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年齢とともに「友人を選ぶ」のは人間だけではなかった…「老い先短い」は理由ではない?

互いに毛づくろいをするチンパンジーの群れ。左端にいる「カカマ(Kakama)」という名の個体は、この集団で優位な地位にあるオスだ。ウガンダのキバレ森林国立公園で撮影。

互いに毛づくろいをするチンパンジーの群れ。左端にいる「カカマ(Kakama)」という名の個体は、この集団で優位な地位にあるオスだ。ウガンダのキバレ森林国立公園で撮影。

Ronan Donovan

  • 人間は、年を取るにつれて友人の数が減り、残った友人との関係はより濃密になる傾向がある。
  • 心理学の世界で広く受け入れられている理論では、こうした現象は、我々人間が自分の死を差し迫ったものとして認識するにつれ、残された時間のなかでより感情的な満足感を得られる関係を優先するために起きるとされている。
  • 新たな研究により、オスのチンパンジーにも人間と同様に、高齢になるにつれて、交友関係を絞り込む習性があることが明らかになった。
  • しかし、チンパンジーが自分がいずれ死ぬことを自覚しているとは考えにくい。そのため、こうした行動の変化は、加齢に伴って攻撃性が低下することに起因しているとも考えられる。

人は歳を取るにつれて友人を選ぶ傾向が高まることが多い。

若い頃は交友関係を広げていくが、年齢を重ねるにつれてその数は絞られ、選ばれた数人と深い関係を結ぶケースが多い。

このように、加齢とともに友人を選ぶ傾向が強くなるのは人間だけではないことを示す研究結果が、「サイエンス」誌に掲載された。チンパンジーも同様の行動を見せるというのだ。研究チームは、ウガンダのキバレ森林国立公園(Kibale National Forest)で20年間にわたって集められたデータをもとに、オスのチンパンジーの交友関係における力学が、時間の経過とともにどう変化するかを分析した。

この研究の主著者であるミシガン大学所属の人類学者アレクサンドラ・ロサティ(Alexandra Rosati)はBusiness Insiderに対して、「野生のチンパンジーも、人間と同様に、年齢を重ねるにつれて強い社会的つながりを重視し、他の個体とよりポジティブに交流するようになることがわかった」と語った。

「年齢が高いチンパンジーでは、他の個体と、より相互的で対等な交友関係を結ぶ現象が認められた。これに対し、比較的若い成体のチンパンジーでは、相手から好意の返礼がない、一方的な関係になりがちだ」とロサティは付け加えた。

年配のチンパンジーは相互に認め合う

キバレ森林国立公園で身を寄せ合うチンパンジー。3頭は、「カニャワラ(Kanyawara)群」と呼ばれる群れに属している。トップの地位にあるオスのカカマ(左)が他の2匹と毛づくろいをしている。

キバレ森林国立公園で身を寄せ合うチンパンジー。3頭は、「カニャワラ(Kanyawara)群」と呼ばれる群れに属している。トップの地位にあるオスのカカマ(左)が他の2匹と毛づくろいをしている。

Ronan Donovan

ロサティの研究チームは、キバレ・チンパンジー・プロジェクト(Kibale Chimpanzee Project)として1987年から収集されてきた延べ7万8000時間分の観察データを検証し、中でも15歳から58歳のオスの個体21頭に着目した。

研究チームは、チンパンジーの毛づくろいの習慣と座った際の個体間の距離を指標として、これらのオス個体の交友関係の親密度を測定した。オスの個体間の親密度は、「相互に認め合う交友関係」「一方的な関係」「非交友関係」という3つのカテゴリーに分類された。

その結果、年齢が35歳を超えるチンパンジーでは、相互に認め合う交友関係(2頭のオスが近くに座り、定期的に毛づくろいをし合う関係)の数が増えることがわかった。

これとは対照的に、若いオスでは、一方的な関係(他の個体の毛づくろいをしても、相手からのお返しがない関係)であることが多かった。より高齢のオスでは、こうした不均衡なかたちのつながりは少なくなっていた。

歳を取ると「大切な友達」を優先する理由

社会情動的選択性理論(SST)では、人生の残り時間が尽きつつあるという自覚が芽生え始めると、新しい相手と友情を育むよりも、感情的に満足度の高い既存の人間関係を優先する傾向が高まると指摘している。

しかしチンパンジーの場合は、人間とは異なり、死期が迫っているという感覚があるわけではない。

「チンパンジーも、数時間、あるいは数日先の未来を考えることはできるが、動物が長期的な未来や自らの死すべき運命について思考できることを示すエビデンスはない」とロサティも認めている。

そのため、チンパンジーの交友関係においても、時間の経過とともに人間と同様の傾向が生じると判明したことは、研究者にとって予想外だった。

「チンパンジーに関するこれまでの研究から、彼らがいくつかの点では人間に非常によく似ていることや、この種においては社会的なつながりがとても重要であることはわかっていた。だが、このように人間の加齢パターンに非常に近い結果が出たのは驚きだった」とロサティは述べた。

キバレ森林国立公園のカニャワラ群に属する若いオスのチンパンジー、ランジョ(Lanjo)

キバレ森林国立公園のカニャワラ群に属する若いオスのチンパンジー、ランジョ(Lanjo)

Ronan Donovan

今回の研究結果から、類人猿が加齢に伴って付き合う友を絞り込む現象の裏には、進化に基づく別の理由があるとも考えられる。そしてそれは、我々人間にも当てはまるかもしれない。

行動生態学を専門とするアリゾナ州立大学のジョーン・シルク(Joan Silk)は、論文に添えられた論評でこう述べている(シルクは今回の研究には参加していない)。

「SST(社会情動的選択性理論)によって説明できるとされてきた行動パターンは、どうやら人間という種を超えて広く当てはまるものであり、高度に発達した時間の概念や、自分がいずれ死ぬといった認識を必要としない可能性がある」

チンパンジーが、「自分に残された時間は限られている」という切実な自覚を、科学者の予想を超えて持っている可能性はほとんどないと、シルクは指摘する。

シルクはBusiness Insiderの取材に対して、以下のように述べた。

「現時点での研究から、チンパンジーがとても賢く、他の動物の知識や欲求について、ある程度認識していることはわかっている。だが、自分の命に限りがあることをチンパンジーが自覚していると考えるにはかなりの無理があるというのが、大多数のチンパンジー研究者の見解だろう」

ウガンダのキバレ森林国立公園で生息するスタウト(Stout、左)が、ビッグ・ブラウン(Big Brown、右)の毛づくろいをする様子。どちらも年配のオスで、長期にわたって相互に認め合う交友関係にある。

ウガンダのキバレ森林国立公園で生息するスタウト(Stout、左)が、ビッグ・ブラウン(Big Brown、右)の毛づくろいをする様子。どちらも年配のオスで、長期にわたって相互に認め合う交友関係にある。

Ronan Donovan

年齢とともに「丸くなる」

今回の新たな研究では、もう1つの現象も明らかになった。それは、年配のチンパンジーは、若い個体と比べて、仲間との交流で攻撃的な行動を示さなくなるというものだ。

加齢に伴い、オスのチンパンジーは、ネガティブな行動よりもよりポジティブな交流行動(ケンカをせずに友だちの毛づくろいをするなど)を好む特徴を示した。年長のチンパンジーは、相互にメリットのある交友関係を結ぶ傾向があるが、その理由についても、この変化で説明がつくかもしれない。

「我々は、チンパンジーに認められたこのような変化は、情動反応性のシフトに起因するものだという仮説を立てた。次のステップでは、これを検証したい」とロサティは述べた。

情動反応性とは、制御できない強い感情的反応を示しやすい傾向を指す言葉だ。ロサティはその例として、比較的若いチンパンジーでは、他の個体との交流がケンカに発展しやすいのに対し、「年齢が高いチンパンジーでは、ケンカに引きずり込まれないよう自制する能力を身につけているように見受けられる」と指摘した。

今回の論文で著者たちは、老いつつあるチンパンジーにとって、安定した感情を保つことはメリットがあると記している。気持ちが落ち着いていることで、年下のオスたちと協力関係を築きやすくなり、年齢を重ねてからもメスと交尾する可能性が高まるとも考えられるという。

しかし、すべての霊長類の動物がこのような行動を見せるわけではないとして、ロサティはこう記している。

「例えば、一部のサルの種では、加齢とともに自閉的になったり、よりネガティブな行動を見せるようになったりするものも見受けられる。これは、我々がチンパンジーについて発見し、人間でも見受けられるポジティブな行動へのシフトとは異なる現象だ」

カニャワラ群に属する年配のオス、トーフ(Tofu)が木の上でくつろぐ様子。ウガンダのキバレ森林国立公園で撮影。

カニャワラ群に属する年配のオス、トーフ(Tofu)が木の上でくつろぐ様子。ウガンダのキバレ森林国立公園で撮影。

Ronan Donovan

ロサティは、ボノボやイルカなど、寿命が長く複雑な社会行動を持つ他の種でも同様の傾向が認められるかどうかを調査したいと述べた。彼の研究チームはまた、オスほど個体間のやりとりが盛んではないメスのチンパンジーの交友関係についても、オスと同様のパターンがあるのか調べたいとしている。

[原文:Humans aren't the only species who get choosier about their friends as they age. Chimps do it too, new research suggests.

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)

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