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街の飲食店に恩恵なし? Go To Eatキャンペーン「3つの課題」

Go To Eatで賑わう中華街

街には賑わいが戻りつつあるが、Go To Eatが飲食店の窮地を救う原動力となり得るか。

撮影:平澤寿康

当初の予定通り、「Go To Eat」キャンペーンが10月1日より開始になった。Go To Eatは、消費者にとっては十分にお得なキャンペーンとなっているが、この施策の本来の目的である飲食業の需要喚起に本当につながるのだろうか。

筆者の身内にも飲食店関係者がいることもあり、本稿では「飲食店側から見たGo To Eatの姿」を掘り下げたいと思う。

Go To Eat参加条件は、特に厳しくないが……

Go To Eatの概要や、消費者がどのように利用するのかといった点については、こちらの記事で紹介した。

一方、飲食店がGo To Eatキャンペーンに参加するための手順は……当然だが、一定のルールがある。簡単に紹介しよう。

まず、Go To Eatに参加できる飲食店は、簡単に言うと「店舗を構え店内で飲食が行え、一定の感染症対策が行われている飲食店」だ。デリバリー専門店など店内飲食をメインとしない店や、客への接待・遊興などを伴う店は対象外になる。

Go To Eatの対象飲食店の一例。

Go To Eatの対象飲食店の一例。

出典:農林水産省

「一定の感染症対策」とは、業界団体である日本フードサービス協会と全国生活衛生同業組合中央会が協力して作成した「外食業の事業継続のためのガイドライン」に基づいている。

下の図表がその主な内容で、こういった感染症対策を行うとともに、その取り組み内容を店内に掲示する必要がある、としている。

参考:新潟県 Go To Eatキャンペーン資料より(https://niigata-gte.com/pdf/moushikomi_v2.pdf

「外食業の事業継続のためのガイドライン」に書かれた一定の感染症対策。

「外食業の事業継続のためのガイドライン」に書かれた一定の感染症対策。

出典:農林水産省「Go To Eat公式サイト」より

ただ、感染症対策は「新しい生活様式(ニューノーマル)」での店舗運営において必要不可欠と思われる内容。今後のことを考えれば、多少コストがかかるとしても、Go To Eatと関係なく取り組まなければならないものだ。

そういう意味では、感染症対策は店舗にとって特別厳しいものではないだろう。

この他、ステッカーの掲示や通知サービスの利用など、都道府県が独自に条件を設定している場合もある。

以上が、飲食店がGo To Eatに参加するための基本条件で、その上で参加申請して認証を受けることで、Go To Eatに参加できるようになる。

さて、いざ「Go To Eat参加」……と内容を調べていくと、どうにもGo To Eatは飲食店にとって本当に役立つ施策なのか、疑問に感じる点がたくさん出てくるのだ。

課題1:申請は「食事券利用」「オンライン飲食予約」がそれぞれ必要

食べログのGo To Eat

食べログのGo To Eatキャンペーンページ。

撮影:伊藤有

まず、Go To Eatでは、プレミアム付食事券と予約サイト経由でのポイント付与という2種類の利用方法が用意されている。

しかし、いずれも同じGo To Eatの事業であるにも関わらず、食事券参加は各都道府県の食事券発行事業者に申請、予約サイト経由のポイント付与参加は各予約サイトへ加盟・登録というように、「飲食店はそれぞれ個別に参加申請を行う」必要がある。

確かに、食事券とポイント付与は異なる事業として運営されており、運営事業者も異なっている。とはいえ、同じGo To Eatの事業なのだから、可能な限り簡便に登録できるようにするのが本来あるべき姿ではないか。個別申請が必要なことによって、後半で説明するような、別の問題も発生する。

はっきり言ってこの仕組みは、飲食店側に余計な負担を強いるものでしかないのでは……制度を調べてまず感じたのはこの点だ。

課題2:予約サイトを利用できない飲食店は実は多い

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撮影:平澤寿康

予約サイト経由のポイント付与は、消費者にとってはかなり魅力的な施策だ。ただ、飲食店にとっては必ずしもそうとは言えない部分があることは、あまり知られていない。

例えば、ラーメン店や喫茶店をはじめ、「予約に非対応」で営業している飲食店は数多く存在する。そういった飲食店のほとんどは、もともと予約を受け付ける仕組みでの営業が難しい。Go To Eatのためにと店舗側が努力しても、どうにもならない問題があるのだ。

もちろん、中にはGo To Eatを機に予約を受け付けようと考える飲食店もあるかもしれないが、そこにも別の壁がある。それは、予約サイトに支払うことになる「送客手数料」の問題だ。

Go To Eatに参加している予約サイトは13事業者ある。同じ予約サイトといっても、「送客手数料」の設定はまちまち。開示された情報を見ると、無料のところから、最大1人200円が必要なところまでさまざまだ。

Go To Eat参加の予約サイト一覧

Go To Eatに参加している予約サイト一覧。送客手数料にかなり違いがあることがわかる。

出典:筆者提供データをもとに編集部作成

無料の予約サイトだけ利用することも可能だが、予約数を増やすにはユーザー数の多い大手サイトの利用が不可欠。しかし、大手サイトのほとんどが送客手数料を徴収する。

そのため、飲食店にとっては、予約の客が増えるほど送客手数料の負担が増えることにつながる。これは、体力のない個人経営の飲食店にとっては切実な問題で、前出のラーメン店や喫茶店などのように、客単価を抑えた飲食店では大きな負担となることも容易に想像がつく。

また居酒屋などの飲食店にとっても、送客手数料を加味した料金設定に変更するわけにもいかず、「単純に利益が減る」だけになる。

これは何も、机上論ではない。

東京都でいくつかの個人経営の飲食店に話を聞いてみたところ、実施内容を疑問視する声とともに、「結局(Go To トラベルと同様に)大手しか儲からない仕組みになっているのは残念」といった声が多かった。

予約サイトは飲食店が存在してこそ成り立つ事業だ。苦境の飲食店を応援する意味でも、せめてGo To Eatの予約に関しては「送客手数料も無料」にするべきだったのではないだろうか。

課題3:Go To トラベル「地域共通クーポン」という落とし穴

Go To トラベル地域共通クーポンの掲示

10月1日より利用開始となったGo To トラベルの「地域共通クーポン」の存在が、Go To Eatと相まって、飲食店の現場を混乱させている。

撮影:平澤寿康

さらに、もうひとつ飲食店に混乱を与えているものがある。

意外かもしれないが、原因はGo To Eatと同じく10月1日より利用開始となった、Go To トラベルの「地域共通クーポン」だ。

これは、10月1日以降にGo To トラベルで旅行した場合に付与される、「旅行代金の15%相当のクーポン」(上限は1名1泊あたり6000円、日帰りは3000円)のこと。旅行先および隣接する都道府県の対象店舗で利用できる。

ただ、店舗が地域共通クーポンに対応するためには、「Go To トラベル」に申請し認証を受けなければならない。

ここに、落とし穴がある。

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地域共通クーポンと、プレミアム付食事券。それぞれお店側が申請していないと使えない……とは利用者はなかなか気づかない。

出典:各自治体サイトより

例えば、Go To Eatだけ申請している店舗では、Go To トラベルの地域共通クーポンは利用できない。しかし、消費者目線で見れば、「Go To Eat食事券が使えるなら地域共通クーポンも使えるはず」と思って店舗を訪れる可能性は高い。結果、店舗の会計で無用の混乱が起こるわけだ。

Go To EatとGo To トラベルは管轄省庁や運営団体が異なるため、仕方のない部分もあるだろう。とはいえ、いずれも「Go To キャンペーン」のひとつとして実施されているものだ。せめて、飲食店側から「不親切だ」という意見が出ない施策に事前調整することはできなかったのか、と思わずにはいられない。

予算を有効活用できる仕組み作りがほしい

京都・錦市場(2019年撮影)

京都・錦市場(2019年撮影)。

Shutterstock

Go To Eat関連事業は、国が民間の事業者に委託し運営されている。もちろんそこには委託費用が発生している。

Go To Eat全体の事業費は2003億円で、そのうち食事券が767億円、予約サイト経由でのポイント付与が767億円、残りの469億円が業務委託費の上限として計上されている。つまり、事業費の約23%は還元されないことになる。致し方ないかもしれないが、「500億円近くが飲食店に入らない」と思うと、もう少し何か良い方法がないのか、という気持ちになってしまう。

また、説明してきたように、飲食店がGo To Eatを利用するにはさまざまな手間を強いられるとともに、予約サイトを利用すれば手数料負担もある。現実問題として、コロナ禍の客足減少に苦悩する個人経営の飲食店の解決策としては、あまり機能しないのではないか、という懸念がある。

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出典:農林水産省

Go To トラベルでは「勝ち組と負け組が鮮明に別れている」との指摘があるように、Go To Eatも同様の構図になる危険性がある。せっかくの施策なのだから、中小店舗も含めて満遍なく効果が行き渡るべきだ。

もっとも、課題が多く存在するのは事実だが、Go To Eatをはじめ、Go Toキャンペーンがこれだけの短期間で実施できていることは、評価していい部分ではあるだろう。

Go To Eatキャンペーンはまだ始まったばかり。そのため、問題点のいくつかは今からでも修正可能なはずだ。

また、特にキャンペーンを利用する方々には、Go To Eatを利用するなら、地元や行きつけの「普段使いの中小店舗」を積極的に利用してあげてほしいとお願いしたい。

見なおすべき部分は素早く見なおし、消費者、事業者とも最大限に活用できるキャンペーンへと進化してほしい。

(文・平澤寿康

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