- NASAの宇宙探査機 「ジュノー」が、木星の稲妻のような発光現象「超高層雷放電」を観測した。
- 地球では、雷雨のときにこれらの色鮮やかな光が発生し、「スプライト」と呼ばれる赤い帯状のものや、「エルブス」と呼ばれる光る円盤状のものが生じる。
- 科学者たちは、木星にもスプライトやエルブスがあるだろうと予測していたが、これまで撮影されたことはなかった。
アメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙探査機 「ジュノー」が、木星の大気圏で、稲妻のようなカラフルな発光現象「超高層雷放電」を撮影した。
クラゲのような形をした「スプライト」や、「エルフ」と呼ばれる円盤状の現象が、雷雨の際に地球の空で発生することがある。この現象が初めて報告されたのは1989年のことで、科学者たちは、木星のように稲妻が発生する惑星でも、この発光現象が存在するだろうと予測していた。
だがしかし、これまで地球以外のスプライトやエルフを見た人はいなかった。
ジュノーは2016年から木星を周回しており、木星のオーロラを紫外線で撮影している。これらの画像を処理している研究者チームは最近、奇妙なことに気づいた。
「画像をまとめる過程で、時折、驚くほど短時間の明るい閃光が見られることに気づいた」とジュノー・チームの研究員であるロヒニ・ジャイルズ(Rohini Giles)は、27日、アメリカ天文学会の惑星科学部門の年次総会の記者会見で語った。
「4年間のミッションで得たデータを調べてみると、全部で11回の閃光があった。どれも似たような性質のものだった」と彼女は付け加えた。
それぞれの発光は数ミリ秒しか続いていなかった。
ジャイルズのチームは27日、これらの閃光に関する新たな研究結果を「Journal of Geophysical Research:Planets」に発表した。
地球上では、スプライトは長い赤い帯状に見え、ときには拡散した光輪から降りてくる。雷によって高高度に「準静電界(quasi-electrostatic field)」が生じる時に起こる、とジャイルズは説明する。
あるときは落雷は電磁パルスを上向きに送る。その場合はパルスは発光する円盤、すなわちエルブスを作る。
「地球上では、スプライトとエルブスは大気中の窒素との相互作用のために赤色に見える」とジャイルズは言う。
「しかし木星では、上層大気の大部分は水素でできているので、青かピンクに見えるだろう」
ジュノーは雷検知装置が紫外線撮影装置の反対側にあるため、これらの事象が落雷によって引き起こされたことは確認できない。この2つの装置の画像は少なくとも10秒の間隔で撮影されるので、短い閃光を同時に捉えられないからだ。
2019年6月27日にハッブル宇宙望遠鏡が撮影。木星のトレードマークである大赤斑が写っている。
NASA, ESA, A. Simon (Goddard Space Flight Center) and M.H. Wong (University of California, Berkeley)
しかし、他のすべての状況は、これらの11回の爆発が「超高層雷放電」であることを示している。これらは非常に短命で、大量の水素を放出し、木星の上空約300kmで発生した。雷であるには高度が高過ぎる。
「ジュノーが撮影を行うたびに、エルブスとスプライトのより明確な兆候を探し続けている」とジャイルズは述べている。
「我々が探しているもののことがわかったので、木星や他の惑星でそれらを見つけるのはもっと簡単になるだろう。木星のスプライトやエルフと地球のそれを比較することで惑星大気の電気的な活動をより深く理解することができる」
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)