事業で成功を収めてきた経営者には、採用面接で見事な質問をする人が多い。つまらない質問や関係のない質問で時間を無駄にしたくないという習慣が身についているのだ。
このため、多くの場合彼らには「これは必ず聞いておきたい」という質問がある。それさえ聞けば、求職者について知りたいことが全部分かるような質問だ。頭をひねらないと解けないような難問を出して論理的思考力を見たり、ストーリーを語らせるような問いを投げかけてクリエイティブな答えを求めるなど、傾向はさまざまだ。
スタートアップの経営者は、求職者がクリエイティブな思考を持っているか、新たな視点をチームにもたらしてくれるかを見極めたいと思っているため、採用面接で独自の質問をする場合がよくある。
採用面接での質問の中には、ストレートに答えやすいものもあれば、求職者をわざと困らせる意図で聞くものもある。どんな面接でもほぼ毎回最後に聞く質問は、その経営者にとって非常に重要であることが分かる。
企業のトップたちが採用面接で求職者に聞く質問のうち、気に入っているものは何ですかという問いに答えてもらった。本稿ではその回答から20選を紹介する。
リチャード・ブランソン(ヴァージン・グループ創設者)
Paul Kane/Getty
ヴァージン・グループの創設者、リチャード・ブランソンは著書『ヴァージン・ウェイ』で、従来型の採用面接はあまり好きではないと述べている。
「履歴書がうまく書けているのに越したことはないが、応募書類に何が書いてあるかで採用する人物を決めるのなら、わざわざ無駄な時間をかけて面接する必要はないだろう」とブランソンは書いている。この考えに従って尋ねる質問はこうだ。
「履歴書に書けなかったことは何ですか?」
トニー・シェイ(ザッポス元CEO)
Ethan Miller/Getty
靴のネット通販ザッポスのコアバリューのひとつは「楽しさと少し風変わりなものを作り出す」ことだ、と前CEOのトニー・シェイは以前Business Insiderの取材に答えている。
このような独自の企業文化に合う人材を見つけるために、シェイはいつも、こんな質問を投げかけるという。
「あなたの変人度合いを10段階で評価してください」
数字はあまり重要ではなく、その質問にどう答えるかが重要なのだという。「答えが1だったら、ザッポスにとっては少し生真面目すぎるかなと思います。とはいえ、答えが10だったら、ちょっと変わり者すぎるかもしれないですね」
ザッポスではそれ以外にも「10段階で言うと、あなたはどのくらい幸運な人ですか」という質問もよくするという。この質問でも、数字はさほど重要ではない。
しかし1と答える人は、人生で不運に見舞われる理由が分かっていない(あるいは不運は人のせいだと考えることが多い)。そして10と答える人も、なぜ自分の人生に幸運が訪れるかが分かっていない(あるいはおそらく自分の能力に対する自信が欠けている)。
ミシェル・ペルーソ(IBM最高マーケティング責任者)
Rommel Demano / Stringer / Getty Images
IBMの現デジタルセールス担当常務兼CMO(最高マーケティング責任者)であり、元ギルトのCEOでもあるミシェル・ペルーソはよく、求職者にこんな質問を投げかける。
「あなたのことを知るいろいろな人たちに話を聞いてきました。フード宅配業者、前の会社の同僚、あなたを最も嫌う人、高校時代からの親友、実家の隣人、幼稚園の先生、かわいがってくれた高校の数学の先生、そして前の会社の上司です。さて、もしも彼らに『あなたを最もよく表す形容詞を3つ挙げてください』と聞いたら、どんな答えが返ってくると思いますか?」
この質問からは「得意なことは何ですか」という凡庸な質問よりもはるかに多くのことが分かる、とペルーソはニューヨーク・タイムズ紙に語っている。
求職者がこの質問に対し、3つとも良い意味の形容詞を挙げた場合は、「この仮想グループの中にはあなたのことをよく思っていない人もいるんですよ」と耳打ちするという。
ニュースサイト「Quartz」がペンシルベニア大学ウォートンスクール主催「ピープル・アナリティクス・カンファレンス」で発表した内容によると、ゼネラルモーターズCEOのメアリー・バーラも、就職面接の際にこんなよく似た質問をするという。
1. 同僚があなたのことを3つの形容詞で説明するとしたら何と言うと思う?
2. 上司があなたのことを3つの形容詞で説明するとしたら何と言うと思う?
3. 部下があなたのことを3つの形容詞で説明するとしたら何と言うと思う?
バーラによれば、この3つの形容詞はあまり違わない方がいいという。「だって、誠実な人を採用したければ、上司に対する態度と部下に対する態度が違う人は採りたくないでしょう。上司とうまくやっていくのと同じくらい、同僚や部下への接し方もうまい人を求めているからです。こうした一貫性のある人物の存在が、チームに力を与える鍵になります」
ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン
REUTERS/Kimberly White
グーグルの共同創業者、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは採用面接の際、戦略的な質問をすることで知られている。元グーグル幹部のティム・アームストロングはBusiness Insiderの取材に対し、こう語っている。
「この話をするのは初めてですが、私が初めて彼らの面接を受けた時、いくつか簡単な質問をされた後、『何を聞いたらいいのかよく分からないので……』と、こう聞かれました」
「あなたがもし私たちだったら、あなた自身にどんな質問をしますか?」
CNBCによると、この質問をされたのはアームストロングだけではないという。また、「時計の針は1日に何回重なりますか?」や「マンハッタンにガソリンスタンドがいくつかあるか予想してみてください?」など、有名な“頭の体操”的な質問もされるということだ。
ハンナ・パラモア(パラモア創業者)
パラモア提供
ナッシュビルに拠点を置くインタラクティブ広告の代理店「パラモア」の創設者ハンナ・パラモアはニューヨーク・タイムズの取材に対し、好きな質問の1つとしてこれを挙げている。
「初めてお給料をもらって仕事をしたのは何歳の時ですか?」
パラモアは「年齢に対して労働倫理と独立心がどのくらい根付いているかを見たいと思ってこの質問をしています」とBusiness Insiderに話している。「必要があって高校生や大学生の頃からアルバイトをしてきた人であれば、高いレベルの責任感を備えた人であることが伺えます。きつい仕事であればなおさらですね。現在の成功に至るまでにさまざまな紆余曲折を経てきた、というような人はとても好ましく思います」
ランディ・ガルッティ(シェイク・シャックCEO)
本人提供
シェイク・シャックのランディ・ガルッティCEOは、「求職者が面接前にきちんと会社のことを調べてきて、会社や自分が担うことになる役割についてよく理解しているか、そして本当にその仕事をやりたいと思っているのかを確かめたい」と語る。
また、「求職者は、過去1年がどれだけ良い年であったかを語るだけでなく、会社の状況を大局的に捉えて語れるだけの戦略的ビジョンを持っていなければなりません。そして、なぜこの会社で働きたいのか。それをしっかり語ることができなければいけません」とも言う。そんなガルッティのお気に入りの質問はこれだ。
「私たちが1年後ここに座り、あなたがこの仕事で12カ月間素晴らしい働きをしてくれたことをお祝いしているとしたら、私たちは一緒にどんなことを成し遂げたのだと思いますか?」
ピーター・ティール(ペイパル、パランティア共同創業者)
Fred Prouser/Reuters
ペイパル、パランティア、ファウンダーズ・ファンドの共同創業者であるピーター・ティールは、常に自分の考えを恐れずに語れる人を採用するようにしているという。
そのために、求職者や投資を求める企業に対し、彼はいつもこのような質問を投げかけている。
「たいがいの人が信じてくれないけれどこれは事実だ、ということがあれば教えてください」
2012年のフォーブスのインタビューで、ティールはこの質問が好きな理由を「思考の独創性を試すもので、同時に面接で難しい質問をされた時にどのくらい勇気をもって発言できるかを問うものでもあるから」と述べている。
ブラッド・ジェファーソン(アニモト共同創業者兼CEO)
Vicki Taufer
動画スライド制作サービス「アニモト」の共同創業者でCEOのブラッド・ジェファーソンは、面接の時にする質問のうち、気に入っているもの3つについて語っている。
なかでも、求職者がどんなモチベーションによって動くのかを問う次の質問が一番気に入っているという。
「朝、ベッドから起き上がるためのモチベーションになるものは何ですか?」
どんなことに情熱を持っているのか、どんなことがきっかけで行動を起こせるのかを知ることができるからだ。「彼らはどうすれば仕事のモチベーションを保つことができるのか、頭の中を覗いてみたいと思っているんです」
従業員のモチベーションのもとになるものが何なのか。それを真に理解することが重要だとジェファーソンは言う。「どんな仕事にも浮き沈みはつきものです。困難な時にも、いつも以上は無理にせよ、いつもと変わらずモチベーションを高く保って仕事に臨める人かを見極めたいですから」
また、「情熱を傾けられるものに対し、モチベーションを高めてくれる人と一緒に極めていけば、困難な時期にも仕事は本当に楽しいものになります」と述べている。
ラリー・エリソン(オラクル共同創業者)
Justin Sullivan/Getty Images
ダートマス大学のシドニー・フィンケルシュタイン経営学教授が著書『スーパーボス』で述べているように、オラクルの共同創業者であるラリー・エリソンは、卓越した才能があり非常に頭の切れる人材だけを採用することを重視しているという。そのため、エリソンの薫陶を受けた面接官は、このような質問をするようにと言われているという。
「あなたは知り合いの中で一番頭の良い人ですか?」
求職者が「はい」と答えれば、その人は採用になる。「いいえ」と答えると、面接官は「それは誰ですか?」と尋ね、その人を採用しようとするだろう、とBusiness Insiderは以前報じている。
フィンケルシュタイン教授によると、エリソンのようなスーパーボスは、自分の能力に十分自信を持っているので、自分より社員のほうが優秀なのではないかという心配はしていない。それどころか、自分より賢い人を採用したいと思っている。そのような社員は、より良いアイデアや問題の解決策を考えようと挑戦してくれるからだという。
イーロン・マスク(テスラCEO)
Justin Sullivan/Getty Images
『イーロン・マスク 未来を創る男』によると、イーロン・マスクは、求職者の知性を試すためにこんななぞなぞを尋ねるのが好きだという。
「あなたは今、地球の表面に立っています。南に1マイル(約1.6km)、西に1マイル、北に1マイル歩きます。すると最初に出発した地点に戻りました。今あなたがいる場所はどこですか?」
答えは複数あり、その1つが北極だ。またThe Laddersが報じたところによると、マスクは次のような質問もしているという。
「あなたの人生のストーリーを聞かせてください。そのストーリーの中でどのような決断を下してきたか、なぜその決断を下したのか。そして、これまでに直面してきた最も困難な問題にはどんなものがあったかと、それらをどのように解決したのかを教えてください」
ジェフ・ズウェリング(ZipRecruiter COO)
Convertro提供
求人検索エンジン「ZipRecruiter」のCOOジェフ・ズウェリングは、求職者がどんな人物であるかをよく知るために、面接で少し厄介な質問をすることがあるという。
例えば、面接の中盤でよく、こんな数学のひっかけ問題を出す。
「ハンマーと釘を合わせて買うと1ドル10セントです。ハンマーの値段の方が釘より1ドル高いです。さて、釘はいくらでしょう?」
「よく考えもせずに10セントです、と答える人もいますが、これは間違いです」とBusiness Insiderに語る。
「答えは5セントなのですが、きっちり正解を出す必要はありません。ただ、少なくともそこに至るまでの思考プロセスを見たいのです。数学が得意な人ばかりではないと思いますが、答えが10セントだとしたらあまりにも簡単ではないか、もしそんなに簡単な答えならわざわざそんな問題を出すだろうか、ということに気づいてほしいですね」
カレン・デイビス(ハズブロ 元シニア・バイスプレジデント)
ハズブロ提供
玩具・ゲームの大手メーカー、ハズブロの慈善事業部門の元シニア・バイスプレジデントであるカレン・デイビスは以前、Business Insiderに対して「私は仕事をするうえで恩返しを大切にしている」と語っている。このため「情熱を持ち、目的意識の高い人物を探している」という。
デイビスは次のような質問をすることによって、求職者の人となりや、本当に大切にしていることが何であるかが分かるという。
「好きな名言は何ですか?」
この質問に正解はないが、何か答えてくれる求職者を求めているという。
「世界の偉大なリーダーたちについて考えてみてください。一番記憶に残っているのは、身を挺して変化を起こそうとしてきた人たちではないでしょうか」とデイビスは言う。
これから採用される人たちには、そんなリーダーたちのような道を歩んでもらいたいと考えているという。「インスピレーションの泉を探し続けてきたような人を採用したいと思っています」
デイビスは現在、North Star Impact GroupのCEOを務めている。
ジャック・ドーシー(ツイッター創業者)
Getty
2016年のゴールドマン・サックスのイベントで、ツイッター創業者のジャック・ドーシーは少人数の観客に向けてスピーチを行った。
ツイッターで働きたければ会社の目的を深く理解していることが重要だ、とドーシーは言う。仕事に対して情熱を持っていることを示すことが重要だと。そんなドーシーが面接で尋ねるのはこの質問だ。
「あなたは今なぜここにいるのですか?」
「情熱と目的意識をはっきり持っている人であれば、われわれと共に働き、素晴らしい仕事を一緒に成し遂げることができます」とドーシーは説明する。
スチュワート・バターフィールド(Flickr、Slack創業者)
Getty
Slackの共同創業者であるスチュワート・バターフィールドは、幼少期から先生や親に聞かれて答えてきたのと同じこの質問を求職者に尋ねるのを好むという。
「将来どんな人になりたいですか?」
「成長したいと思っている分野、学びたいと思っていること、これまで叶えるチャンスがなかったと感じているが叶えたいと思っていることについて答えてくれるのが良い回答です」とバターフィールドはニューヨーク・タイムズに語っている。「ですからこの質問に対してあまりにも答えが短いのは、それだけで悪い回答ということになります」
ブライアン・チェスキー(Airbnb CEO)
Mike Segar/Reuters
「さて、あなたのストーリーを聞かせてもらいましょうか」
この質問に絶対的な信頼を置いている幹部も少なくなく、求職者に「あなたの人生のストーリーを話してください」と常に聞く傾向があるという。
フィン・パートナーズの執行役員、リチャード・ファネスはLinkedInの投稿で次のように述べている。
「面接でこの質問をされた求職者にとっては何でもないことのように聞こえるかもしれないが、自分や会社を売り込まなくてはならない今日の世界では、この質問から物語が始まる。そしてこの質問は、製品であれ人であれ、ブランドを売るためのストーリーを語る能力や、ブランドが売れる空気を作り上げる能力を見極める質問でもある」
自分のスキルをビジネスに生かすための幅広い思考を持っていることを示す、クリエイティブな答えを求めているのだとファネスは語っている。
ブライアン・チェスキーはこの質問に時間制限を設けている。
チェスキーが2014年にニューヨーク・タイムズに語ったところによれば、普段は求職者に、自分の人生を3分以内にまとめて語ってください、と質問すると述べている。The Museの記事はこの質問方式を究極の「エレベーターピッチ」だとしている。
チェスキーはタイムズのインタビューに対し、「求職者の人格形成において、『人としての自分』に影響を与えた決断や経験はどんなものだったのかを知りたい」と説明している。
ジェフ・ワイナー(LinkedIn CEO)
Stephen Lam/Getty Images
2019年、LinkedInの元CEOであり現在エグゼクティブ・チェアマンを務めるジェフ・ウェイナーは、CNBCに対して次の質問がいかに貴重なものであるかを語っている。
「あなたにとって夢の仕事とは何ですか?」
「最終的に自分が望むことが何なのかが分かれば、それを実現できる可能性ははるかに高くなります」とワイナーは語っている。
この質問に対して、夢の仕事はいま応募しているこの仕事だと答える求職者もいる。ワイナーはこの答えは本心からのものではないことが多いと指摘し、警戒するという。
なおワイナーといえば、求職者に「これまでのキャリアを振り返って、何を成し遂げたと言えますか?」という質問をすることもよく知られている。
ドリュー・ヒューストン(Dropbox創業者)
Drew Angerer / Getty
Dropbox創業者で33歳の億万長者、ドリュー・ヒューストンは、面接でいつも聞くお気に入りの質問が5つあるとニューヨーク・タイムズに語っている。
1. あなたの仕事を世界で一番うまくできるのは誰ですか?
2. 影響を受けた人は誰ですか?
3. 去年1年間で学んだことは何ですか?
4. 10年前に戻れるとしたら、当時の自分に何とアドバイスしますか?
5. 今までに得た最も貴重な教訓は何ですか?
これらの質問は、求職者が常に熱意を持って向上しようとしているかどうかを見極めるのに役立つ、とヒューストンは説明している。
スーザン・ウォシッキー(YouTube CEO)
Getty
YouTubeのCEOスーザン・ウォシッキーは以前、面接でよくこんな質問をするとニューヨーク・タイムズで明かしている。
「あなたならこの商品をどのように改善しますか?」
YouTubeがこれまでにリリースしてきた特定の製品や、求職者が使っていることが分かっているその他の同社の製品について、「どのようにしてこの商品を改善しますか?」と尋ねるという。
ダラ・コスロシャヒ(Uber CEO)
Carlo Allegri/Reuters
エコノミック・タイムズが報じるところによれば、Uberのダラ・コスロシャヒCEOは面接で旅に関するこんな質問をしている。
1. これまでで一番の旅はどんなものですか?
2. 旅行中に遭遇したハプニングで、一番あり得ないと思ったことは何ですか? あなたはそのハプニングにどう対処しましたか?
3. 旅の荷物をパッキングする時、欠かせないアイテムは何ですか? または、何かパッキングの秘訣はありますか?
アート・パパス(Bullhorn創業者兼CEO)
Facebook/Bullhorn Inc.
Bullhornの創設者兼CEO、アート・パパスはある記事の中で「この質問に対する正直な答えを得るには辛抱強さが必要だ」と述べている。その質問とはこれだ。
「やりたくないことは何ですか?」
他の質問と同じように、この質問からはいろいろなことが分かるという。新たに人と出会うのが苦手だという営業職志望の求職者や、チェックの仕事が嫌いだという経理職志望の求職者もいた、とパパスはインタビューで明かしている。