東京・汐留の電通本社。海外事業ネットワークを束ねる電通インターナショナルはニューヨークのオフィス整備計画を見直す動きを見せている。
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- 電通がマンハッタン西部にあるオフィスの転貸先を探している。2019年に賃借契約を結んだばかりの豪奢な物件だ。
- 大規模オフィスの解約や縮小など、大企業が直近の不動産契約の見直しを進める一連の流れに沿うものだ。
- パンデミックによる経済停滞に苦しむテナント企業の間で、今後のオフィスのあり方を見直す動きが広がっている。
事情に詳しい不動産会社の経営幹部の話によると、電通インターナショナル(電通イージス・ネットワークから2020年9月に社名変更)が昨年ニューヨーク・マンハッタン西部に借りたばかりの大規模オフィスを手放そうとしている模様だ。
電通は2019年、モルガンポストオフィス・ノースビルディングに32万平方フィートの物件を押さえ、2023年までにマンハッタン地区内に点在するオフィス5カ所を統合する計画だった。現在は、サブリース(転貸)先を探している。
オフィス全体を手放すつもりなのか、電通インターナショナルの広報担当は明言していない。
しかし、同社の代理人を務める商業用不動産サービス大手CBREの広報によれば、マンハッタンのオフィス統合計画はストップしており、現時点で言えるのは、統合後のオフィスは規模縮小を免れず、モルガンポストオフィスの物件は全体が削減の対象になっているという。
「電通はニューノーマル時代のビジネスニーズに合致する規模の物件を精査している。コロナ後に想定される新たなビジネスチャンスをつかむため、マンハッタン地区内5カ所のオフィスを最適化することも含めて、さまざまなオフィス戦略を検討しているところだ」
ちなみに、別の不動産会社の経営幹部は、今回の動きは電通インターナショナルのトップ交代が重要な意味を持つとみる。
9番街に位置するモルガンポストオフィス・ノースビルディングへの移転を決定したのは、アメリカ法人前最高経営責任者(CEO)のニック・ブライエン。ところが、ブライエンはその後すぐに退任し、2020年1月に後任に就いたジャッキー・ケリーが今回の方針転換を主導している。
電通アメリカ法人の最高経営責任者(CEO)を務めるジャッキー・ケリー。
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なお、ケリーはBusiness Insiderが選ぶ「広告業界で最も強力な30人の女性」第1位を獲得。広告およびメディア業界で25年以上のキャリアを誇る著名経営者のひとり。
大企業によるオフィス縮小の動き
いずれにしても、電通の判断は、オフィス面積の縮小を進める他の大手企業の動きと重なる。新型コロナウイルスの世界的流行により、これからのオフィスのあるべき姿を問い直す企業が増えている。
Business Insiderは10月15日、米通信大手AT&T傘下のワーナーメディアが、マンハッタン西部ハドソンヤードに置く本社(約150万平方フィート)オフィスの見直しに着手することを報じた。関係者の話によると、数十万平方フィートを転貸に回すとみられる。
ハドソンヤードの高層ビル群。中央右がワーナーメディアの入居する「30 Hudson Yards」。
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また、冒頭の事情に詳しい不動産経営幹部によれば、出版大手コンデナストもロウワー・マンハッタンのワン・ワールド・トレードセンターに置く本社オフィス(約100万平方フィート)の縮小を検討しているという。
25年の長期契約を結んでからまだ10年たっていないが、ニューヨーク市内の別物件に移転してオフィス規模を縮小する模様。ただし、15年以上残る既存の契約をどう処理するのかは不透明なままだ。
(翻訳・編集:川村力)