トランプ氏に乗っ取られた共和党。なぜ保守は理念を捨て屈服したのか

おとぎの国のニッポン

TOM BRENNER / REUTERS

ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏の死去によって空席となった最高裁判事の後任に、事前の予想通りエイミー・コニー・バレット氏が承認された。

上院司法委員会では、多数派である共和党議員は1人を除いて全員が承認の票を入れ、民主党議員たちはこのプロセスを「茶番」であるとし、全員で採決をボイコットした。彼らの座席には代わりに、オバマケアのおかげで助かった人々の写真が置かれた。バレット判事の任命によって国民皆保険を目指したオバマケア撤廃の可能性が高まるからだ(トランプ大統領も、そうなることを望んでいると言って憚らない)。

11月3日に投開票される大統領選の前にバレット判事は着任する。全てトランプ大統領が望んだ通りの展開だ。

彼女が就任すれば、トランプ大統領は3人もの最高裁判事を任命したことになる。4人の判事を任命したレーガン大統領に次ぐ多さで、しかもトランプ氏の場合、3人ともが明確に保守の判事だ。最高裁判事は保守系6人・リベラル系3人となり、決定的に右傾化するだろう。そしてこれがトランプ氏の最大かつ最も長期的な「功績」となるかもしれない。最高裁判事は終身で、トランプ氏が任命した判事たちはまだ50代なので、今後20−30年は安泰だ。

強引さとダブルスタンダードにボイコット

最高裁判事

ギンズバーグ判事(前列右から2番目)が亡くなる前の最高裁判事。ギンズバーグ判事の代わりにバレット氏が任命されたことで、保守系6、リベラル系3となった。

REUTERS / Jim Young

9月18日、ギンズバーグ判事の訃報が流れた時、トランプ氏は即座に後任の指名に動き、選挙前に承認を終わらせると表明した。選挙までたった7週間で最高裁判事を承認するという強引さには、民主党だけでなく、共和党支持者の中からも疑念が表明されていた(歴代の最高裁判事承認には平均70日かかっている)。

2016年2月に保守派のアントニン・スカリア最高裁判事が亡くなったとき、当時のオバマ大統領は、後任としてメリック・ガーランド判事を任命しようとしたが、上院共和党の指導部は「選挙の年だから、国民の意をくんで、選挙後まで待つべき」と主張。判事の席は1年近く空席となり、2017年1月、大統領に就任したトランプ氏が保守系のゴーサッチ判事を任命した。

今回共和党は早急に承認を進めた。この暴力的な進め方、ダブルスタンダードに対する怒りが、上記の民主党議員たちのボイコットの背景だ。

2016年のトランプ氏当選から今日まで、アメリカではあまりにも多くの異常なことが起きすぎており、我々の感覚も相当麻痺してきているが、今回の最高裁をめぐる状況を見ていて、「ここまできたか」という思いを強くした。

トランプに屈した共和党有力者たち

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