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ベンチャーに立ちはだかる「規制の壁」。改革阻む「民主主義のジレンマ」とは【音声付・入山章栄】

経営理論でイシューを語ろう

撮影:今村拓馬、イラスト:Singleline/Shutterstock

今週も、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が経営理論を思考の軸にしてイシューを語ります。今回のテーマは「規制緩和」。日本の成長戦略に深く関わる重点課題ですが、安倍政権時代は十分な改革が進まなかった難題でもあります。規制緩和がなかなか進まない日本の現状を、入山先生はどう見ているのでしょうか?

【音声版の試聴はこちら】(再生時間:8分47秒)※クリックすると音声が流れます


菅政権は規制改革を進められるか?

こんにちは、入山章栄です。

菅政権誕生から早くも1カ月強が経ちました。今回は菅政権が取り組もうとしている課題について考えてみたいと思います。

常盤さんの声

僕は、規制改革については、個人的に強い期待感と課題感を両方抱いています。

前回、安倍さんの7年8カ月という在任期間は決して長くはないという話をしましたが、僕が一国民として安倍政権をどう評価するかというと、おこがましいけれど点数でいえば65点ぐらいだったかなと思います。

安全保障では成果を出したと思うし、何よりあれだけ長く政権を続けられた安定感という意味で素晴らしかった。一方の経済の方は、良かった部分も大きいですが、残念だった部分も大きいという印象です。

みなさん覚えていますか。当時の安倍さんの打ち出した経済政策、いわゆるアベノミクスには「3本の矢」がありました。

1本目は日銀の黒田東彦総裁の名前にちなんだ、「黒田バズーカ」と呼ばれる大規模な金融緩和です。僕は経済学者ではないのでその賛否は専門的には議論できませんが、少なくともあの金融緩和によって日本中にマネーが流れ、それなりに株価も押し上げられた。いろいろな意見があると思いますが、僕は悪くなかったと思っています。

2本目の矢は政府がどんどんお金を出す、財政出動です。「財政が大赤字なのに、こんなことをしていいのか」という議論はあったものの、国のマクロ経済を刺激するという意味では効果があったかもしれません。

問題は3本目の、当時は「構造改革」と言っていた、いわゆる規制改革です。安倍さんは「これがアベノミクスの1丁目1番地だ」と言っていたはずですが、これに関しては十分に踏み込めなかった印象です。

とはいえ官僚の知人から聞いた話によると、内閣府に強い権限を持たせて、今までと比べると省庁横断的にいろいろな改革を進めたというのは事実のようです。しかし最後は、中途半端で終わってしまった印象です。そして、菅さんはこの改革を引き継いでいきたいと思っているわけですね。

僕は規制緩和に個人的には大賛成です。なぜならこれからの時代のビジネスは、イノベーションを起こす必要がある。それには新しいことをどんどんやらなければいけない。しかしそのとき最大の壁になるのが政府の規制だからです。

今、日本でもいろいろなベンチャーが出てきていますが、ベンチャーの多くが突き当たるのが規制の壁です

オンライン診療が普及しない理由とは

例えば高齢化が著しい日本では、増大する医療費を抑制するためにも、医療制度を変えなければいけないことは明らかです。その点、電話やオンラインによる診療ができたら、高齢者が気軽に医師に相談できるかもしれないし、具合が悪いのに待合室で長時間待つ必要もなくなるし、医療費も抑制できるかもしれない。

ところが日本ではこれまで長らく、オンライン診療は原則禁止でした。なぜか。誤解を恐れず言うと、日本医師会がオンライン診療に反対してきたからです。もっと大胆に言うと、自分たちの持つ既得権益が崩れてしまうことを医師会が恐れたからではないかと、一般には言われている。

もちろん医師会にも言い分はあります。それは「限られた情報しか得られないオンライン診療は危険だ」というものです。それはそれで一理あるでしょう。

しかし、どんどん新しいデジタルテクノロジーが誕生し、それこそデジタル聴診器などもできているこのご時世に、かたくなに規制緩和を拒むだけでは、日本だけが医療のデジタル化に取り残される可能性が出てきます

幸い、コロナ禍による緊急事態で一時的に規制緩和されたことがきっかけで、政府は10月9日にオンライン診療を原則解禁すると発表しました。一時はコロナが落ち着いたら再び禁止になるとも囁かれていたことを考えれば、今回は良い判断だったと思います。

ただ欲を言えば、日本はもっと規制を緩和して、役立つ技術を積極的に社会に活用していく必要があります。そうしないと日本の競争力はこの先さらに低下することになりかねない。

実際、いま世界的に「リープフロッグ(カエル跳び)現象」というものが起きています。

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