- ゴールドマン・サックスのデビッド・コスティンは、高成長を測るフレームワーク「ルール・オブ・10(テン)」を活用し、今日のテック・ジャイアンツのように産業をリードするような銘柄を特定している。
- コスティンは、S&P500を大きく上回る収益成長を続け、2022年までそれが持続すると予想される21の銘柄を挙げた。
- さらにその中から将来、GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)に肩を並べる規模に成長し得る5銘柄を絞り込んだ。本稿では、その5銘柄を含む、コスティン厳選の21銘柄をリストとして公開する。
Chris Hondros / Getty images
テック・ジャイアンツに席捲された株式市場は、いまや日常風景になった。しかし20年前には、GEやエクソンが単なる“付け足し”銘柄になってしまうなど誰も想像し得なかったに違いない。
グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、そしてマイクロソフトの「GAFAM」に投資されている資金量は膨大だ。ゴールドマン・サックスのチーフ米国株ストラジテスト、デビッド・コスティンによると、過去40年間、これほど一部の銘柄に投資が集中したことはなかったという。
しかし、この状況は変わるだろう。投資家は次の大きなチャンスを求めている——コスティンはそう語り、「GAFAMを超える高成長を実現する企業を探す投資家が増えている」と指摘する。
次なる有望銘柄を発掘するためにはまず、GAFAMを成功に導いた驚異的な成長に目を向けることが必要だ。
コスティンは次のように記している。「経済状況に関わらず売上を急速に伸ばしてきたこれらの企業の能力は、コロナ禍において注目されている。この低金利下では、成長は特に重要だ」
コスティン率いるチームは、独自のフレームワークである「ルール・オブ・10(テン)」という基準を用い、2018年と2019年に連続して10%以上の年間売上高成長率を達成し、かつ2021年と2022年にその成長率を維持できると予想される企業を探した。5年間の平均年間売上高成長率が10%以上であることも基準だ。
S&P500銘柄のうち、コスティンの基準に見合うのは21銘柄だった。その売上高と業績の成長率は、S&P500指数全体の平均を大きく上回っている。
コスティンは顧客宛てレポートの中で、「(21銘柄の)平均売上高成長率は年率18%(S&P500は4%)、年初来の株価収益率は21%(同0%)である」と記している。
18%という売上高成長率は、GAFAMが同期間に達成すると予想されている「22%(5社平均)」に迫るものだ。
その企業のリストから、新たなテーマが見えてくる。コスティンの表現を借りれば、「医療のコンピュータ化」「ビジネスのデジタル化」「ワークフロー自動化」「ECと電子決済」だ。
だが、GAFAMの5社に比べれば、21社という数字はまだ多く感じる。そこでコスティンらはリストをさらに絞り込み、「未来のビッグ5(future five)」と呼ぶべき5社を特定した。
その「未来のビッグ5」とは、次の5社だ。
- ロボット手術システムメーカー「インテュイティヴ・サージカル(Intuitive Surgical)」
- 設計ソフトウェア企業「オートデスク(AutoDesk)」
- クラウド型ビジネス・ソフトウェア・メーカー「サービス・ナウ(ServiceNow)」
- 決済大手「ペイパル」
- 希少疾患薬メーカー「バーテックス・ファーマシューティカルズ(Vertex Pharmaceuticals)」
これら5社はいずれも、「獲得可能な市場規模が大きく、参入障壁が高い」ことから恩恵を受けているとコスティンは言う。
5社は、2018〜2022年において年間売上高成長率20%(5社平均)を達成すると予想されている。GAFAMの成長率にさらに肉薄する勢いだ。株価収益率も同様で、未来のビッグ5の年初来株価収益率は単純平均で38%。対するGAFAMは39%だ。
これらの企業がアップルやアマゾンに匹敵するジャイアンツになるという保証はどこにもない。ウォールストリート紙の直近の評価によると、5社のうち4社の時価総額は1000億ドル(約10兆円)未満だ。うち時価総額が最も大きいのはペイパルだが、それでもアップルの10分の1にも届かない。
しかしコスティンは、GAFAMの銘柄をここまで巨大なものに押し上げたトレンドは、この先何年も続くと言う。そのトレンドは少なくとも、5社が将来のリーディングカンパニーとなるための扉を開くことになる、とも。
「市場は今後も、成長株に極めて大きなプレミアムを付与し続けるだろう。絶対値で見ると、株価は集計ベースでも中央値ベースでも高い。しかし金利と比較すると、相対的に株価はやや割安だ」
なおコスティンは、2018年から2022年までの5年間における予想年平均成長率に基づいて21銘柄のランキングを作成した。「未来のビッグ5」も含む21銘柄のリストは以下の通り(リストの出所はすべてゴールドマン・サックス。データは米Business Inider掲載の9月20日時点。最新情報は各画像キャプションのリンクより確認可能)。
21. モンスタービバレッジ(Monster Beverage)
セクター:生活必需品
時価総額:439億ドル
年初来成長率:+28.8%
5年間の年平均成長率:10%
20. エドワーズ・ライフサイエンシーズ(Edwards Lifesciences)
セクター:ヘルスケア
時価総額:519億ドル
年初来成長率:+7.9%
5年間の年平均成長率:11%
19. マスターカード(Mastercard)
セクター:IT
時価総額:3400億ドル
年初来成長率:+14.5%
5年間の年平均成長率:11%
18. アリスタ・ネットワークス(Arista Networks)
セクター:IT
時価総額:157億ドル
年初来成長率:+1.2%
5年間の年平均成長率:13%
17. インテュイティヴ・サージカル(Intuitive Surgical)
セクター:ヘルスケア
時価総額:839億ドル
年初来成長率:+17.0%
5年間の年平均成長率:13%
16. アンシス(Ansys)
セクター:IT
時価総額:282億ドル
年初来成長率:+23.5%
5年間の年平均成長率:13%
15. ツイッター(Twitter)
セクター:コミュニケーションサービス
時価総額:310億ドル
年初来成長率:+23.6%
5年間の年平均成長率:14%
14. アビオメッド(Abiomed)
セクター:ヘルスケア
時価総額:126億ドル
年初来成長率:+60.9%
5年間の年平均成長率:16%
13. インサイト(Incyte)
セクター:ヘルスケア
時価総額:200億ドル
年初来成長率:+3.0%
5年間の年平均成長率:17%
12. フォーティネット(Fortinet)
セクター:IT
時価総額:192億ドル
年初来成長率:+9.5%
5年間の年平均成長率:17%
11. アドビ(Adobe)
セクター:IT
時価総額:2391億ドル
年初来成長率:+14.0%
5年間の年平均成長率:18%
10. ペイパル・ホールディングス(PayPal Holdings)
セクター:IT
時価総額:2186億ドル
年初来成長率:+67.2%
5年間の年平均成長率:18%
9. アライン・テクノロジー(Align Technology)
セクター:ヘルスケア
時価総額:265億ドル
年初来成長率:+18.2%
5年間の年平均成長率:19%
8. オートデスク(Autodesk)
セクター:IT
時価総額:518億ドル
年初来成長率:+25.8%
5年間の年平均成長率:20%
7. セールスフォース・ドットコム(Salesforce.com)
セクター:IT
時価総額:2294億ドル
年初来成長率:+54.1%
5年間の年平均成長率:23%
6. ペイコム・ソフトウェア(Paycom Software)
セクター:IT
時価総額:164億ドル
年初来成長率:+6.0%
5年間の年平均成長率:23%
5. ネットフリックス(Netflix)
セクター:コミュニケーションサービス
時価総額:2191億ドル
年初来成長率:+49.5%
5年間の年平均成長率:24%
4. ダイヤモンドバック・エナジー(Diamondback Energy)
セクター:エネルギー
時価総額:48億ドル
年初来成長率:-64.6%
5年間の年平均成長率:25%
3. バーテックス・ファーマシューティカルズ(Vertex Pharmaceuticals)
セクター:ヘルスケア
時価総額:696億ドル
年初来成長率:+22.2%
5年間の年平均成長率:28%
2. サービス・ナウ(ServiceNow)
セクター:IT
時価総額:910億ドル
年初来成長率:+61.5%
5年間の年平均成長率:29%
1. デクスコム(DexCom)
セクター:ヘルスケア
時価総額:382億ドル
年初来成長率:+80.1%
5年間の年平均成長率:31%
(翻訳・住本時久、編集・野田翔)