10月30日発売のmoto g9 playは、低価格ながら特徴のあるSIMフリースマホだ。
出典:モトローラ
モトローラは10月26日、新型スマートフォン「moto g9 play」と「moto g PRO」を発表した。
両機種とも10月30日発売予定で、直販価格はmoto g9 playが2万4800円、moto g PROが3万5800円(いずれも税込み)。
モトローラの日本法人であるモトローラ・モビリティ・ジャパンは2020年7月1日に代表取締役社長が交代。新社長に松原丈太氏が就任した後、今回が初の製品発表になる。
携帯電話メーカーとしては老舗のモトローラだが、新たに打ち出した方針と新製品はどんなものなのかチェックしてみよう。
マクロレンズ入り3眼カメラ搭載の2万円台スマホ
moto g9 playの背面カメラは4800万画素のメイン、200万画素のマクロ、200万画素の深度センサーの3眼構成(もう1つの穴はLEDフラッシュ)。
出典:モトローラ
moto g9 play、moto g PROはいずれも中価格帯のいわゆる“手頃な値段で必要十分なスペック”の端末だ。
moto g9 playは6.5インチ1600×720ドット解像度のIPS液晶、チップセットにクアルコム製Snapdragon 662、4GBメモリー、64GBストレージ、5000mAhのバッテリーを備える。
moto g9 playのマクロレンズの作例。
出典:モトローラ
特徴的なのは背面の3眼レンズの1つがマクロ(近接)撮影用になっており、2cmまで被写体に寄って撮影できる。iPhoneなど多くのライバル機種が標準(広角)+超広角+望遠の組み合わせの中、被写体の質感まで捉えられるマクロレンズの採用は注目すべき点だ。
初のスタイラスペン付きスマホも登場
moto g PROはモトローラの日本市場向けスマホとしては初めてスタイラスペンがついている。
出典:モトローラ
もう1つの新製品であるmoto g PROは、スタイラスペンが付属している点が特徴的だ。
スタイラスペンは本体に収納でき、付属のノート機能などを使えば指で書くより快適にメモやスクリーンショットへの注釈を書ける。
ただし注意点としては、アップルの「Apple Pencil」やサムスンの「S Pen」などとは異なり、moto g PROのスタイラスペンは静電容量式であり、バッテリー充電が不要というメリットはあるが、Bluetoothなどはサポートしておらず、基本的には筆圧などの検知はできない。
スクリーンショットへの注釈や写真の加工、メモなどがペンで行える。
出典:モトローラ
その他の特徴については、カメラ機能や2日間駆動するバッテリー性能などmoto g9 playと共通している部分が多い。
6.4インチ2300×1080ドット解像度のIPS液晶、Snapdragon 665、4GBメモリー、128GBストレージ、4000mAhのバッテリーなど、スペック値はややmoto g9 playと異なるが、モトローラは10月26日開催の説明会で「(性能面では)g9シリーズに準拠している」と回答している。
ビジネス向けに特化
moto g PROは、ビジネス用途を見越して導入される(アメリカでは「moto g stylus」という名称で展開済み)。
出典:モトローラ
1つの疑問として「性能はg9シリーズなのに、moto g PROはなぜ『g』なのか」という点が挙げられる。ここに松原氏体制のモトローラの新たな狙いがある。
機種の名称については、「ビジネスモデル初号機」(モトローラ プロダクトマネージャーの島田氏)という意味で、あえてこれまでのg+数字ではなく、g PROの名称を冠した。日本において初めての法人・ビジネス利用を特に意識したスマートフォンであることを強調したわけだ。
2枚のSIMで通話もデータ通信も切り替えられるDSDV(Dual SIM Dual VoLTE)に対応する点、グーグルが企業利用への要件を満たしているか検証する「Android Enterprise Recommended」を取得している点は、moto g9 playもmoto g PROも共通している。
名称こそ「moto g PRO」だが、同機はAndroid One製品で、OSやセキュリティーアップデートが一定期間保証されている。
出典:モトローラ
だが、moto g PROはそれらに加えて、これもまたグーグルが展開するAndroid Oneスマートフォンとしての特徴を備える。
具体的には、Android 12(moto g PROはAndroid 10での出荷)までのOSアップデート、2年間のセキュリティーアップデートが保証されている。
保守としてもモトローラ自身が2年間の修理サービス(通常は1年間)を付けるため、ほかのモトローラ製品と比べて会社用スマホとして導入しても安心して使える要件が揃っていると言える。
2020年度は日本向けに“倍”の機種数の展開を予告
写真左からモトローラ・モビリティ・ジャパンのマーケティングマネージャー&エバンジェリストの銭高明氏、代表取締役社長の松原丈太氏、プロダクトマネージャーの島田日登美氏。
出典:モトローラ
説明会で松原氏は、日本でのモトローラのビジネスの状況について、具体的な数字の開示は控えたものの「去年と比較してもかなりの比率で売り上げが伸びている。機種数については、去年の倍は出していきたい」と意気込みを語っている。
また、同氏が就任して新しく手がけていく分野は、法人向けなどのビジネス市場であることを表明。「ビジネス利用のほうでも使い勝手を確かめてほしい」と話した。
今回のmoto g PROがビジネス市場進出の1号機であり、モトローラの日本でのビジネスにとって大きなマイルストーンになるのは確かだ。
アジア向けのAndroid Enterprise Recommendedを取得している製品一覧。
出典:グーグル
ただ、市場には例えばシャープのAQUOSのような「低価格」「十分な性能」「防水・防塵・耐衝撃対応」といった強力なライバルも存在する。また、法人用途となると通信回線の契約や保守契約と同時に行われることが多い。
モトローラは現在、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天といったキャリアに直接製品を卸しておらず、格安SIMとのセット販売や家電量販店、ECサイトでの販売がメインとなっている。
法人向け市場での成長を目指すのであれば、今までとは違った販路が必須となるが、松原氏は「販路に関してもいろいろ、新しいパートナーやチャネルの開拓はしている」との内容に留めた。
米中貿易摩擦によるファーウェイのシェア低下や、政府が求める携帯電話料金のさらなる低廉化によって、携帯電話市場は今後さらに大きく変化する可能性がある。そんな中で、老舗メーカーであるモトローラがどのように立ち回るのか、今後の動きに注目したい。
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(文・小林優多郎)