10月28日に発売予定のASUS製「Chromebook Flip C436」。魅力はChormebookとは思えない質感の高さ。
撮影:小林優多郎
台湾のPCメーカー・ASUSは、日本向けに新型ノートPC「Chromebook Flip C436」を発表した。個人向けモデル本体価格は10万8909円(税別)から、発売日は10月28日を予定している。
Chromebookはグーグルの開発するChromeOSを搭載するノートPC。アメリカなどでは文教市場向けにシェアを持っており、日本でも新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに注目を集めている。
そんなChromebookの最新機種である「Chromebook Flip C436」はどんな製品で、“どこまで使える”のか。発売前に実機に触れる機会を得たため、ファーストインプレッションをお送りする。
10万円以上の“ハイエンドChromebook”
Chromebook Flip C436の天板。Chromeのロゴが印字されており、カラバリはエアロジェルホワイト1色。
撮影:小林優多郎
10万8909円の価格からわかるとおり、本機はChromebookでも比較的高価格帯の製品にあたる。
CPUはインテル製第10世代Core、メモリーは8GBもしくは16GB、ストレージは128、256、512GB。
ディスプレイは14インチのフルHD解像度(1920×1080ドット)液晶で、画面近くまで寄れば少し粗が目立つが、通常利用する範囲であれば問題はない。
タブレットモードにして付属するスタイラスペン(USI:Universal Stylus Initiative方式)によって、PDFなどに注釈を入れるなど“手書き”利用も可能。
撮影:小林優多郎
タッチ操作に対応しており、画面はヒンジを軸に360度回転させることができる。完全に回転させて大画面タブレットや、途中で止めて自立させ動画鑑賞するなど多彩な用途に対応する。
左側面にはUSB Type-Cポート、イヤホンジャック、音量キー、電源キーが並ぶ。
撮影:小林優多郎
本体には45Wの充電器が同梱されており、左右側面に1つずつ備えられているUSB 3.1 Gen 1 Type-Cポートから給電できる。
なお、他のインターフェイスはイヤホンジャックとmicroSDスロットのみとなり、筆者の環境ではUSB Type-C経由で4K(60Hz)の画面出力が可能だった。
質感や本体のデザイン、処理性能は満足できる
Chromebookで原稿作成から画像編集、サイトアップまでをやってみたが、大きく不自由な点はなかった。
撮影:小林優多郎
本原稿の執筆やオンライン・オフラインそれぞれの取材のメモ取りなどIT系記者としての使い勝手を試してみたが、Chromebookの価値観がかなり変わる製品だと感じた。
前述のとおり、Chromebookが文教市場向けに注目されている理由の1つとして、安価なハードウェアでも快適に動くという面がある。
ChromeOSは一部を除き、基本的にはインターネット上のアプリケーションを活用しているため、WindowsやmacOSを搭載するPCと比べて、さほど高い性能が要求されない。そのため本機を触る前は「Chromebookに10万円以上もかける必要があるのか」と思っていた。
キーボードは日本語(JIS)配列だが、左側中段に検索キーがあるなどやや変則的なところも。右上にはログイン時などに利用できる指紋認証キーがある。
撮影:小林優多郎
しかし、ChromebookもやはりPCであり、高価格帯モデルならではの機能や利点がいくつもあると、Chromebook Flip C436利用中に感じた。
まずは基本性能。いくらWebアプリといえども、たくさんアプリを立ち上げたりChromeのタブを同時に表示すると、もたつくことに変わりはない。Chromebook Flip C436試用中は、10個20個のタブを開いてもとくに問題はなかった。
また、本体の質感もほかのPCに比べてひけをとらない。大きさに対して重量は1.15kgと持ち歩けるレベル。単一カラーバリエーションのエアロジェルホワイトは、光の当たる角度によってやや紫がかって非常にキレイ。所有感をそそらせる満足感の高い製品に仕上がっている。
Androidアプリ対応はオマケ程度の心づもりで
Chromebook Flip C436は、WebアプリのほかにもAndroidアプリにも対応する。
なお、ASUS製Chromebookはほとんどの機種でGoogle Play Storeに対応し、Androidアプリをインストールできる。
日常や仕事で使うアプリ、例えばMS Office(もちろんGoogleドキュメントなども)、LINE、Slack、Twitterなど、多くはWebベースで利用できるが、「Web版はないがAndroidアプリならある」場合でも使える可能性がある。
“使える”と言い切れない点は、Chromebookでそもそも動くか、動いたとしても快適かどうかはアプリによるからだ。
全画面でしか表示できない「SmartNews」に対し、「Lightroom for mobile」はウィンドウサイズを変更できた(スクリーンショット手前)。
例えば、筆者の場合、「Lightroom for mobile」(Android版)をインストールしてみて十分に使えた一方で、同じくAndroidアプリの「SmartNews」は全画面表示しか対応しておらず、間延びしたUIになってしまい、常用するには難しかった。
したがって、これはChromebook Flip C436に限らずグーグルのAndroidおよびChromeOS全体のエコシステムの問題だが、現時点ではあくまでもChromebookはWebサービス+Webアプリでの利用をメインとして、Androidアプリ利用はオマケぐらいに思っておいたほうがいいだろう。
あえてChromebookをメイン機にするなら気になる1台
同じGoogleアカウントを紐付けたAndroid 5.1以上のスマホであれば、Chromebook側からテザリング操作が可能で、接続中のキャリアやバッテリー容量を確認できるのが便利だ。
撮影:小林優多郎
今回の試用したのは個人向けの最上位機(Core i7-10510U、メモリー16GB、ストレージ512GB)。本体価格15万4364円(税抜)のモデルで、ややオーバースペック気味に感じた。前述のとおり、Webアプリの利用などであればCore i3-10110U、メモリー8GB、ストレージ128GB、10万8909円(税抜)のモデルでも十分満足できる。
また、同じ価格帯の競合機を見ると、マイクロソフトの「Surface Laptop Go」も登場しており、こちらは性能がやや低いもののフル機能のWindows機として利用できるメリットがある。
個人利用で、あえてSurfaceなどのWindows機ではなく、Chromebook Flip C436が最適と呼べるシチュエーションは、ChromeOSならではのシンプルな機能設計による安全性や使いやすさに魅力を感じるかどうかによる。
ASUS JAPANのシステムマーケティング部長のシンシア・テン氏は、記者向け説明会の中で、文部科学省が主導している「GIGAスクール構想の影響で、同社のChromebookの出荷台数が倍以上になっている」と話していた。
Chromebook Flip C436は、文教市場向けのモデルではないが、学校で使い慣れたChromebookを家や日常で利用したいというニーズを狙っている模様だ。
(文、撮影・小林優多郎)