就活の「暗黙のルール」から自由になる。パンテーンの「#PrideHair」が描く誰もが自分らしく働ける社会とは

「時代を感じた」

「パンテーンのCMが素敵」

「就活で自分を偽ることにストレスを感じていた」

今、ネット上で「#PrideHair」への反響が広がっている。2020年9月30日に始まったパンテーンの「#PrideHair」プロジェクトは、LGBTQ+の元就活生の体験をもとに、誰もが「自分を偽らずに、自分らしさを表現できる就活」について考えようというもの。2人のトランスジェンダーの元就活生が実体験を語る広告は、LGBTQ+コミュニティの人々はもちろん、多くの人の心を掴んでいる。

「#PrideHair」のプロジェクトは、どのような背景で生まれたのか。

P&G インターナショナル オペレーションズ シンガポールAPAC ヘアケア フォーカス・マーケット シニア ブランド ディレクターの大倉佳晃さんと、P&G経営管理執行役員の日笠浩之さんに聞いた。

76%のLGBTQ+の就活生が「隠していた」

パンテーンの調査1

パンテーンの調査によると、LGBTQ+の就活生の4分の3が、自身がセクシャル・マイノリティであることを選考企業に隠したことがあると答えた。

パンテーンは2018年から「#HairWeGo さあ、この髪でいこう。」というブランドメッセージを掲げ、髪を通して自分を自分らしく表現できる就職活動のあり方を考える活動を続けてきた。その第6弾である今回の「#PrideHair」は、初めてLGBTQ+の就活生が抱える悩みにスポットをあてている。

プロジェクトに先立って、LGBTQ+の現状を調べた大倉さんは、自身の現状認識が思っていた以上に追い付いていなかったことに気付き、衝撃を受けたという。

大倉さん

P&G インターナショナル オペレーションズ シンガポールAPAC ヘアケア フォーカス・マーケット シニア ブランド
ディレクターの大倉佳晃さん

「データによれば、日本ではLGBTQ+に該当する人は8.9%。およそ10人に1人というのは、想像していた以上の数字でした。身の回りにはそうしたセクシュアル・マイノリティの方たちがいるのだということに、改めて気付かされました」(大倉さん)

LGBTQ+の元就活生を対象としたパンテーンによる独自の調査では「就職活動でセクシュアル・マイノリティであることを隠したことがある」と回答した人が76%に上った。理由の1位は「選考に影響があると思った」、2位は「受け入れてもらえるか不安だった」。

また、就職活動に際しては、約5割のLGBTQ+の元就活生が「髪型に悩んだことがある」と回答。「服装で悩んだ」(約6割)という回答に次いで多かった。

「企業側にセクシュアル・マイノリティに配慮した就職活動を望む」というLGBTQ+の元就活生も、72%に上った。

パンテーンの調査2

パンテーンの調査によると、企業側にセクシャル・マイノリティの人に配慮した就職活動を望むと答えた人は72%に上った。

広告には2人のトランスジェンダーが登場しているが、同社サイトでは彼らを含めたLGBTQ+コミュニティの14人が、これから就職活動を始めるLGBTQ+の就活生に向けて、体験談やメッセージを語っている。

そこからは、LGBTQ+の元就活生の苦悩が伝わると同時に、悩んで就活を突破した彼らの現在から、未来への希望も感じられる

動画にも登場するトランスジェンダーの男性は、女性もののスーツを着て就活を行った後、内定先企業で「男性として入社したい」と相談。「初めてのことでわからないが、一緒に進んでいきましょう」という言葉をもらえてうれしかったと話している。

また、別のトランスジェンダー男性も、最終面接で面接官から「伝えてくれて、ありがとうございます。何か困ったことがあれば言ってください」と対応され、安心したという体験談を語っている。

「多くの人が共通する悩みとして『ロールモデルがいない』ことを挙げていました。そんな中で、たくさんのLGBTQ+の元就活生が自らの体験を語ってくれました。こうしたことを伝えていくことで、就活に臨むLGBTQ+の就活生や、自分らしさの表現に悩む全ての就活生に勇気を与え、社会がより前向きに一歩を踏み出す力になればと思います」(大倉さん)

無言の同調圧力に支配されたままでいいのか?

就職活動

日本の就職活動では、まだまだ黒髪にスーツがスタンダード。

GettyImages

パンテーンが2018年に「#HairWeGo」というブランドメッセージを掲げた活動を始めた背景には、大倉さん自身の就活での経験も少なからず影響している、と大倉さんは話す。大倉さんが就職活動をしたのは2000年代の後半。やはり「黒髪にスーツ」が就活のスタンダードではあったが、当時すでに「好きな服装で来てください」という企業もあった。

「私は個人的に、髪型やファッションにこだわる方だったので、当初は就活に茶髪にジーンズで参加することもありました。しかし、なかなか結果に結びつかず、最終的にはみんなと同じ黒髪にスーツというスタイルで就活するようになりました。疑問は抱き続けていたのですが……」(大倉さん)

その後、社会人3年目からシンガポールで勤務するようになった大倉さんは、さまざまな人種と共生する社会のなかで、日本には無言の同調圧力というものがあったのだということを、改めて実感した。

「パンテーンのブランド理念は『あなたらしい髪の美しさを通して、すべての人の前向きな一歩をサポートする』というもの。この理念を元に、何かできるのではないかと始めたのが、#HairWeGoでした」(大倉さん)

2018年には「就活では黒のひっつめ髪でなければならないのか?」という就活生の本音を発信。翌19年には139の企業に「内定式には自分の好きな髪型、服装で来てください」という宣言をしてもらうという形で、メッセージを具体的なアクションにつなげていった。

今回の#PrideHairプロジェクトもその延長上にある。#HairWeGoを通じて、この3年間でLGBTQ+を含むさまざまな人々の抱える問題にアプローチしてきたことで、大倉さんは「単発ではなく、一貫してやり続けること」の重要性を実感しているという。

人材が可能性を最大限に発揮できる企業となる

パンテーンの調査3

今回の調査では、企業の経営者・人事担当者の62%が、「セクシュアル・マイノリティにとってフレンドリーな就職活動は必要だと思う」と回答した。一方で82%が「セクシュアル・マイノリティにとってフレンドリーな就職活動のための配慮や取り組みを実施できていない」と回答しており、現場の想いとは裏腹に、実情が伴わないという現実も見えてきた。

ただ、71%の経営者・人事担当者が「日本の企業全体として、すべての就活生が、自分らしさを偽らずに、自分らしい髪で就活できる社会を目指すことに賛同する」と回答しており、希望の光は感じられる。

パンテーンの調査4

P&Gで執行役員として経営管理を統括する傍ら、社内のLGBTQ+アライコミュニティ(LGBTQ+を理解して支援するコミュ二ティ)のスポンサーも務める日笠さんは、多様な人材を確保することは何より「会社のためになる」と語る。

P&Gは1992年から長きにわたり、ジェンダーから始まり多様性の問題に取り組んできた。「ダイバーシティ&インクルージョン」を企業の経営戦略として掲げている。パンテーンの「#HairWeGo」というブランドイメージ、さらには「#PrideHair」のプロジェクトも、P&Gのこうした経営戦略に合致したものだ。

日笠浩之さん

P&G経営管理執行役員の日笠浩之さん

「消費者の暮らしをよりよくする助けになることが我々のビジネスの目的。イノベーションによっていかに競合他社との差を作り出していけるか、戦略が問われます。今後はイノベーションを生み出すための人材の多様性と、それを活かすマネジメント能力が、勝ち残る企業の条件となるでしょう」(日笠さん)

P&Gでは、経営戦略に沿った多様な人材を採用するため、2019年からエントリーシートの性別欄に、「男」「女」に加えて「答えたくない」という選択肢を設けた。さらに顔写真の添付も求めない。

「就職活動は、自分の能力の可能性をアピールする場です。就活生がそこですべてを出せないのは、就活生にとってはもちろん、企業にとっても不利益になります。企業として、働く人にどうすれば能力を最大限に発揮してもらえるかということを考えると、やはり、環境を変えていく必要があるのです」

日笠さんはさらに、こう語る。

「こうしたメッセージを発信している私たちが、多様性を活かして革新的な商品を市場に打ち出し、消費者の皆さんに認められ、継続的に成功を収めることができれば、こうした活動がなぜ素晴らしいことなのかが、より多くの人に伝わると考えています。最終的にそうなってくれたらというのが、私たちの願いです」(日笠さん)

大倉さんによれば、「#PrideHair」プロジェクト開始後、SNSにはLGBTQ+の当事者だけでなく、それ以外の人たちからも、「涙が出た」「いままで考えもしなかった」「新しい気付きをもらった」などの感想が、多く寄せられている。

「我々もやってみて初めて気付いたこともあります。やはり、まずはより多くの人にこの問題を知っていただくことが、何より大切だと思います」(大倉さん)


パンテーンの「#PrideHair」について、詳しくはこちら。

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