2018年3月に上場を果たしたドロップボックス、中央左に共同創業者のドリュー・ハウストン最高経営責任者(CEO)。
REUTERS/Lucas Jackson
Twitter(ツイッター)やShopify(ショッピファイ)に続き、Dropbox(ドロップボックス)も「永久リモートワーク」を導入する考えを明らかにした。
ただし、リモートワーク一本槍の働き方とは異なる模様だ。Dropboxが10月13日に更新した同社ブログには、こんなことが書かれている(一部抜粋)。
僕らは世界のみんながどこでも働けるようにソフトウェアを開発しているのに、当の僕らは毎日同じオフィスに通勤している。
事実上、あらゆる仕事はデジタル化して、チーム全員がひとつの場所に集まることは必ずしも大事なことではなくなっている。
僕らの社内調査でも、自宅でも生産性を十分維持できると答えた社員が約9割。ほとんどの社員が、平日5日間すべてオフィスに出社する必要を感じないと答えている。実際、在宅勤務を始めてからユーザーに迷惑はかけていないし、新製品や新機能もちゃんとリリースできている。
ただ、何もかも完璧というわけじゃない。立て続けのビデオ会議、しょっちゅう届く(チャットやメッセンジャーの)通知、同僚と会えない孤立感……在宅勤務に打ちのめされることも多い。
外部との共同調査によれば、対面のやり取りが失われることで企業文化が揺らいだり、意思疎通に齟齬が生まれるリスクが高まったり、新規のプロジェクトを複数のパートナーと一緒に立ち上げるのが難しくなったり、オフィスがないことのデメリットも多い。
「スマートな働き方をデザインする」を標榜する企業として、Dropboxは自らも働き方をスマート化するという。
ngkaki / iStock Editorial / Getty Images Plus
そんなふうに問題もたくさんあるけれど、僕らの社内調査の結果は、やはりリモートワークで得られることのほうが失われることより大きいと言っている。
新しい現実を受け入れようと、多くの企業が「完全リモートワーク」や(出社するかしないかを従業員の判断に委ねるなどの)「ハイブリッドなアプローチ」の導入を発表している。
でも、それらのシナリオが本当にベストな将来なのかというと、どうだろう。いずれもリモートワークが抱える根本的な限界と向き合っていない。
例えば、ハイブリッドのほうは、従業員ごとに異なる働き方が長期固定化されることで、一体感を高める障害となったり、パフォーマンスやキャリアパスの不平等が生まれたりする可能性がある。そうした問題の解決なしに、成功できるとは到底思えない。
従来通り「スマートな働き方をデザインする」というミッションを生かし、どこであれそれぞれが必要な場所で働くことを容易にするプロダクトを世に送り出すため、僕らは新たな働き方のオプションを用意した。
僕らが企業ポリシーとして掲げる目標は、「企業ミッションを遵守する」「従業員に自由とフレキシビリティ(柔軟性)を保障する」「人同士のつながりと企業文化を大事にする」「企業としての長期的な健全性を維持する」「学ぶマインドセットを持ち続ける」の5つ。
僕らが今日から導入する新たな働き方は、このすべての目標を達成するのに資すると考えている。
こうした発想のもとに、Dropboxは「バーチャル・ファースト(Virtual First)」企業になると宣言。すべての従業員は今後リモートワークを基本とする。同時に、安全性が確認できた段階で、対面のコラボレーションやチームミーティングの場として「ドロップボックス・スタジオ(Dropbox Studios)」を開設する。
当初は一部の既存オフィス(サンフランシスコ、シアトル、オースティン、ダブリン)内にスタジオを置き、必要に応じて各地のフレックスオフィスなどを活用していく。ただし、スタジオはコラボレーションやコミュニティづくりの場として使われ、従業員が個々の業務を片づける用途での利用は禁じるという。
また、Dropboxは今後「ノンリニア(非線形)勤務」を推奨する。
さまざまな場所で働くスタイルがより広がっていくことを考慮し、あらかじめ複数のタイムゾーン(標準時間帯)にまたがる「コアコラボレーションアワー(Core Collaboration Hour)」を設定、各従業員が個別に遂行する業務はそのコラボレーション優先の時間帯を避けてスケジュール設定するよう求める。
個々の仕事に集中する時間とコラボレーションの時間のバランスをとるのが目的だが、いずれにしても、何時から何時までどのくらいの時間働いたかではなく、仕事のインパクトと成果が優先されるという。
(文:川村力)