コロナ禍でも売上げ伸ばすLINE決算…動画広告が好調、LINE Payは決済単価が上昇

LINE アイコン

国内最大規模のコミュニケーションサービスを展開するLINEは、2020年度第3四半期決算を発表した。

撮影:小林優多郎

LINEは10月28日、2020年第3四半期決算(7〜9月)を発表。売上高は約629億円(前年同期比で12.4%増)、営業利益は約211億円(前年同期は57億500万円の赤字)と、増収増益となった。一方、1〜9月期の累計でみると、最終損益は291億円の赤字だった(前年同期は339億円の赤字)。

スライド LINEの全体

売上収益と月間アクティブユーザー数の推移。

出典:LINE

第3四半期の営業利益には5月28日に発表したLINEマンガを運営するLINE Digital FrontierのWebtoon Entertainment(アメリカのNAVER子会社)への譲渡および、タイのデリバリー系サービス「LINE MAN」運営会社への第三者割当増資による公正価値再評価利益である約276億円が含まれており、それらを差し引くと64億円の損失となる。

LINEは金融領域やO2O(Online to Offline)領域などヘの投資を進めており、長らく赤字決算が続いているが、このコロナ禍で着実に売上を伸ばしている。今期決算に見える同社のビジネスの現状を見てみよう。

トーク画面上部の動画広告が好調

スライド 広告事業

広告領域の収益。

出典:LINE

売り上げ増を牽引した大きな要因は、コア事業である広告領域だ。決算説明資料によると、広告領域全体の2020年第3四半期の売上高は前年同期比16.3%の356億円にのぼっている。

LINEは広告領域成長の主な要因を、LINEのトーク画面上部に表示される動画広告「Talk Head View」の表示回数増加および広告単価の改善を挙げている。

Talk Head View

LINEアプリのトーク画面上部に配置されているSmartChannelに配信される動画広告「Talk Head View」(2019年6月撮影)。

撮影:小林優多郎

LINE広報は「LINEの国内MAU(月間アクティブユーザー数)は8600万人に拡大し、非常に高いエンゲージメントを継続できている中、サービスの成長も順調」と、LINEサービス全体の成長が高い顧客接点を実現していると説明。

広告単価の改善について詳細な数値は非開示なものの、「配信アルゴリズムの継続的な改善」「企業と顧客とのデジタル接点強化の重要度が増したことによって企業側のニーズが増えたこと」(いずれもLINE広報)が、上昇要因であるとコメントした。

ショッピング・旅行は新型コロナの影響が大きい

スライド O2O/コマース

O2O/コマース領域の取扱高推移。

出典:LINE

コロナ禍による大きな影響を良い意味でも悪い意味でも受けているのが、投資フェーズである戦略事業のO2O(Online to Offline、ネットの体験からリアル店舗へ送客するなどといった取り組み)/コマース領域だ。

追い風を受けているのは、出前館によるフードデリバリーサービス「LINEデリマ」とテイクアウトの「LINEポケオ」だ。両サービスを合わせたグルメ領域の取扱高は前年同期比で34.9%増だ。

LINEのグルメ領域

今後、LINEデリマとLINEポケオは「出前館」ブランドへ統合されていく。

出典:LINE

一方で、コロナの悪影響を受けているのが、ショッピング領域とトラベル領域。

ショッピング領域の取扱高は前年同期比で20.1%減。これはLINEポイントを用いた実店舗への送客サービス「SHOPPING GO」の終了(8月末)による。

SHOPPING GOの終了自体は新型コロナが「直接的な原因ではない」(LINE広報、7月27日取材)としているが、同サービスがコロナ禍の外出自粛の影響を大きく受けていたのは明らかだ。

SHOPPING GOの終了

ポイントの2重・3重取りができた「SHOPPING GO」は8月末で終了した。

撮影:小林優多郎

また、トラベル領域の「LINEトラベル」「おでかけNOW」については、取扱高が2020年第2四半期で前年同期比81.2%減と大打撃を受けていたが、第3四半期では44.7%減とやや持ち直している。

これについては、容易に予想できるように7月22日(東京発着分は10月1日)から始まった「Go To トラベル」キャンペーンによる、旅行客の増加によるものだ。

LINE広報はその事実を認めつつ「コロナ前に比べると回復しきったとは言えませんが、底は脱出したと考えております」とコメントしている。

LINE Pay「ユーザー減少も取扱高は60.1%増」はクーポン効果?

スライド LINE Pay

LINE Payのグローバル取扱高とグローバルMAU。

出典:LINE

最後に、コロナ禍前から競合他社としのぎを削っているキャッシュレス決済「LINE Pay」についても興味深い数値が出ている。

LINE Payの2020年第3四半期の国内月間アクティブユーザーは263万人と第2四半期と比べるとほぼ横ばい、前年同期比で約23万人減となっている(グローバル全体では前年同期比1.8%増)。

一方で、グローバル取扱高は前年同期比60.1%増となる4590億円を達成している。

特典クーポン

ユーザーの「LINEポイントクラブ」のランクによってもらえるクーポンの枚数が異なる「特典クーポン」。

撮影:小林優多郎

なぜ、利用者数はほぼ変わらないのに、取扱高は増えているのか。

LINEは資料で「(クーポンなどの施策で)1決済あたりの単価が上昇したため」としており、5月から開始されたLINE Pay加盟店で使える「特典クーポン」が功を奏している。

また、LINE広報は「グローバル全体(とくに日本・台湾)でキャッシュレス決済のニーズが高まっている」「オンライン決済でのLINE Payの活用も増えている」とも語る。

Visa LINE Payカードの影響

特典クーポンの一例

量販店のECサイト「ビックカメラ.com」で、ビックカメラ向け特典クーポンを使用した例。家電など高価な買い物もかなりおトクになる。

スクリーンショット:小林優多郎

もちろん4月23日から一般向け申込が始まった初年度3%還元の「Visa LINE Payカード」の影響もある。

取扱高にVisa LINE Payカードのカード決済は含まれていないが、Visa LINE Payカードを受け皿にしたLINE Payの「チャージ&ペイ」による決済は「増加している」(LINE広報)とのこと。

特典クーポンによる数%の割引とチャージ&ペイによる最大3%のポイント還元をうまく活用しているユーザーが増えているようだ。

これでは2018年後半〜2019年前半にあったキャッシュレス決済アプリ黎明期における、還元合戦に近いものを感じるかもしれない。

だが、実際のところ今期のLINE事業全体のマーケティング費用は前年同期比75%増の約49億円と増加傾向にあるが、同社はかつて2019年第2四半期にLINE Pay単体のマーケティング費用として約97億円を計上しており、それに比べれば「効率的に販促をしている」とも言える。

今後、2021年3月以降に予定されているZホールディングスとの経営統合までに、この数値がどのように変わってくるか注目していきたい。

(文、撮影・小林優多郎

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