会社分割などの勧告に大手テック4社が強く反発…それぞれの主張のまとめ

アメリカ下院の反トラスト小委員会で宣誓するテック企業の幹部たち。2020年7月29日。

アメリカ下院の反トラスト小委員会で宣誓するテック企業の幹部たち。2020年7月29日。

REUTERS

  • アメリカ下院の反トラスト小委員会は、アマゾン、アップル、グーグル、フェイスブックに関する調査報告書を発表した。
  • 報告書は、4社を独占企業であると非難し、会社分割を含め、その権力を抑制するための包括的な勧告を行った。
  • 4社はいずれも、この報告書と勧告は見当違いであると主張している。

大手テクノロジー企業がアメリカ下院に対抗しようとしている。

アメリカ下院の反トラスト小委員会は10月6日、1年間に渡る反トラスト法に関する調査に基づいて、449ページに及ぶ報告書を提出し、アップル(Apple)、アマゾン(Amazon)、グーグル(Google)、フェイスブック(Facebook)が独占状態にあると結論付け、その力について説明した。

報告書は「かつてはまとまりもなく弱小だったスタートアップ企業は、石油王や鉄道王の時代にあったような独占企業になってしまった」と述べた。

報告書では、公平な競争の場を確保するための幅広い提言がなされており、その中には、大手テクノロジー企業が自社のプラットフォームを利用して競合他社に先駆けて製品を強化することを防止する新しい法律、合併の禁止、利益相反を防止するための会社分割などが含まれている。

テクノロジー企業はこれを黙ってみているわけではない。各社がどのように反応したのかを紹介しよう。


アマゾン「マーケットプレイスは販売業者と消費者の利益になっている」

ジェフ・ベゾス

アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾス。

AP Photo/Charles Krupa

アマゾンは報告書に対する回答として1400ワードに及ぶの長文のブログ記事を投稿した。

「大企業が支配的であると定義されているわけではなく、その成功が反競争的行動の結果だという推測は間違っている。それとは反対のことを示す証拠があるにもかかわらず、この誤った考えが反トラスト法に対する当局の論旨の中核になっている」とアマゾンは述べている。

アマゾンはブログで報告書のさまざまな記述を詳細に検証しているが、特に、アマゾンがマーケットプレイスを運営し、同時にサードパーティーの販売者と競合する自社商品を販売していることが反競争的であるという小委員会の結論に異議を唱えた。

同社によると、1999年には2つのサイト(1つは自社用、もう1つはサードパーティーの販売者用)を運営しようとしたが、消費者の混乱を招いたという。

「アマゾンが20年前に試みて失敗に終わった2つのサイトによるモデルを規制よって復活させるという(小委員会の)構想は、小規模販売業者にも顧客にも害を与える」と同社はブログに投稿した。

「売り手をわかりにくい別々の店舗に分けることは、ユーザーが商品や価格を比較するのを難しくし、結果的に競争を減らしてしまい、価格の上昇と選択肢の減少につながる」とアマゾンは結論付けた。


フェイスブック「インスタグラムとWhatsAppは、買収によってさらに大きな成功を得た」

マーク・ザッカーバーグ

フェイスブックのCEO、マーク・ザッカーバーグ。

Chip Somodevilla/Getty Images

2012年と2014年にインスタグラム(Instagram)とWhatsAppを買収したことを例に挙げて、深刻な脅威になる前に新興企業を買収して競争を阻害しているとする小委員会の主張に、フェイスブックは反論している。

フェイスブックの広報担当者はCNBCに対し、「買収はあらゆる業界に存在するものであり、我々が技術革新を通じてより多くの価値を消費者に提供する方法の一つに過ぎない。インスタグラムとWhatsAppは、フェイスブックが数十億ドルを投資したことで成功を収めたのだ」と述べた。

「両社の買収の時点では強力な競争環境が存在し、現在も存在している。当時、規制当局はそれぞれの案件を徹底的に調査したが、買収を禁止する理由は見当たらなかったはずだ」


アップル「独占と呼べるほどのシェアを持っていない」

アップルのCEO、ティム・クック。

アップルのCEO、ティム・クック。

Karl Mondon/Digital First Media/The Mercury News via Getty Images

アップルの広報担当者はCNBCに対し、「我々は、調査は合理的かつ適切だと述べてきたが、アップルに関するこの報告書の結論には強く反対する」とし、「当社は事業を展開しているどの分野においても、市場を支配できるだけのシェアを持っていない」と述べた。

同社はブルームバーグ(Bloomberg)へのコメントで、アプリ内購入で開発者に課す30%の手数料についての記述に特に懸念を表明した。この手数料率は、音楽ストリーミングサービスのスポティファイ(Spotify)や人気のオンラインゲーム「フォートナイト(Fortnite)」のEpic Gamesといった開発者との激しい争いにつながった。

「アップルの手数料率は、他のアプリストアでも主流となっているものだ」とアップルは述べた。

アプリストアという点では、アップルのライバルはグーグル(Google)のPlayストアだけで、これはアンドロイド(Android)端末にプリインストールされている。Playストアもアプリ内購入に最大30%の手数料を課しているが、AndroidスマホのユーザーはPlayストア以外のサイトからもアプリをダウンロードできる。一方、iPhoneやiPadなどのアップル製デバイスは、公式のApp Storeからしかアプリをダウンロードできないため、より閉鎖的なエコシステムとなっている。


グーグル「反トラスト法の目的は消費者を守ることであって、競合他社を助けることではない」

グーグルのCEO、サンダー・ピチャイ

グーグルのCEO、サンダー・ピチャイ。

Yves Herman/Reuters

グーグルは「我々は、動きが速く競争の激しい業界で公正に競争している。検索などのサービス分野についてのライバル企業からの時代遅れで不正確な主張を取り入れたこの報告書には同意しない」とブログで述べた

「アメリカ国民は、議会がグーグルの製品を破壊したり、毎日利用している無料サービスに損害を与えたりしないことを望んでいる。反トラスト法の目的は消費者を守ることであって、商業的なライバルを助けることではない。今回の報告書で取り上げられている勧告の多くは、会社分割であろうと、(通信品位法)第230条の改正であろうと、消費者とアメリカのテクノロジーにおけるリーダーシップ、アメリカ経済に対して害をもたらすものであり、利益をもたらすものではない」

1996年に制定された通信品位法の第230条は、インターネット企業に自社のプラットフォームの規制するために広範な権限を与え、同時に、法律に違反するユーザー生成コンテンツに対する責任から企業を保護している。

今回の公式報告書では触れられていないが、共和党の小委員会メンバーがインターネット・プラットフォームが保守派を意図的に検閲していると主張する別の報告書を作成した。彼らの報告書は第230条を「再考」することを提案している。このプロセスは司法省が9月にインターネット企業に与えられた保護を弱める法案を議会に提出したことで、すでに進行中だ。

「我々は、より明確な法律が消費者を助けであろう分野に注目している議会を支持しているし、そのいくつかは今回の報告書でも言及されている。グーグルは長い間、データのポータビリティとオープンなモバイルプラットフォームの重要性を支持してきた。我々は明日、ソフトウェアの相互運用性という重要な原則をめぐって最高裁で議論します。そして議会には、包括的なプライバシー法の制定を求める。我々は今後、これらの問題について議会と協力することを楽しみにしている」とグーグルは述べている。

[原文:Amazon, Apple, Google, and Facebook all came out swinging against the House antitrust report that compared them to oil barons and railroad tycoons

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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