iPhone 12 Proシリーズは写真左からパシフィックブルー、ゴールド、グラファイト、シルバーの4色展開。
出典:アップル
1アップルは10月13日(現地時間)、新型スマートフォン「iPhone 12」シリーズを発表した。
iPhone 12シリーズは小型のmini、ノーマルのiPhone 12、そしてiPhone 12 Pro、Pro Maxの4種類をラインナップする。全モデルが5G対応だ。
とくにProとPro Maxについては、「画面サイズが違うだけでほぼ同機能」と言われている12/12 miniとは異なり、背面カメラのレンズ、センサーなどの重要な構成が異なる。価格や発売時期も違う。
一言で言えば、「Proのなかでも大きく差別化する」というコンセプトで、従来よりもさらにProらしさを追求したシリーズになっている。
iPhone 12 Proの価格は999ドル、日本国内では10万6800円(税別)から。
出典:アップル
iPhone 12 Pro
- 10月16日予約開始、10月23日発売
- 128GB……10万6800円
- 256GB……11万7800円
- 512GB……13万9800円
iPhone 12 Pro Max
- 11月6日予約開始、11月13日発売
- 128GB……11万7800円
- 256GB……12万8800円
- 512GB……15万800円
※いずれも直販価格、税別。
カメラ重視のProシリーズ、しかもProとPro Maxでも違いアリ
iPhone 12 Pro Maxのディスプレイ性能。
出典:アップル
Pro、Pro Maxの最大の違いは「ディスプレイサイズと背面カメラ」だ。
ディスプレイはProが6.1インチ、6.7インチのSuper Retina XDRディスプレイ(有機EL)。解像度はProが2532×1170ドット、Pro Maxが2778×1284ドットと違いはあるが、画面密度にするとProが460ppi、Pro Maxが458ppiとほぼ違いはない。
HDR時の最大輝度が1200ニト、コントラスト比は200万対1と非常に明るくメリハリのあるディスプレイだが、スペックシート上の性能的には、解像度、標準最大輝度の違いを除いて「12シリーズ全体が有機EL採用」で共通仕様となっている。
iPhone 12 Proの背面カメラはトリプルレンズ+LiDARセンサーの構成。
出典:アップル
Proシリーズが“Pro”である理由は、前述の通り“背面カメラ”にある。12/12 miniがデュアルレンズ構成なのに対し、Pro/Pro Maxはトリプルレンズ構成。しかも今回から、レンズの仕様はPro/Pro Maxでも違いを持たせている。以下のような違いがある。
広角(標準)レンズ
- Pro……焦点距離26mm、1.4µmピクセル、F値1.6、光学手ブレ補正
- Pro Max……焦点距離26mm、1.7µmピクセル、F値1.6、センサーシフト光学手ブレ補正
超広角レンズ
- Pro/Pro Max……焦点距離13mm、視野角120度、F値2.4
望遠レンズ
- Pro……焦点距離52mm、F値2、光学手ブレ補正
- Pro Max……焦点距離65mm、F値2.2、光学手ブレ補正
3つの異なる画角で表現の幅が広がる。
出典:アップル
これによって撮影性能もやや異なってくる。例えば、望遠レンズの差異によって、静止画撮影時のデジタルズームの最大倍率はProが10倍、Pro Maxが12倍。また、広角レンズのセンサーサイズの違いなどによって、捉えられる光量が多いPro Maxの方が暗所で有利といえる。
こういった細かな違いは、そのままコストに跳ね返ってくるため、メーカーからすると、普通は「ProとPro Maxで共通」にしたいところ。それをあえて変えてきたのは、アップルが「Pro Maxはただ画面が大きいiPhoneではない」と考えているからだ。
ARに加え暗所撮影に使えるLiDARセンサーも「Proだけ」
新型iPad Proに搭載されたLiDARセンサーが、iPhoneにも搭載。
出典:アップル
また、12/12 miniとPro/Pro Maxのハードウェア的な大きな差としては、端末の周囲の環境を認識する「LiDARセンサー」の有無が挙げられる。
アップルはLiDARセンサーを3月に発売した新型iPad Proで初めて搭載。空間をより精密に把握できるため、おもにAR機能をリッチにするために活用されている。
iPhone 12 Pro/Pro MaxはiPhoneシリーズで初めてLiDARを搭載することになった。ポイントは、iPad Proとは異なり、その活用範囲がARだけではなく、日常的に使うカメラの高性能化にも使われているということだ。
LiDARセンサーによって、暗所でのフォーカス速度は最大6倍も速くなる。
出典:アップル
具体的には、暗所撮影時のオートフォーカスがiPhone 11比で最大6倍速くなる。
また、機能的にも夜間撮影「ナイトモード」時のポートレート撮影が可能になるため、光源が乏しい場所でも人物を捕捉して、背景をキレイにぼかすことができる。
なお、当然ではあるが背景ぼかしはPro/Pro Maxが搭載するチップセット「A14 Bionic」で強化されたニューラルエンジンの演算によるものだ。
こだわりのレンズとセンサー、LiDARによる正確な環境認識、高性能チップによる画像処理という各部が連携した性能設計は、アップルが得意とする垂直統合的なアプローチといえる。
許容できる予算や重量も考慮に入れて選びたい
iPhone 12 Proシリーズの性能概要。
出典:アップル
より高い撮影性能を求めるならPro Maxを選ぶべきだが、Pro Maxは本体サイズも大きく、重量も226グラム(Proは187グラム)とスマホとしてはかなり重い部類になる。
また、そのほかのIP68相当の防水性能やApple Pay、Face ID(顔認証)、新アクセサリー規格のMagSafeなどは12/12 Miniと同じだ。
価格差も最小構成で最大で4万3000円ほど異なってくるため、今後実機レビューなどでその実力が明らかになってくる過程で、どこまでカメラ性能を追い求めるか判断する必要がありそうだ。
なお、iPhone 12シリーズは全機種で5Gに対応しており、日本ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3キャリアが取り扱うことが明らかになっている。
(文・小林優多郎)