管状腺は鼻腔と咽頭の交差部に位置する。
The Netherlands Cancer Institute
- 医師たちは、これまで知られていなかった唾液腺と思われるものを鼻腔内に発見した。
- この腺が新しい臓器として正式に命名されるには、さらに研究が必要だ。
- この発見は、頭頸部がんや慢性的な耳、鼻、のどの病気の治療に影響を及ぼす。
オランダの医師は、鼻腔と咽頭の間に隠された、これまで知られていない臓器を発見したのかもしれない。
医師たちは偶然、この腺を発見した。前立腺がん患者をスキャンしたところ、その鼻腔内に驚きの事実があった。唾液腺のように見える2つの平らな、くねくねとした構造物が存在したのだ。
放射線腫瘍学者のウーター・ボーゲル(Wouter Vogel)はプレスリリースで、「人は3組の大きな唾液腺を持っているが、そこではない」と述べた。
「我々の知る限り、上咽頭にはその他に最大で1000個の唾液腺が粘膜に広がっているが、それらは顕微鏡サイズだ。これが発見された時の驚きを想像してみてほしい」
さらなる研究の結果、この謎の構造は、舌の下(舌下腺)、耳のそば(耳下腺)、および顎の奥(顎下腺)の3つ既知の大唾液腺に類似していることが明らかになった。
Radiotherapy and Oncology誌に発表された研究論文でボーゲルらは、耳管隆起(torus tubarius)に似ていることから、この部位を「管状腺(tubarial glands)」と命名することを提案した。
この新しい構造が大唾液腺であるか小唾液腺であるかを決定するためにはさらなる研究が必要であるが、それでも、これまで知られていなかった身体の部位の発見はエキサイティングだ、とコロンビア大学アービング医療センターの耳鼻咽喉科医、デビッド・グディス(David Gudis)はInsiderに語った。
放射線治療の副作用の原因だったかもしれない
ボーゲルはプレスリリースの中で、頭頸部のがんの治療のために放射線治療を受けた人は、口腔乾燥や嚥下障害を経験することがあり、これは「実に厄介である」と述べた。彼はこの副作用を減らすことを目的に研究を始め、それが新しい腺を発見するきっかけになった。
「管状腺」がある領域を標的とした放射線を受けた患者723人の分析では、その領域に多くの放射線を受けた患者は副作用を経験する率が高かった。
医師は通常、放射線療法の実施時に大唾液腺を避けるようにしているが、これまでこの領域を避ける必要があることを知らなかった。次のステップは腫瘍に治療する時に、この新しい腺を回避する方法を見つけることだ。
慢性副鼻腔炎や耳の疾患に関連する領域にある
研究に参加していないグディス博士によると、この腺の発見は、耳、鼻、喉の研究にとって、刺激的なフロンティアを示すものだという。
この腺は、小児や成人の慢性副鼻腔炎や耳の疾患の原因となりうる領域に位置しており、その対象は後鼻漏からウイルス感染症までさまざまだ。この領域に問題があると、子どもは慢性的な耳の病気にかかりやすくなり、大人は耳管機能不全になりやすく、ちょうど飛行機に乗っているか、耳に水が詰まっているかのように感じることが多くなる、とグディス博士は言う。そして、さらなる研究が新しい治療法につながることを期待していると述べた。
この発見はまた、医師たちに、人体の理解について慢心しないようにという注意を喚起するものだ。「これは解剖学のように基本的なものでもまだ解明すべき謎がたくさん残っていることを思い出させてくれる」とグディス博士は言った。
[原文:Scientists found a possible new set of organs hidden deep in the human skull]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)