「見えない資産」が企業を伸ばす──立教大学・中原教授に聞く、組織と個人を強くする方法

 中原淳(なかはら・じゅん)。立教大学経営学部教授。立教大学大学院経営学研究科リーダーシップ開発コース主査、立教大学経営学部リーダーシップ研究所副所長などを兼任。博士(人間科学)。専門は人材開発論・組織開発論。北海道旭川市生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科、メディア教育開発センター(現・放送大学)、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授等を経て、2017年-2019年まで立教大学経営学部ビジネスリーダーシッププログラム主査、2018年から現職。

中原淳(なかはら・じゅん)。立教大学経営学部教授。立教大学大学院経営学研究科リーダーシップ開発コース主査、立教大学経営学部リーダーシップ研究所副所長などを兼任。博士(人間科学)。専門は人材開発論・組織開発論。北海道旭川市生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科、メディア教育開発センター(現・放送大学)、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授等を経て、2017年-2019年まで立教大学経営学部ビジネスリーダーシッププログラム主査、2018年から現職。

コロナ禍で働き方が大きく変わり、企業も、そこで働く個人も変化を求められている。多くの企業がリモートワーク導入するなど新しい働き方が広がる今、鍵となるのが企業に内在する「見えない資産」をいかに経営に活かしていくか。日本の企業、組織が抱える課題とは何か、立教大学経営学部の中原淳教授に聞いた。

リモートワークでは「インフォーマルな情報が見えなくなる」

 中原淳さん

2020年4月の緊急事態宣言以降、多くの企業に在宅勤務を導入する動きが広がった。企業は働き方の急激な変化への対応に追われたが、中でも戸惑いの声が目立ったのが新入社員を中心とする若手社員たちだ。社会人生活をリモートワークでスタートさせることになったからだ。

リモートワークでいちばん見えなくなるのが、人と人との関係だと思います。今年入社した新入社員は、社内での人間関係ですら充分に構築できていない状態で、リモートワークをすることになった人が多いでしょう。そのような状況では、分からないことが出てきても、誰に聞けば良いのかも見当が付かないわけです」(中原教授)

その一つの例が、人脈に関する情報だ。例えばある問題に関して、Aさんが情報を持っている人物を知っているとする。Aさんの知っているBさんやCさんにアクセスできれば、そこから課題解決につなげていけるだろう。こうした情報は、人との関係が構築できていない段階では見えにくい。ここに新社会人が戸惑った一つの理由がある。

インフォーマルに発達する人脈情報などは、時間や空間を跨げば跨ぐほど、共有しづらくなりがちです」(中原教授)

こうした情報を、経営学的には「トランザクショナル・メモリ」という。人と人とが出会って、「誰が何を知っているか」ということを共有する知識を指す。リモートワークではそうした情報が共有しにくくなるという弊害がある。

コロナ禍は働き方の課題を顕在化させた

従業員の業績評価

Getty Images/courtneyk

リモートワークが広がったことで、日本人の働き方に関する課題が指摘されるようになった。日本の働き方の課題は、どこにあるのか。

「いま起こっている働き方に関する問題のほとんどは、コロナ以前からあったものです。急速な変化を強いられたことで、白日の下に晒されたと考えた方が正しいでしょう。

リモートワークをきっかけに、時空間に縛られない働き方が広がって、今後はフレキシブルなワークスタイルに変わっていくと思います。いずれは、「リモートワーク」という言葉自体が死語になるのではないでしょうか 。究極的には、成果があがり、生産性が高まる場所や働き方を、自ら選べばいいのだと思います。どこで働くのか、ネットなのか、対面なのかは、手段でしかありません」(中原教授)

働き方が個別化していき、働き手がそれぞれの働き方をするようになると、個別に進めなければいけないケースが増え、組織と働き手の間に遠心力が働く。そのため組織には、共通の目標に向かって進むことで成果を出す求心力を働かせるような力が必要となる。

「パフォーマンスだけ出せばいいなら、個人の力で頑張ればいいけれど、組織として成果を出すとなると、個別に走ってもらうだけでは足りない。強いマネジメント力や、それが駆動するようなインフラを組織の中に持つ必要がありますね」(中原教授)

「自分を自分で経営する」意識を持て

パソコンとノートを広げる女性

Getty Images/Cavan Images

企業と個人との関係は、どう変化していくのか。

「パフォーマンスで評価されるようになると、働いた時間の長短は関係なくなっていきます。そこで従業員にとって大切になるのは、いかに短い時間で最大のパフォーマンスを出すか、ということです」(中原教授)

企業で働く個人は今後、与えられた仕事をこなすだけではなく、自ら職務能力を高めていくことが必要になる。加えて「セルフ・マネジメント力(自己統制力)」――リモートであろうがなんであろうがパフォーマンスが出せる能力が求められると中原教授は指摘する。

「スキルやキャリアの開発を会社任せるにするのではなく、自分で自分を経営する力が必要になると考えればいいのではないでしょうか」(中原教授)

一方、マネジメントに求められるものも変わる。

「チームのメンバーを束ねて会社としての成果を上げていくためには、まず、目標を明確化し、各人のパフォーマンスを引き出すこと、次に、時間の長短に関係なく従業員のパフォーマンスを正当に評価することが必要になります。

日本の企業ではこれまで、勤務年数の長くなった人が、適性や能力の有無に関係なくマネジメントポストに就くケースが多かった。しかし、チームをどう動かすのか、職場での人の束ね方といったマネジメントの手法は、トレーニングとそのフィードバックによって初めて身に着くものです。今後は、マネジメントのための人材を、意識的に育成していくことが求められていくでしょう」(中原教授)

不揃いなデータを蓄積しても、分析も活用もできない

机の上に山積みになった資料

Getty Images/Weerayut Ranmai / EyeEm

こうした強いマネジメントを支えるために必要なのが、データインフラの整備だ。

「実は、多くの企業が、さまざまなデータを部署ごとに管理していたりするため、経営に役立つ分析や“見える化”が非常に難しいのが現状です」(中原教授)

ここに多くの現場が抱える課題がある。人事データ、顧客データ、営業データ……。企業内にはさまざまなデータがある。だが、現状はそれを分析して活用できる形でデータが蓄積されているケースは稀だ。

分析のためにデータベースを統合しようにも統一したキーがないために名寄せができない、アンケートの記入形式がバラバラでデータとして分析できる状態になっていない、データベース内の「ノイズ」を整理しないと分析までたどり着けない……データインフラが整備されておらず、データに基づく経営には遠いのが現状。「膨大な労力を割いて「クレンジング」をしてからでなければ活用できない」と中原教授は嘆く。

「まずは、データ管理のためのインフラの整備からスタートする必要があるでしょう。データ分析可能な状態でデータを蓄積していく。そして、データを活かしていくには、「データは誰のものか」をもっと意識する必要があるでしょう。会社経営のために、データを集約、分析していくという視点を持たなければ、データを集めても活かすことができません。

加えて、そのデータ管理を誰がやるのか、ということも同時に考えなくてはいけません。それは現場のマネジャーの仕事になると思います」(中原教授)

対面を前提にしたビジネスのあり方は変わっていく

名刺交換をする男女

Getty Images/ David Sacks

コロナ禍でリモートワークが進み、会議も、商談もオンラインで済ませることが増えた。Sansanの調査によると、オンラインでの顧客接点はコロナ禍前後で2.5倍に増える一方、新規の名刺交換の機会は約3割減少。各従業員が名刺交換を通じて得た人脈データにも変化があった。

「確かにコロナ禍によって、必ずしも名刺交換をしなくてもいい、名刺を持っていなくても罪悪感を抱かなくていいという空気になっていると思います。それでも、名刺交換したほうがいい場面はあります。ビジネス上の接点やコンタクトポイントは、人脈資産としてやはり重要だからです。ただ今後、それが必ずしも紙の名刺である必要はなくなってくるかもしれませんね」(中原教授)

最近では、オンラインセミナーなどのイベントを開くと、リアルのイベントとは桁違いの参加者を集めるようになってきた。名刺交換も含めて、既存のビジネスのあり方、働き方は今後、変わっていくだろう。

「少なくとも新型コロナウイルスのワクチンがいきわたるまではそれが続いていくことになるでしょう。そしてそれが2022年ごろまで続くと、この変化の趨勢がもとに戻ることはないと思います。それまでには、みんなが新しいやり方を学習していくのではないでしょうか」(中原教授)

法人向け名刺管理サービス「Sansan」は、コロナ禍でリモートワークやオンライン会議が増えるなかでも活用可能な、オンライン名刺のサービスを提供している。オンラインでも、複数の参加者相手でもURLを送信することで名刺を交換し、そのままデータ保存もできる仕組みだ。相手がSansanのユーザーでない場合でも、QRコードなどを使って名刺のやり取りが可能。さらに「名寄せ機能」を使えば、データクレンジングを手軽に行うこともでき、企業内の“活用できる”顧客データ管理を進める大きな手助けとなる。

データ活用を変え、働き方を変え、そしてそれを企業の成長につなげていく。データ活用が企業の競争力を決める時代に、不可欠のサービスと言えそうだ。


Sansanによる調査「経済損失額21.5億円/顧客データ危機の詳細レポート」についてはこちら。

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