欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁。
Reuters
- 欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁は10月12日、ECBはデジタルユーロの創設を「非常に真剣に」検討していると述べた。
- 国際通貨基金(IMF)のバーチャルイベントでラガルド総裁は、パンデミックが我々の働き方、取り引きの仕方、支払い方などに、大きな構造的変化を引き起こしていると述べた。
- また、パンデミックの影響で、2020年2月から6月にかけて電子商取引の取引量が20%増加したという。
- しかし、彼女は、デジタルユーロは現金の補完に過ぎず、それに取って代わるものではないと述べている。
ヨーロッパは仮想通貨の創設に一歩近づいた。
国際通貨基金(IMF)が主催するバーチャル会議で、欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁は「ECBはデジタルユーロを非常に真剣に検討している」と述べた。
ラガルド総裁は、COVID-19の大流行により、「我々の働き方、取り引きの仕方、支払い方」など、大きな構造的な変化がもたらされたとしている。特にドイツやイタリアのように「現金が王様」だった国では、その結果、デジタル決済が大幅に増加したという。
「(ドイツとイタリアでは)人々は現金を持ち歩く(ことに慣れ親しんでいる)」と彼女は言った。
ラガルド総裁によると、パンデミックの影響で、電子商取引は、最初にヨーロッパが襲われた2月から、最厳しいロックダウン規制の多くが緩和された6月までの間に、取引量と売上高がほぼ20%上昇したという。
「デジタル決済への信頼感が高まり、大きな変化が起きている」と彼女は付け加えた。
10月初めに発表された調査報告書でECBは、デジタルユーロが、急速に変化するデジタル世界で市民がすばやくお金にアクセスする助けになるだろうと述べている。
欧州中央銀行のファビオ・パネッタ(Fabio Panetta)専務理事は、この報告書に関連したブログ投稿で、「我々の発展のためにデジタルユーロが必要になれば、すぐに発行できるよう準備ができていなければならない」と述べた。
「このことは、我々がすでに準備する必要に迫られていることを意味している」
以前、ユーロシステム(ECBとユーロを採用している各国の中央銀行)は、2021年半ばまでに提案を進めるかどうかを決定すると述べていた。ユーロシステムは、潜在的なサイバーリスク、プライバシーの権利、中央銀行がデジタル通貨を導入することがユーザーの機密情報を取得することを意味するかどうかといった大きな懸念を考慮しなければならない。また、設計の影響や発行の根拠など、法的な事項も調査する必要がある。
ラガルド総裁は、デジタルユーロは現金に取って代わるものではなく、単に現金を補うものだと述べている。
「デジタルユーロは決して現金の代わりにはならないだろう。それは非常に優れた補完であり、物理的に行われていたことの非常に有効な部分的代替手段だといえる」
ビットコイン(Bitcoin)やイーサリウム(Ethereum)といった暗号通貨は、トレーダーやオンラインで買い物をする人々の間で人気が高まっている。CoinMarketCap.comのデータによると、暗号通貨市場は3年前には約1750億ドルだったものが、現在では約3600億ドルにまで成長しているという。
そして、多くの中央銀行がデジタル決済の試行を開始している。ガーディアンによると、中国人民銀行は今年初め、4つの主要都市でデジタル人民元の試験運用を開始した。スウェーデン国立銀行は、数カ月前からクローナの電子版をテストしている。
しかし、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)、日本銀行、イングランド銀行などの他の主要中央銀行は、中央銀行が支援するデジタル通貨の導入により慎重なアプローチを取っている。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)