5Gがコロナウイルス感染を拡大したという陰謀論がネット上で爆発的に広がっている。
Cindy Ord/Getty Images
- 最新の研究で、個人の人格が陰謀論から影響を受ける度合いに関係しているかが調査された。
- 関連性はあまり大きくなかったが、研究者たちは自己陶酔的、衝動的、不安症、抑うつ的、あるいはその組み合わせを持つ人々の方が陰謀論から比較的影響を受けやすいことを発見した。
- この研究結果は、不安と抑うつが急増したコロナウイルスの世界的流行期に、なぜQアノンのような陰謀論がブームになったのかを説明するのに役立つかもしれない。
個人のパーソナリティーが陰謀説を信じる可能性に影響を与えるという証拠が出てきている。
エモリー大学の研究者らによると、特に自己中心的、自己愛的、不安的、抑うつ的、衝動的な人は、これらの特徴を示さない人よりも、陰謀論にしがみつく傾向がわずかに大きいという。
この研究論文は9月10日付の「The Journal of Personality」誌に掲載されたもので、エモリー大学の学生と無作為に選ばれたバーチャル参加者1927人を対象に行われた。参加者の大多数は大学教育を受けた白人の民主党支持者だったが、少数ながらアジア系、アフリカ系、ヒスパニック系の参加者もいた。
まず、研究者たちは、それぞれの参加者が陰謀論を信じる可能性がどの程度あるかを判断した。そのために、具体的な出来事や一般的な理論に基づいた陰謀の記述を、1(完全に誤り)から6(完全に正しい)のスケールで評価させた。
陰謀の記述には「アメリカの機関は1970年代、意図的にエイズの流行を作り出し、黒人男性とゲイ男性に広めた」「現在の産業界に損害を及ぼす可能性のある先進技術や高度な技術は抑制されている」などがあった。
調査によると、参加者の60%がこれらの陰謀を信じる可能性は低いが、40%は信じていた。
性格によって陰謀の影響を予測できる
その後、研究者は参加者の個人的な性格特性を分析する別のテストを実施した。
行われたのは性格テストで「私は、私より重要でない人々としばしば取引しなければならない」や「新しい証拠が提示されたら、私は自分の意見を再考する」などの文章にどれだけ賛成か反対かを答えるものだった。
その回答から、研究者たちは、良心的である、組織的で責任感があり勤勉である、意地悪である、衝動的であるなど、多くの性格的特徴を特定することができた。
研究リーダーのショーナ・ボウズ(Shauna Bowes)は、ある種の性格特性と陰謀を信じる傾向との相関関係は大きくないが、それでも性格が行動に及ぼす影響について洞察を与えるものだと、Insiderに語った。
陰謀論を信じやすい性格
自己愛的、衝動的、孤立的、不安的、抑うつ的な性格、あるいはこれらの特性の組み合わせを持つ人は、ある種の陰謀を信じる傾向があることがボウズのチームによって発見された。
ボウズの説明によると、精神病的傾向があること、従来とは異なる意味でオープンで創造的であること(「ハリー・ポッター」のルナ・ラブグッドを思い浮かべてほしい)は、陰謀論と弱い結びつきがあるもう一つの特徴だった。
「これらは必ずしも同じ個人で同居しているわけではないかもしれないが、個人の特性であり、自分の考えを確信しているから陰謀論的信念に疑問を持たなかったり、他のことが何も意味がないように思えるからそこに安らぎを見つけたりする可能性が高くなる」とボウズはInsiderに語っている。
彼女は、陰謀の影響を受けやすい特性や性格を分析することは、非常に多くの要因が1つの言説の選択に影響を与えるので難しいと述べた。
「これは多くの点で満足のいく結果ではなかった。なぜなら我々『あなたはナルシストなので陰謀論を信じている』とか『あなたは不安を感じているから、陰謀説を信じている』と言いたいのだが、どうもそうではないようだ」
陰謀論はパンデミックを理解しようとする人を安心させる
しかし、この研究は、コロナウイルスの世界的流行が始まって以来、陰謀論が増加していることを理解するのに役立つ可能性がある。
支持者の多い陰謀論グループの1つ、Qアノン(QAnon)は、2017年にインターネット上に登場し、トランプ大統領は人身売買と小児性愛を支持する有名人や民主党員と秘密裏に戦っているという根拠のない理論を展開している。
ガーディアンが8月に行った調査では、Qアノンのメッセージを支持して広めるソーシャルメディアグループが急増していることが分かった。フェイスブック(Facebook)は7月に790のQアノンのグループをプラットフォームから削除し、Twitterは7000のアカウントを削除した。
Qアノンの支持者によると、同じ有名人のグループがコロナウイルスの大流行を作り出したという。ボウズによると、彼女の研究はこのことを説明するのに役立つかもしれないという。
「COVID-19についての説明は彼らのとって満足できないもので、陰謀論的な考えに目を向けることが非常に魅力的になっているのだろう。何か満足できる他の原因や説明がなければならないのだ」とボウズは一部の陰謀論者の思考について語った。
孤独感が増していることが影響
元々不安や抑うつを感じている人が、このパンデミックでその2つが急激に悪化し、そのグレーな部分をなんとかしようと陰謀論に走ることは、たとえそれが他の人が不条理だと思うことに根ざしていたとしても、心に秩序と平穏をもたらすものであることに変わりはない。
「我々が今まで経験したことのない状況にあって、社会にはとても多くの情報が錯綜している。だから、多くの人が陰謀論に目を向けてこう言うのだろう。『そう、私は1人ではない。それは理にかなっている』」 とボウズは述べた。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)