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Apple Pay版PASMOが提供開始…パスモで変わる「キャッシュレス経済圏」

発表会

東京の小田急線新宿駅コンコース内で開催されたApple Pay用PASMO発表会。

撮影:鈴木淳也

交通系電子マネー「PASMO」(パスモ)を運営するPASMO協議会は10月6日、小田急電鉄の新宿駅にてApple Pay用PASMOの発表会を開催した。

2007年3月に首都圏私鉄共通のICカード事業としてスタートしたPASMOは、2013年に全国相互利用サービスを開始。

事業開始13周年目にあたる2020年3月に、Android向けの「モバイルPASMO」の提供を始めている。そして8月にはPASMOの「Apple Pay」対応を発表し、今回10月6日のサービス開始を迎えている。

Apple Pay対応で首都圏ユーザーの主要なニーズを満たす

PASMO協議会会長の五十嵐秀氏の挨拶

PASMO協議会会長の五十嵐秀氏の挨拶。

撮影:鈴木淳也

小田急電鉄出身でPASMO協議会会長の五十嵐秀氏は発表会冒頭で挨拶をし、カード型PASMO発行枚数が同時点で4000万枚目前に到達したことを報告。サービスや機能拡充を進めつつ、一大インフラとして成長したことを強調する。

なお、東日本旅客鉄道(JR東日本)によると、2020年3月期末時点でのSuica発行枚数は8273万枚であり、Suicaに対するPASMOの発行枚数はおおよそ5割程度の水準にまで達していることが分かる。

SuicaとPASMOで全交通系ICカードの8-9割程度を占めるといわれており、両サービスがともにAndroidとiOSの2大モバイルプラットフォームに対応したことを考えれば、シェアベースで想定されるニーズの多くを満たすことが可能となる。

中島浩貴氏

PASMO協議会モバイルプロジェクトリーダーの中島浩貴氏。

撮影:鈴木淳也

AndroidとiOSの両プラットフォームを合わせた「モバイルPASMO」の会員目標についてPASMO協議会モバイルプロジェクトリーダーの中島浩貴氏は「先日(2020年9月9日)、JR東日本さんがモバイルSuica会員数が1000万人を突破したことを発表しましたので、当面の目標はこの1000万会員を目指していきたい」と述べている。

モバイルSuicaがApple Pay対応を発表して以降、会員数の増加ペースが拡大したこともあり、PASMO協議会においても同様の効果が期待できると考えているようだ。

iPhone、アップルウォッチでもPASMOが使える

PASMO for Apple Pay

PASMO for Apple PayはiPhoneとApple Watchの両方で利用可能。

撮影:鈴木淳也

今回のPASMO for Apple Payだが、2020年春に提供されたAndroid版にはないメリットとしてApple Watch対応が挙げられる。

近年ウェアラブルデバイスでのSuica対応が進んでいるが、比較的ユーザー数が多いApple Watchにおいても利用が可能になった。

iPhone上でのPASMOはWalletアプリまたはPASMOアプリのいずれかを通じて利用できる。

既存のカード型PASMOを定期券情報を含めてiPhoneで吸い出してWalletアプリ内のカードとして登録可能な点もSuicaと同様だ。

チャージはWalletアプリとPASMOアプリのどちらでも可能だが、前者の場合は必ずApple Payに登録したクレジットカード経由でのチャージとなる。

Walletアプリとの機能差

2種類あるiPhoneでのPASMOの利用方法。このあたりはSuicaと同じ。

撮影:鈴木淳也

ただし、現状のApple PayではVisaカード経由でチャージできないため、その場合はPASMOアプリにクレジットカード情報を登録しておき、同アプリ上でチャージを行うことになる。

登録するクレジットカードは3Dセキュア対応が必須な点はAndroid版と同様だ。定期券などの購入もPASMOアプリ経由となるため、基本的にはPASMOアプリをインストールしておいて、必要に応じて起動させる形になるだろう。

なお、10月6日の執筆時点では、まだApp Store上のPASMOアプリが全ユーザーに見えない状態でもし検索してもアプリが出てこない場合は数日おいて試してみてほしい。

PASMO通勤圏のユーザーに大きなメリット

定期券発売事業者

PASMO for Apple Payでの定期券に対応する交通事業者の一覧。ここがSuicaとの最大の違い。

撮影:鈴木淳也

また、SuicaではなくPASMOがモバイル対応する意義として、JR東日本以外の私鉄・バスなどの「PASMO通勤圏在住ユーザー」の定期券利用が挙げられる。

通勤区間の前後いずれかにJR路線が含まれない場合、基本的にモバイルSuicaでの定期券発行は難しいが、モバイルPASMOであれば問題なく端末上で発行が可能なため、窓口に行かなくても定期券の発行処理を完結できる。

中島氏はモバイルならではのユーザーへの価値提供の裏側で、19の鉄道事業者、16のバス事業者をとりまとめたPASMOならではの苦労があったことを明かした。

「鉄道事業者ごとに異なる窓口で発行処理を行っていたものを、1つに束ねることがモバイル対応における難しさの1つだった。PASMO協議会での一括したサポート窓口を含め、利用者のサービス利便性向上に努めていきたい」(中島氏)

首都圏と首都圏以外でキャッシュレス経済圏が変わるか

これまで交通系IC利用が比較的多いとされていた首都圏においてさえ、モバイル利用が広がらない一因となっていたPASMOのモバイル対応。プラットフォームへの対応が一通り完了したいま、どの程度まで利用が伸びるのか注目を集めることになる。

一方で、採算性やシェアの面からICOCAを含め、これ以上交通系ICカードのモバイル対応が難しいことから、首都圏とそれ以外でキャッシュレス経済圏の地図が異なってくることも予想される。

2025年のキャッシュレス決済比率40%の目標を達成した段階で、決済サービス各社はどのような勢力図を描いているのかに注目したい。

(文、撮影・鈴木淳也


鈴木淳也:モバイル決済ジャーナリスト/ITジャーナリスト。国内SIer、アスキー(現KADOKAWA)、@IT(現アイティメディア)を経て2002年の渡米を機に独立。以後フリーランスとしてシリコンバレーのIT情報発信を行う。現在は「NFCとモバイル決済」を中心に世界中の事例やトレンド取材を続けている。近著に「決済の黒船 Apple Pay(日経BP刊/16年)」がある。

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