Business Insiderの「トレンド・フェスティバル」に登壇した、ネットフリックス創業者のリード・ヘイスティングス氏。
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ネットフリックス(Netflix)の創業者であり共同CEOであるリード・ヘイスティングス氏がBusiness Insiderがオンラインで世界同時開催している「グローバル・トレンド・フェスティバル」に登壇。Business Insiderのグローバル・チーフ・エディター、ニコラス・カールソン氏の公開インタビューに答えた。
登壇当日の10月20日は、奇しくも2020年第3四半期(7月から9月)の決算発表で、有料会員数の伸びが予想を大幅に下回ったことから株価が急落した当日。ヘイスティングスCEOが見つめる「世界」の風景の一端とは?
コロナ禍の影響を理解するには「10年かかる」
コロナによる在宅シフトの追い風を受けて、大きく成長したNetflix
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ネットフリックスはコロナの外出自粛の追い風を受けて大きく伸長した。
1月から3月は1570万人、4月から6月は1010万人と会員数を増加させた。7月から9月にかけては会員の純増数は220万人と大幅にダウンしたものの、コロナがもたらした影響については5年や10年といった長期的な目線で考えるべきだ、と同氏はインタビューで語った。
また、在宅時間が大きく伸びたことによって、よりオンラインに触れる時間が長くなり、さながら「ネットフリックス中毒」のようになってしまっている人もいることに、経営トップとして責任を感じるか?との質問に対しては、こう答える。
「車の発明が交通事故をもたらしたように、あるいは録音技術がライブパフォーマンスの機会を減らしてしまったように、すべてのイノベーションには社会的なコストが付きまといます」
一方でイノベーションがもたらすメリットを最大化し、デメリットを最小限に抑えるよう努力はできる、と付言した。
競合のApple TV、Disney+をどう見るか?
ここ1〜2年ほどで、多くの動画配信サービスが市場に参入している。
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Apple TVやDisney+、HBO Maxなど、ここ1〜2年ほどでアメリカの動画市場の競争は激化している。こうした「動画配信サービスの競合についてどう考えるか?」との質問が投げかけられた。
ヘイスティングス氏は、同じ競合として知られるアマゾン、Hulu、YouTubeなどを挙げ、こう答える。
「私たちはアマゾン、Hulu、YouTubeと13年間に渡って市場争いをしてきました。この2年ほどで、Disney+やピーコック(NBCユニバーサルが7月から開始した動画配信サービス)など、急にたくさんの強豪サービスが生まれてきました。市場が盛り上がるのはいいことですし、私たちは競争には慣れています」
多くの人が複数の動画配信サービスに課金しており、勝者は必ずしも1社ではないことを匂わせつつも、顧客を満足させることができれば、競合サービスより先にネットフリックスを選ばせることは可能だ、とも語った。
また、ユーザーが他の動画配信サービスより先に、ネットフリックスを選ぶ現象を「勝利を勝ち取る、真実の瞬間(Winning moment of truth)」と呼んでいると明かした。
あと10年は引退しない
素晴らしい作品の一例として日本の『全裸監督』をあげたヘイスティングス氏。
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ネットフリックスは7月に、長らくCCO(チーフ・コンテンツ・オフィサー、最高コンテンツ責任者)を担っていたテッド・サランドス氏を共同CEOに任命した。
この抜擢は、ヘイスティングス氏引退への布石なのでは —— との噂も飛び交ったが、同氏はインタビューで「あと10年は引退しない」と明言した。
「(Netflixオリジナルシリーズの)ドイツの『ダーク』、スペインの『ペーパー・ハウス』、日本の『全裸監督』など、素晴らしい作品がたくさん生まれています。こうしたコンテンツを世界中で共有し、世界を結びつけることができるのはとても刺激的なことです」
実際、グローバルでの会員数増加はネットフリックスの成長戦略の中核を担っている。
10月20日に発表した決算によると、2020年3月期(7月から9月)の新規有料会員の約半数を占めているのがアジア太平洋地域からで、同地域の収益は昨対比で66%増となったという。
(文・西山里緒)