2020年国慶節の大型連休を迎えた中国・北京市内の様子。この20年間、最も大きな変化を経験した国のひとつだ。
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世界銀行が2020年版のアニュアルレポート(年次報告書)を公表した。東アジア・大洋州エリアのデータからは、この20年間で大きく様変わりした様子が見てとれた。主なデータを抜粋して紹介する。
東アジア・大洋州エリア……世界銀行は貧困削減と持続的成長の実現を掲げ、途上国政府への支援を行っており、その対象国のみが定点観測データに含まれる。東アジア・大洋州エリアに含まれる国は、カンボジア、中国、インドネシア、韓国、ラオス、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、大洋州(信託統治)諸島、パプアニューギニア、フィリピン、シンガポール、タイ、東チモール、ベトナム。
まず、最近の東アジア・大洋州エリアの変化について言えるのは、新型コロナウイルスの感染拡大以前からGDP(国内総生産)成長率に鈍化傾向が見られたことだ。
2018年のエリア全体のGDP成長率は6.3%、2019年は5.9%だった。中国の成長率は同時期に6.6%から6.1%へ、それ以外の国々では5.2%から4.7%へと減速した。
2020年、東アジア・大洋州エリアの成長率は新型コロナの影響で0.5%と、急ブレーキが予想されている(世界銀行による6月時点の予測値)。
2000年以降に様変わりした東アジア・大洋州
次に、2000年から2020年(2013〜19年の最新データに基づく)までの20年間の変化を見てみよう。
世界銀行のアニュアルレポート(年次報告書)2020年版より、東アジア・大洋州のスナップショット(画像をクリックすると拡大表示されます)。
出典:The World Bank 'Annual Report 2020'
エリアの「総人口」は18億1600万人から20億9400万人へと2億7800万人増えた。ただし、「人口増加率」は鈍化しており、2000年の1.0%から2020年には0.6%まで落ち込んでいる。
「女性の平均寿命」は2000年の72歳から2020年の78歳に、「男性の平均寿命」も68歳から73歳へと延びている。また、出生数1000人あたりの「5歳未満児死亡率」は42%から16%へと大幅に下がった。
「1人あたりGDP成長率」は2000年に6.4%、2010年に9.0%へと加速していたが、2020年には5.2%と大幅に減速した。東アジア・大洋州エリア全体のGDP成長率が近年落ち込んでいることは、冒頭で触れた通りだ。
1日1.9ドル(約200円)未満で暮らす「極度の貧困層」の数は、2000年に5億5000万人(エリア人口の29.7%)だったが、2010年までに2億1900万人へと半減、さらに2020年には2800万人(同1.3%)まで減った。
ただし、1日5.5ドル(約580円)未満で暮らす「貧困層」は、東アジア・大洋州エリア全体でいまだに4億9600万人いる(アニュアルレポート内の別データ)。極度の貧困こそ2000年比で95%ポイント減ったものの、そのほぼ全数が貧困からは脱却できていないと考えられる。
こうした各国の経済成長に伴い、東アジア・大洋州エリア全体の「二酸化炭素(CO2)排出量」は、2020年の41億8900万トンから2020年には114億2100万トンへと3倍近くに増えた。
コロナ禍でソーシャルディスタンシングなどの感染防止策が敷かれた韓国・明洞(ミョンドン)ショッピング街。
REUTERS/Kim Hong-Ji
生活インフラ整備の進捗にも触れておきたい。
総人口に対する「電気へのアクセス率」は2000年の92%から2020年の98%に上昇。「個人のインターネット普及率」は2%から51%へと大幅な伸びを示した。
また、「基本的な衛生設備の普及率」は56%から82%に、「基本的な飲料水サービスの普及率」も80%から92%へと向上した。
このように、テクノロジーの発展を背景とした世界経済の発展や、世界銀行の継続的な開発途上国支援により、東アジア・大洋州エリアの生活環境と経済状況は20年間で大きく改善したといえる。
残念なことがあるとすれば、「女性就業率の男性就業率に対する比率」について、2000年に82%、2020年に78%と、大きな変化が見られないことだ。
(文:川村力)