ドナルド・トランプ米大統領との首脳会談後の共同記者会見で、質問に答えるロシアのプーチン大統領。2018年7月16日、フィンランドのヘルシンキにて。
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- マイクロソフトが発表した「デジタル防衛報告書」によると、国家の支援を受けたサイバー攻撃の半分以上が、ロシアによるものだった。その後ろにはイラン、中国、北朝鮮が続く。
- 同報告書は「国家の活動によって標的にされたり危険にさらされたりした」マイクロソフト・アカウントを調査したものだ。
- 2016年のアメリカ大統領選挙では、ロシア政府が支援するハッカーがヒラリー・クリントン陣営と民主党全国委員会に侵入した。
- ロバート・モラー特別検察官(当時)は、12人のロシア諜報員をハッキングに関連したさまざま犯罪で起訴した。
9月29日に発表されたマイクロソフト(Microsoft)の「デジタル防衛報告書(Digital Defense Report)」によると、ロシア政府が支援するハッカーは世界で最も活発に活動しているという。
この長大なレポートでは、サイバーセキュリティの現在の傾向について掘り下げて分析し、政府の支援を受けたサイバー攻撃を国別に見た場合、ロシアによるものが圧倒的に多いことを明らかにした。ロシアによるものは総数の半分以上を占め、25%を占めたイランを大きく引き離している。
マイクロソフト・アカウント所有者の中で、政府の支援を受けたサイバー攻撃の標的となっているグループは、ジャーナリストから政治団体まで多岐にわたる。2020年は特に、COVID-19の救済活動に関わる多くの組織が標的になった。
同社のコーポレートバイスプレジデント、トム・バート(Tom Burt)氏は「国際的なCOVID-19救済活動に関わる利用者を標的としていたり、認証情報を詐取するフィッシングやマルウェア配信を拡大するためにCOVID-19の話題を用いたりしていた、16の国家が支援する攻撃者の活動を検出した」と、ブログで述べた。
「COVID-19を利用したこれらの攻撃は、著名な政府系医療機関を標的とし、そのネットワークや人物を偵察していた。また、ワクチン研究に携わる学術機関や企業も標的にされた」
活動が活発な政府系攻撃者とその活動内容(「デジタル防衛報告書」より)。マイクロソフトでは、政府系攻撃者の活動に、化学元素の名前を付けて分類している。
Microsoft
ロシア政府は、国際的なサイバー戦争の主要プレーヤーとして、何度も名指しされてきた。
2016年には、ロシア政府が支援するハッカーが、アメリカ大統領候補のヒラリー・クリントン陣営と民主党全国大会委員会への潜入に成功し、内部メールが大量に流出した。2019年には、アメリカのロバート・モラー(Robert Mueller)特別検察官(当時)が、ロシアは2020年の大統領選挙に干渉しようとしていると述べた。
ロシア政府は、ハッキングでアメリカ大統領選挙に介入したことを繰り返し否定してきたが、2016年の選挙への介入を調査したモラー特別検察官は、12人のロシア諜報員を起訴している。
マイクロソフトは、「Defending Democracy(民主主義を守る)」の取り組みの一環として、2018年から選挙のセキュリティを綿密に監視しており、民主党と共和党に対して選挙活動の際にハッキングの可能性があることを警告するとともに、安全な投票技術の開発に取り組んでいる。今回発表した「デジタル防衛報告書」は、サイバーセキュリティを監視するためにマイクロソフトが行う最新の取り組みであり、今後も年次報告書として発行するとしている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)