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日本上陸した“スニーカー版メルカリ”は企業価値1000億円に…コロナで過熱する「限定スニーカー転売」狂騒曲

スニーカーのコレクション

ここ数年ほどで高まるスニーカー熱。なぜミレニアルはスニーカーにハマるのか?

提供:取材者(カズヒロさん)

ここ数年で一気に拡大した、スニーカー売買の熱が止まらない。

特に最近はスニーカーの金融資産としての可能性に着目する人が増え、その成長はさらに加速。コロナ禍のECシフトの追い風も受け、米国の投資機関・コーウェンエクイティリサーチ社による2020年7月の発表では、全世界のスニーカー転売市場は前年比で20%増の20億ドル(約2100億円)を超えたともいわれる

なぜ今、スニーカーがここまで人気を集めるのか? スニーカーファン、C2Cサービス事業者たちに「限定スニーカー」というマーケットの魅力を聞いた。

反逆のストーリーで武装する

スニーカーのコレクション

ユウキさんのお気に入りスニーカー。左が「おじさんが履いているような靴(ダッド・シューズ)」として人気を集めた「BALENCIAGA TRIPLE S(バレンシアガ トリプルエス)」、右がカニエ・ウェストが手がけた「adidas YEEZY BOOST 700」。

提供:取材者(ユウキさん)

「ぼくは元々、根暗で内気な陰キャなんです。だからこそ、何かしらの反逆性があるアイテムを身につけて武装したい。例えば(お騒がせセレブとして知られる)カニエ・ウェストのスニーカーを履いて『イヤなことはイヤって言うぞ』と、暗に示す感じです」

そう語るのは、音楽系のスタートアップで働くユウキさん(28歳、仮名)。スニーカー愛好歴はこの5年ほど。

きっかけは、ゾゾタウン(現在のZOZO)で、リーボックの人気モデル「ポンプフューリー」をたまたま購入したことだ。「価格は5000円くらいだったかな。意外と履きやすかった」。

ファッション好きだったこともあり、そこからスニーカーの魅力に取り憑かれた。5年間で購入したスニーカーは60足から70足ほど。特にお気に入りは「ダサいおじさんが履いていそうなシューズ(ダッド・シューズ)」として逆に人気を博した「BALENCIAGA TRIPLE S(バレンシアガ トリプルエス)」。15万円もの大金をはたいて手に入れた。

ボロボロに履き潰したエアマックス90

お気に入りのスニーカー

カズヒロさんが持参してくれた「思い出の一足」。右が初めて買ったスニーカー「エアマックストライアックス96」復刻版、左が「エアマックス90」復刻版。どちらも学生時代「ボロボロになるまで履いていた」。

撮影:西山里緒

20代のスニーカーファンも増えている一方で、ブームを熱く下支えするのが「エアマックス世代」と呼ばれる、1990年代に青春を過ごした世代だ。

「中学生の時にハイテクスニーカーブームがあって、中3になった時に親がエアマックストライアックス96(ナイキ)を買ってくれたんです。それをボロボロになるまで履き潰して、そこからエアマックス90(ナイキ)も買って。手に入ったお金は全部スニーカーに使ってました」

と語るITベンチャーで事業開発を担うカズヒロさん(38歳、仮名)は、今スニーカーにハマる理由は「あの頃の夢を叶えたい」からだと、熱っぽく話す。

「当時はエアマックスが1万5000円くらいで、中学生だと買えるか買えないか。でも欲しくて欲しくて、発売日にはとりあえず並んでました」

スニーカー爆買い

ゴウさんとカズヒロさんは、一緒にスニーカーの爆買いをすることもあるという。

提供:取材者(ゴウさん)

カズヒロさんの隣でうなずくのは、元同僚であり同じくITベンチャーでマーケターとして働くゴウさん(40歳、仮名)。ゴウさんは、町田出身だったことがスニーカー愛の原点だという。

「今でこそ町田って『東京か、神奈川か』みたいなネタになってますけど、実は1990年代はファッションの最先端の街だったんですよ。古着屋もスニーカー屋もたくさんあって、僕のスニーカー熱はそこで磨かれました」

二人とも、2015年頃から再度、スニーカーにのめり込みはじめたという。

「感覚バグって」150万円突っ込む

山のように買い集めたスニーカー

趣味のお金は、スニーカーに全振りしているというゴウさん。数年で150万円ほどを出費した。

提供:取材者(ゴウさん)

スニーカー熱は、一時流通だけでなく二次流通も巻き込んで膨らんでいる。アメリカの投資機関・コーウェンエクイティリサーチ社の2020年7月の発表によると、世界のスニーカー転売市場は前年比20%以上の成長を遂げ、20億ドル(約2100億円)を超えたという。その成長を支えるのが、販売元のオンラインシフトだ。

先述のゴウさんは、毎年数十万円をスニーカーにつぎ込み、ここ5年でトータルの出費は150万円を超えるという。

感覚がバグり出したのは、20足を超えた辺りかな。『どうせ当たんないんだから』と抽選に全部応募するようになって、当たったらもちろん買う。最終的には『どうせ欲しかったんだから』と当たらなくても転売サイトで買うようになって……」

コロナ禍による外出自粛期間中にはスニーカー売買サイトを漁り、2週間で15万円以上使ってしまったと明かす。そのハマり具合は家族からも呆れられるほどだが、ゴウさんは意に介さない。

「僕はお酒もギャンブルもやらないし、他にこれといった趣味もない。スニーカーが全てなんです。(毎年数十万円をつぎ込んでいることは)妻は知らないと思いますね」

LINE

ゴウさんが妻から送られてきたというLINE。

提供:取材者(ゴウさん)

コロナ禍でスニーカーC2Cアプリは過去最高売り上げに

スニーカー

まるで株式市場のようにスニーカーが取引できるアプリ、StockX。

撮影:西山里緒

こうした動きに呼応するように、スニーカーのCtoC(個人間取引)サービスが躍進を続ける。

なかでも海外発で有名なのが、2019年に評価額が1000億円を超え、ユニコーン企業の仲間入りを果たした「StockX」だ。2020年6月には日本語版をリリースし、本格的に日本進出を果たした。同サービスは、2016年にアメリカ・デトロイト生まれ。株式市場と同じ仕組みでスニーカーやストリートウェアなどが取引できる。

2019年6月にはシリーズCラウンドで1億1000万ドル(約116億円)の資金を調達。投資家の中にはDJのスティーブ・アオキやラッパーのエミネムなど、アーティストやセレブも多く名を連ねている。コロナ禍でのEC需要の追い風を受けて、2020年5月と6月は取引額が過去最高を更新した。

日本発のサービスでは、同じ2018年にリリースした「日本版StockX」ともいえるスニーカー取引サービス「モノカブ」と、スニーカー情報ポータルサイトとして始まった「スニーカーダンク」が火花を散らす。

「月間相場」「年間相場」などが表示され「モノの株式市場」としての性質が打ち出されているモノカブに対して、スニーカーダンクはファンが気軽にコメントができたりとコミュニティーサイトとしての特徴が強く、スニーカー情報も豊富だ。スニーカーダンクは9月から三代目 J SOUL BROTHERSの山下健二郎さんとEXILEの関口メンディーさんを起用したテレビCMを放映し、“勝負”を仕掛ける。

レアもののスニーカーを手に入れたいというファン、転売で一儲けしようという人など、サービスを利用する人たちは多種多様だ。

「550万円のスニーカー」も転売は「仕方ない」

スニーカーダンク

人気モデルのリーク情報には、1万人以上の「アラート待ち」が並ぶことも(写真はスニーカーダンクのアプリより)。

撮影:西山里緒

なぜ、ここまでスニーカー2次流通市場が活況になるのか? その理由が「リーク」と「抽選」というカルチャーだ、と先述のユウキさんはいう。

リークとは、新モデルの公式発表前に関係者が“うっかり”インスタグラムに載せてしまったり、プライベートで履いているところをパパラッチがニュースにしたりすること。人気のモデルはこの時点で話題が沸騰するため、ファンたちは“情報戦争”に奔走することになる。

さらにほとんどの人気スニーカーは抽選制だ。オンライン販売の場合、時間きっかりにアクセスしなければ抽選に応募することすらできない。だからこそ、販売開始時間をリーク情報でキャッチしておくことが肝心なのだ。

「リークされたら販売開始の時間をチェックして、その10分前にアラームをかけておきます。以前それに失敗して、転売サイトで2倍の値段で買うことになったんで……」(ユウキさん)

リーク直後から大きな話題を生むスニーカーは、2次流通市場でも高騰する。StockXの発表では、取引されたスニーカーの最高値は約550万円(ナイキ ダンク ロー エスビー “パリ”)だという。

メルカリとの差別化は…コミュニティと“真贋鑑定”

ミニチュアスニーカー

スニーカー好きが高じて、ミニチュアスニーカー集めにも興じるように。

提供:取材者(ゴウさん)

今回話を聞いた3人は、「投資目的でスニーカーを買うことはない、あくまで好きだから」と言うが、転売市場の過熱には理解も示す。

「まあ、自分も欲しかったら転売サイトでも買いますし、それが市場の原理なので。ホンネを言えば、ちゃんと履いてくれる人に買ってほしいですけどね」(カズヒロさん)

ユウキさんも転売サイトは活用しているとした上で、投資商品としてではなく、スニーカーが与えてくれる本当の“価値”をわかった上で商品を買ってほしい、という。

「スニーカーは、ぶち上げてくれたり、テンション上げてくれるもの。ダサいものを『あえてカッコよく』したり、そこで価値転換が起こるのが魅力なんです」(ユウキさん)

スニーカーCtoCサービスに、将来性はあるのだろうか。

スニーカーダンクを運営するSODA社長、内山雄太氏は、「スニーカーに限らず、ストリートカルチャー好きな人に寄り添ったサービス展開という視点もあわせて考えると(CtoCアプリには)大きな可能性があると思う」と今後の規模拡大に自信を見せる。 また、女性ユーザーの拡大も顕著であり、取り込める潜在層はまだ大きいとも語る。

メルカリなどとのフリマアプリとの差別化についても「同じ趣味を持つ人たちのためのメディア・コミュニティをより拡大し、そこでしか得ることのできないクローズドな体験を提供していく可能性はある」とサービスの構想を説明する。

スニーカー二次流通の大きな問題は、フェイク品の流通だ。この点についても「専門サイトだからこそのスキルの高い鑑定士による真贋鑑定で、安心した取引を実現できている」と語った。

(文・西山里緒)

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