの挿入口が見える。

撮影:西田宗千佳

だが、実際にプレイしてみると、このボディーサイズになった理由が、おそらく「放熱のため」だろう、というのがわかってくる。

現在のデジタル機器の課題は、どれも「発熱」だ。特に据え置き型ゲーム機やデスクトップPCの場合、いかに静かに放熱して動かすかが重要になる。PS4は残念ながら、動作音が大きめだった。

ファンを使っていて、発熱が大きくなっているとすれば、できることは決まっている。なるべく大きな口径のファンを、できるだけゆっくり回し、効率的に冷やすことだ。そのためには、ボディーが大柄にならざるを得ない。

PS5を体験してみると、プレイ中も冷却ファンの音はあまり目だたたなかった。厳密に音を計測したわけでなくあくまで「体感」だが、ファンの音はPS4よりずいぶん小さくなったように思う。

このことは、快適にゲームをする上で重要なことだ。

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撮影:西田宗千佳

性能向上はもちろん、グラフィックや音質の向上に使われる。

PS4は「フルHDが基本、4Kにも対応可能」なゲーム機だったが、PS5は「4Kが基本、8Kにも対応可能」なゲーム機になる

同じフルHD・4Kであっても、光の表現やディテールの密度は上がる。描画コマ数も、より安定しやすくなり、滑らかな表現が可能になる。

今回プレイできたのは、PS5に付属する3Dアクションゲーム「ASTRO's PLAYROOM」と、ハードと同時に発売されるアクションRPG「Godafall」(日本発売元:PLAYISM)の2本。

どちらも滑らかで密度の高いCG表現になっており、PS4との違いを感じる。

「待ち時間は皆無」驚異の読み込み速度、PS5の快適性

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PS5にバンドルされる3Dアクションゲーム「ASTRO's PLAYROOM」。新コントローラー「DualSense」の可能性を示すショーケースの役割も持っている。

(C)SIE

だが、グラフィックの違いはPS5にとって一つの要素でしかない。「グラフィックが綺麗なことは重要だけれど、そこにはもうあまり惹かれない」という人もいそうだ。

そこで重要になってくるのが「ゲームの読み込み速度の速さ」だ。SIEは、PS5がPS4に比べ「100倍の読み込み速度を実現している」と説明している。

こういう話を聞くと、「ゲームを始めるまでの時間が短くなるのだろう」と期待する。それは間違いないだろう。ただ、今回は「ゲームの起動時間」は試すことができなかったので、正直よくわからない。

一方で、別の観点では、読み込み速度上昇の利点をはっきりと感じた。ゲームの「再開」が非常に速いのだ。

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PS5と同時発売のアクションRPG「Godafall」(日本発売元:PLAYISM、通常版は8690円)。

(C)SIE

多くのゲームでは敵に倒されると「チェックポイントに戻って再開」となる。

ゲームの規模が小さかった頃は、再開時にデータの再読み込み(ロード)が挟まることはなかったが、今はそうではない。データが大きくなったため、チェックポイントへ戻る時にはデータを再読み込みする場合が多い。

しかし、PS5ではそれがない。

少なくとも、今回体験した「ASTRO's PLAYROOM」「Godafall」とも、「倒された後の再開」で待たされることはほとんどない。

また、ゲーム中に大きくステージの中身が切り替わる時でも、ロード画面は出てこなかった。

こうしたことは、ゲームをする上でのストレスを大きく軽減してくれるだろう。

PS5ではストレージに高速なSSDを採用しており、これも発熱源となる。ボディーを大きくして静かな放熱に気を遣っているのは、そのためでもあるだろう。

振動・トリガーでゲーム体験を変える「DualSense」

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PS5の新型コントローラー「DualSense」。

撮影:西田宗千佳

PS5の変化としてもう一つ大きいものが、コントローラーの変化だ。といっても、過去に任天堂がWiiでやったような、見た目が派手でわかりやすい変化ではない。

PS5の新型コントローラーである「DualSense」は、デザインこそ変わったものの、パッと見には普通のゲームコントローラーに見える。実際、握ってみた時の感触も、PS4用の「DUALSHOCK 4」とあまり変わらない。

だが、実際にゲームをやってみた時の「手触り」は大きく違う。振動と音の演出が素晴らしいからだ。

ゲーム機のコントローラーに、もはや振動はつきものだ。DualSenseでは振動の演出をより微細に表現できるよう、機構を大幅に進化させている。

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充電用のインターフェースは、スマホやPCでも主流になった「USB Type-C」へ変更に。こうした部分はPS4発売から7年を経た、「2020年風」の仕様。

撮影:西田宗千佳

結果としてどうなるのか? その辺は、実機でのゲームプレイから実例を挙げる方がわかりやすいだろう。

「ASTRO's PLAYROOM」は、さまざまなステージをキャラクターであるASTRO BOTが動き回るゲームだ。その時、床が金属なのかプラスチックなのか、それとも砂地の海岸なのかが「振動で」わかるようになっている。

歩く・走るの違いはもちろん、スケートで氷の上を滑る様子も、映像だけでなく「振動」でわかる。音も立体音響で聞こえるので、「砂嵐で前が見えない中を、音と足元の感触を手がかりに進む」ことだってできるくらいだ。

一方、アクションRPGの「Godafall」では、右手と左手、それぞれに持っている武器からの衝撃が、コントローラーを持つ「それぞれの手のひら」に伝わる。

左手に盾・右手に剣を持って戦っている時をならな、盾で攻撃を防ぐと、コントローラーを握る左の手のひらにだけ鋭い振動が伝わり、剣で切りかかった時には右手を中心に振動を感じる。

つまり、「当たったら震える」という程度の大雑把な表現ではなく、プレイヤーがゲームの中で感じるだろう感触を伝えられるレベルに進化しているのが、DualSenseの特徴といえる。

人差し指でトリガーを引く「重さ」まで変わる

さらに、FPS(ファーストパーソンシューティング、一人称視点ゲーム)など昨今のゲームでは大事な、コントローラーの「トリガー」も変わった。

PS4まで、人差し指や中指で操作するトリガーは、あくまで「そこにあるトリガー型のボタン」に近かった。だが、PS5ではゲーム内の展開に合わせてトリガーの「硬さ」が変わる。

押し込むために必要な力の強さが変わるので、実際にトリガーを引いているような印象を受けるのだ。

「ASTRO's PLAYROOM」では、コントローラー内蔵のモーションセンサーで方向を決め、トリガーを押し込む量で「バネを押す力」を決め、ジャンプしながら移動するシーンがある。このバネを押す力が、グッと長く押すほど、硬く手応えのあるものに感じられる。これは新鮮で面白い。

レースゲームのアクセル・ブレーキやシューティングゲームで銃の「引き金」に使うなど、いろいろ演出は考えられそうだ。

コントローラーはマイク内蔵。オンラインネイティブを意識

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PS5も伝統的な「テレビの前に座ってコントローラーで楽しむ」スタイルに変わりはない。だがストレスは大きく減っている。

撮影:西田宗千佳

PS5は、コントローラーを振る体感ゲームのように「ゲームのプレイスタイルを大幅に変える」ものとは、ちょっと異なりそうだ。

コントローラーを握ってソファに座り、テレビの前でプレイする……という、よく知っている形は変わらない。

ただし、コントローラーの感触やゲームをするストレスは大きく変わる。

それは、今のゲームシーンを反映したものでもある。

DualSenseにはマイクが内蔵されている。これはゲームの操作にも使えるが、主にはオンラインゲームで音声チャットをしたり、ゲームの「実況プレイ」をしたりする時に使うものだ。

コントローラーには「ミュートボタン」も用意されており、「誰かと話しながらゲームをする」ことを強く意識している。

こうした機能は、PS4発売以降、PCや家庭用ゲーム機で広がった、新たなプレイスタイルを反映したものだ。

そのためか、DualSenseは、ボタンやトリガーを押した時の音が、PS4のDUALSHOCK 4に比べ随分小さくなった。ゲーム実況中にボタンの音がカチャカチャと耳障りに聞こえることがないように……という配慮ではないか。

コントローラーまで含めた「2020年代仕様の最新環境」こそがPS5の強み

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デザインから縦置き専用かと思っている人もいるかもしれないが、PS5は横置きも可能だ。

出典:SIE

一言で言えば、コントローラーまで含めた「統合的で最新の環境」こそがPS5の強みだ。

ゲーミングPCなどでも高性能ゲームは可能だが、「良い環境を安価に、電源をつなぐだけで手に入れたい」という目的なら、PS5の方が有利だ。

PS5独自のゲームに加え、そうした「ストレスのない、最適環境のリーズナブルな提示」こそが、SIEの考える、PCでなく家庭用ゲーム機でゲームをする理由であり、PS5を買う理由なのだろう。

(文・西田宗千佳

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