2020年9月期通期決算の説明会に登場した藤田晋社長(右上ワイプ)。
Screenshot of CyberAgent FY2020 Presentation
サイバーエージェントが2020年9月期(2019年10月1日〜2020年9月30日)通期決算を発表した。
ライブ配信による決算説明会に登場した同社の藤田晋社長は、「上場して20年を迎え、売上高は5000億円突破を目前にしてなお成長を続けている」と順調ぶりを自画自賛した。
売上高は広告事業などでコロナの影響を受けるも、過去最高を更新。前年比5.5%増の4785億円。
2020年(上場は3月)以降の連結売上高の推移。
出所:サイバーエージェント2020年通期決算説明会資料
営業利益も前年比9.9%増の338億円。期初の見通し上限を上回り、社員に「特別インセンティブ」として総額14億円を支給したという。
2020年(上場は3月)以降の連結営業利益の推移。
出所:サイバーエージェント2020年通期決算説明会資料
純利益は66億円。前年は約17億円だったので、ほぼ4倍増。
当期純利益は前年比289.9%増。
出所:サイバーエージェント2020年9月期決算短信
「ネット広告」「ゲーム」「メディア」という事業三本柱のうち、コロナ禍で最もダメージを受けたのはネット広告事業。それでも通期では増収増益。期初が絶好調で「大きく伸びそうな期待があったがコロナで落ち込み、それでも何とか踏みとどまった」(藤田社長)。
インターネット広告事業の売上高と営業利益の推移。
出所:サイバーエージェント2020年通期決算説明会資料
サイバーエージェントの広告事業の強みになっているのは「極(KIWAMI)予測AI」。人工知能によって高い広告配信効果が予測されるクリエイティブを制作し、効果を最大化する。主要広告クライアントにはほぼ導入済み。
出所:サイバーエージェント2020年通期決算説明会資料
ヒットタイトルの有無に依存しがちなゲーム事業も増収増益。既存タイトルの堅調に加え、9月30日にリリースしたばかりの『プロジェクトセカイ カラフルステージ』の初速も好調。今後に期待できるという。
出所:サイバーエージェント2020年通期決算説明会資料
毎年数百億円規模の投資を続けてきたテレビ・ドラマ・動画配信サービス「ABEMA(アベマ)」は「赤字幅が185億円まで減った」(藤田社長)。メディア事業全体としては、前年比22.6%の大幅増収。
メディア事業の営業損失はこの5年間で最大の182億円ながら、大きな投資を続けてきた「ABEMA」とその周辺事業については、売上高を伸ばしながら、赤字幅を徐々に減らしつつある。
出所:サイバーエージェント2020年通期決算説明会資料
6月から提供開始、第4四半期(2020年7〜9月)に本格始動したオンラインライブ「PayPerView(ペイパービュー)」がコロナの影響で絶好調。LDHやももいろクローバーZの独占配信で、7〜9月だけで23億円を売り上げ。メディア事業の大幅増収を支えた。
人気アーティストによる「PayPerView(ペイパービュー)」上でのオンラインライブがメディア事業の好調を支えた。
出所:サイバーエージェント2020年通期決算説明会資料
「PayPerView(ペイパービュー)」が本格始動した第4四半期(2020年7〜9月)の売上高は前年同期比1.4倍に。
出所:サイバーエージェント2020年通期決算説明会資料
2021年度の通期見通しは「引き続きコロナの影響がどの程度か見えない」「ゲームの新規タイトルがヒットするか不透明」(藤田社長)としながらも、売上高で大台の5000億円突破、今年度並みの300億〜350億円の営業利益を想定。
2021年度(2020年10月1日〜2021年9月30日)の業績見通し。「ABEMA」投資は継続。
出所:サイバーエージェント2020年通期決算説明会資料
結論としては、「ABEMA」への長期投資を疑問視する声や、ネット広告事業の過当競争を不安視する声がたびたび聞かれたものの、日本を代表するIT企業としての存在感はますます高まったと言っていい決算内容だった。
本決算発表日(10月28日15時)時点の時価総額は、サイバーエージェントが8432億円、総合広告代理店の電通グループが8767億円。ネット広告とメディアを組み合わせ「1兆円クラブ」入りが見えてきたサイバーエージェントと、立場が完全逆転する日も近い。
(文:川村力)