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集団で狩りをする優れたハンター…サーベルタイガーの全ゲノム解析でわかったこと

サーベルタイガーの一種、ホモテリウム・ラティデンスが、群れで狩りをする様子を描いた想像図

サーベルタイガーの一種、ホモテリウム・ラティデンスが、群れで狩りをする様子を描いた想像図

University of Copenhagen

  • サーベルタイガーの一種、ホモテリウム・ラティデンスの全ゲノムが、初めて解析された。
  • その遺伝子から、この太古のネコ科の動物が、群れで狩りをする優れたハンターで、獲物を追って長い距離を走る能力を持っていたことがわかった。
  • ホモテリウムは5つの大陸に生息し、絶滅するまで数百万年にわたって地球上を闊歩していた。

最後の氷河期が終わる頃まで、オーストラリアと南極を除くすべての大陸を獰猛なサーベルタイガーがうろついていた。

サーベルタイガーと聞くと長い牙を持つ動物を思い浮かべるかもしれないが、すべての種が大きく長い牙を持っていたわけではない。特に、ホモテリウム・ラティデンス(Homotherium latidens)という太古のネコ科の動物は、犬歯が比較的短かった。そのため科学者たちは、湾曲した短剣「シミター」に因んで、この種に「シミタートゥースド・キャット」というニックネームをつけた(訳注:サーベルタイガーは、英語では「saber-toothed cat」と呼ばれる)。

この動物の全ゲノムを初めて解析した研究論文が、カレント・バイオロジー(Current Biology)誌に2020年10月15日付けで発表された。

研究チームは、ホモテリウム・ラティデンスのゲノム分析に基づいて、この絶滅した肉食獣は、群れで狩りをする優れたハンターで、獲物を遠くまで追跡して死に至らしめていたと述べている。

論文共著者で、コペンハーゲン大学で進化遺伝学を研究するマイケル・ウェストベリー(Michael Westbury)はプレスリリースの中で、「彼らは遺伝的に、強力な骨格、循環器系、呼吸器系を持っていた。つまり長距離走が得意だったということだ」と述べた。

さらにホモテリウム・ラティデンスは、「昼間の視力がきわめて優れ、複雑な社会的行動をとっていた可能性が高い」とウェストベリーは付け加えた。

獲物が疲れ果てるまで追いかける

北米で発見されたホモテリウムの頭骨。オハイオ州にあるシンシナティ自然科学博物館(Cincinnati Museum of Natural History & Science)に展示されているもの。

北米で発見されたホモテリウムの頭骨。オハイオ州にあるシンシナティ自然科学博物館(Cincinnati Museum of Natural History & Science)に展示されているもの。

James St. John/Flickr

ウェストベリーのチームは、カナダ・ユーコン準州のドーソン・シティ郊外にある永久凍土で発見されたホモテリウム・ラティデンスの大腿骨から、DNAを抽出した。

研究チームによれば、この化石は少なくとも4万7500年前のものだという。

ホモテリウム・ラティデンスのゲノムを解析したところ、昼間の狩りを成功させるのに役立つ能力に関係する遺伝子が、少なくとも31個見つかった。具体的には、優れた昼間視力、強靭な骨格、強力な心肺機能などを示すものだ。「大きく開けた土地での狩猟に必要な、獲物が疲弊するまで追い詰める持久力を持っていたと考えられる」と、論文著者らは書いている。

さらに、ウェストベリーのチームの研究では、このネコ科動物が「発達した社会的行動」をとり、現生ライオンのように群れで生活し、集団で狩りをしていた可能性が高いこともわかった。

科学者が考えているより生息数は多かった

今回のDNA解析では、ホモテリウムの生息数が、数少ない化石から予測された以上に多かったことも明らかになった。

ホモテリウムの想像図。

ホモテリウムの想像図。

Binia De Cahsan

それは、この解析に使った大腿骨の持ち主である個体の母親と父親が、遺伝的には互いに大きく異なっていることがわかったからだ。現生のトラなどのネコ科動物に見られる、母親と父親の遺伝的違いよりも大きいと研究チームは結論づけ、それほどの遺伝的多様性があったことからすると、多数のホモテリウム・ラティデンスが地球上をうろついていたにちがいないと述べている。

「遺伝的多様性は、その種の個体数と相関する。こうした大型のネコ科動物が多数歩きまわっていたと推測するのが妥当だろう」とウェストベリーは述べた。

ホモテリウムを含むサーベルタイガーと、現生のネコ科動物は、共通の祖先を持っている。しかし2250万年前ごろに、サーベルタイガーの仲間は現生ネコ科動物と遺伝的に分岐し、独自の種になったと研究チームは述べている。

2017年の研究によれば、ホモテリウム・ラティデンスは、その後の1800万年前ごろに、長い牙を持つスミロドンと呼ばれる近縁種と分岐したという。

最後の氷河期末に、ほかの大型動物たちとともに絶滅

これまでに見つかっている化石から、ホモテリウム・ラティデンスは前肢が後肢よりも長く、獲物を追って走るのに適したしなやかな身体を持っていたことがわかっている。およそ250万年前に始まり、1万1700年前ごろの最後の氷河期末まで続いた更新世において、彼らはマンモスやメガテリウム(地上性の巨大なナマケモノ)などの大型動物を獲物にしていたと考えられている。

論文共著者であるロス・バーネット(Ross Barnett)はプレスリリースで、「ネコ科動物の中では、きわめて繁栄したグループだった。5つの大陸に生息し、絶滅するまで数百万年にわたって地球上を闊歩していた」と述べている。

北海で発見された、2万8000年前のホモテリウムの顎の骨の化石

北海で発見された、2万8000年前のホモテリウムの顎の骨の化石。ロッテルダム自然史博物館所蔵。

Natural History Museum Rotterdam

だが、優秀なハンターも、温暖化によってもたらされた環境の変化を乗り越えることはできなかった。限られた数の獲物をめぐる人類との競争が熾烈になったことも、それに追い打ちをかけた。

2017年にイギリスの北海で見つかった2万8000年前のホモテリウムの顎の骨から、科学者たちは、ホモテリウムが更新世末期に絶滅したと考えている。この絶滅は、ホラアナグマや太古のウマなどを含む、世界中の大型動物を襲った地球規模の大量絶滅の一環だったと見られている。

[原文:New analysis of a saber-toothed cat fossil reveals the ancient animals were ruthless, highly skilled hunters

(翻訳:梅田智世/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)

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