ミドリムシ(ユーグレナ)を用いたバイオジェット燃料の開発・製造を行っているバイオベンチャーのユーグレナは10月5日、同社が進める研究開発が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のバイオジェット燃料に関する公募事業として採択されたことを発表した。
NEDOは、国からの予算を受けて新エネルギーをはじめとした新技術の研究開発の支援を通じて社会実装を推進する組織。採択した事業に対して、専門家らによる技術評価なども行っている。
2テーマで合計数十億規模のプロジェクト
横浜市鶴見区に建設された、バイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラント。
提供:ユーグレナ
バイオ燃料は、地球温暖化の原因物質とされている二酸化炭素(CO2)の排出量を抑制する観点から、近年、石油由来の燃料の代わりとして注目度が高まっている。
ユーグレナは、2020年3月末に横浜市鶴見区のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを稼働させて以降、西武バスや八重山観光フェリーなどと協力し、バスや船向けにバイオディーゼル燃料を提供、その普及に取り組んできた。
フェリーにバイオ燃料を補給しているようす。
提供:ユーグレナ
当初、2020年に目指していたユーグレナ由来のバイオジェット燃料を使った飛行機の商業フライトはまだ実現できていないものの、バイオ燃料の利用拡大は着実に進んでいる。
ユーグレナは今回、NEDOが公募していたバイオ燃料に関する事業のうち、「バイオジェット燃料生産技術開発事業」と「実証を通じたサプライチェーンモデルの構築、微細藻類基盤技術開発」の2つのテーマで採択された。事業期間はどちらも2020〜24年度。
このうち、バイオジェット燃料生産技術開発事業は伊藤忠商事、デンソー、三菱ケミカルらとの共同採択。5年間で5億〜30億円の助成金が想定されている。
また、実証を通じたサプライチェーンモデルの構築事業では、ユーグレナとは別テーマで採択された企業との合計ながら、5年で68.5億円程度の助成金が出る見込みだ(金額の配分は非開示)。
金額の詳細は明かされていないが、2テーマで総額数十億円規模の助成金が想定される。
ユーグレナは、今回のNEDOの事業への採択によって、
「バイオ燃料製造実証プラントの運転費用、商業化に向けた事業検討費用、燃料用微細藻類の培養に関する実証設備への投資や運転費用等に対して、助成金による支援を受ける予定です」(プレスリリースより)
としている。
バイオ燃料の普及には欠かせない「大量培養」という課題
微細藻類基盤技術開発事業の実施イメージ図。培養実証設備の建設や、培養、収穫、乾燥、藻油の抽出、残渣(ざんさ)の利活用などの技術開発を行う。また、抽出後の残渣は水産物の養殖用の飼料として活用する研究も行う予定だ。
提供:ユーグレナ
NEDOは、2030年頃にバイオジェット燃料が市場に普及することを目指して今回の公募を実施している。
事業全体としては、バイオ燃料の原料となる微細藻類を安定的に大量培養する技術の確立とともに、研究拠点を整備。さらに、製造技術の研究開発だけにとどまらず、次世代燃料として普及させる上で欠かせない経済性や二酸化炭素の削減効果、エネルギー収支などを検証し、早い段階での市場形成につなげる狙いがある。
ユーグレナは2025年までに、生産量を2000倍、コストを100分の1にする目標を掲げている。実現のためには、大量培養による効率化の実現が必須だ。
出典:ユーグレナCI刷新 補足資料
ユーグレナとしても、今後、バイオジェット燃料の需要増が想定される中で、現在は石垣島にある同社の工場で培養している燃料用のミドリムシを、今後大量培養につなげる技術開発は必須だ。
ユーグレナは、2019年から伊藤忠とともにインドネシアとコロンビアでミドリムシの安定供給に向けた大量培養の実証研究を進めてきた。海外で研究を進めてきたのは、生産コストや培養環境の観点からだ。
今回、このうちインドネシアで行っていた事業を、NEDOの公募事業として推進していくとしている。
「培養実証設備の建設や、培養から収穫、乾燥、藻油の抽出、残渣(ざんさ)の利活用などの要素技術の開発、また、藻油抽出後の残渣は水産養殖用の飼料原料として利活用する研究開発をNEDOの支援のもと実施いたします」(ユーグレナ・プレスリリース)
(文・三ツ村崇志)