「株主優待トミカを手に入れるレクチャーをして欲しい」とインターネットで公募した話

bosyu

筆者Twitter投稿のスクリーンショット

やろうやろうと頭の片隅で思っていても、なかなか重い腰が上がらない —— みなさんにも経験があるのではないだろうか。そんな時のライフハックとして提唱したいことがある。

ずばり、「とりあえず手伝ってくれる人を募集する」である。

5年間上がらなかった重い腰、株式購入

話は2020年4月にさかのぼる。私はパソコンの前で腕組みをしながら、タカラトミーのWEBサイトを見つめていた。目線の先には「トヨタ GR スープラをかたどった車のおもちゃ」と、「2019年3月31日現在の当社株主名簿に基づき、100株以上保有の国内の株主様に株主優待をお送りいたします」の文字。

そう、タカラトミーの株主優待ページである。

結論から言うと、私はこの株主優待トミカが欲しかった。が、そこには大きな問題があった。

単元株の買い方がわからないのである。

20代後半にもなって株の一つも買えないのか、というお言葉はごもっともとして、これまで家庭の資産運用は夫に一任していたのだ。

学ばなければとは思いつつも、インターネットで「資産運用 ノウハウ」と調べて出てくるのは何やら複雑な仕組みばかり、「また今度にしよう」とパソコンを閉じて、いつの間にやら社会人になって5年が経過していた。

しかし今回は違う。なぜ株主優待トミカが欲しいのか、それはひとえに愛する息子のためである。

車輪をこよなく愛する2歳の息子は、トミカをプレゼントすると「くるま!」と叫んで輝かんばかりの笑顔を見せてくれる。店舗で売っていない特別なトミカをプレゼントしたらどんなにか喜ぶだろう。目に浮かぶようだ。

5年間、頑なに上がらなかったこの重い重い腰も、息子のためなら話が別。私は意を決してパソコンを開き、そのままTwitterを開いて、つぶやいた。

株主優待トミカをもらうまでのレクチャーしてくれる人!

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タカラトミーHPより

結局自分で調べないんかい、というお言葉はごもっともである。ごもっともだが、いきなり投資と言うのは初心者にはやはりハードルが高い。

詳しい人に詳細な説明を受けたところで、重い腰がさらに重くなり、そっと静かに座るのが目に見えていた。今回の場合、利回りを出したいわけではなく、単純に購入の手順を知りたいだけということもあり、さくっとSNSで募集するのがベストだという判断に至った。

宣伝のために使用したSNSはTwitter、金銭やメッセージのやりとりはbosyuという、その名の通り「なんでも募集できる」WEBサービスで行った。

Twitterを使用したのは、そもそも私はTwitterのヘビーユーザーで、毎日息を吐くようにツイートしているからだ。

bosyuは筆者の勤務先サービスであるが、一個人としてもオススメである。Twitterと相性の良いサービスで、Twitterのアカウントがあれば利用できる上、募集・金銭のやりとり・メッセージのやりとりが匿名で行える。今回のようにお金を払って依頼したい場合にぴったりだと判断した。

いざbosyuしてみると……

驚くことに、ものの数分でレクチャーしてくれる人が見つかる。チャット上でやりとりを行い、平日のランチタイムに1時間ほど、オンラインで相談をする段取りに。

ちなみに、通話に使用したのはオンライン通話サービスのZoom。URLを発行するだけで連絡先交換を行わずに通話できる。

匿名でのやりとり、オンライン通話でのレクチャー、1時間強の相談で2000円、専門的でなくともよく、「株主優待トミカを受け取れる株を買うまで」を手助けしてくれればいい ——。

この条件で快く相談を受けてくれたのはNさん、東京都在住の20代男性だった。

金額と時間を決めて相談開始

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Shutterstock/show999

Nさんはプロの投資家というわけではなく、数年ほど株の売買を行っている社会人だ。常日頃から「株式売買はさほど難しいものではないし、学生や主婦、新社会人なども気軽にやってみたらいいのに」という思いを抱いていたところ、偶然Twitterの投稿を目にしたとのこと。

専門職ではないものの、タカラトミーの単元株を購入するくらいなら、ということでレクチャーを引き受けてくれたそうだ。

私とNさんに事前の面識はなく、オンライン相談の場が初めての会話であったが、当日の会話は驚くほど非常にスムーズに進んだ。事前に時間とお金、要望とゴールを取り決めていたため、余分な前置きをすることなく、本題から入れたのが大きかったように思う。

「お恥ずかしいのですが、初歩の初歩から教えて欲しいのですが……」と話すと、いいですよと言いつつ、勧めてくれたのはSMBC日興証券の『日興フロッギー』だった。

日興フロッギーは「記事から株が買える」ことをコンセプトにした投資サービスで、ゆるく可愛いイラストと読みやすい文体のさまざまな記事が掲載されている。投資に関する知識のインプットと、その記事から直接関連の銘柄を購入できる気楽さが「おすすめ」なのだという。

「応援したい企業をサポートしてちょっとしたお礼」

仮面女子

日興フロッギーが手がける「仮面投資女子」シリーズ。

出典:日興フロッギー

特にNさんが勧めてくれたのは、その中の「仮面投資女子」という記事のシリーズ。

一見すると投資サービスとは思えないほど軽妙な文章の連載で、20〜30代の若い女性の投資を主題に、さまざまな事例を紹介している。

「『投資』という言葉だけだと、いろいろな方法、目的、ルールがあって複雑に感じてしまうと思うんですよね。株に限って考えると、そもそも『短期で売買を繰り返して利益を出すもの』というより、『応援したい企業をサポートして、利益があればちょっとしたお礼をもらう』くらいのごくシンプルなものなんです」

とNさん。

「今回は特定銘柄を買うことが決まっているのと、利回りが主目的でないこと、優待を目的とした長期保有を前提とされていることを考えると、どこで買ってもそんなに差はないと思います。

特にこだわりがないのであれば、同年代の女性の事例が多く載っているサービスですし、そこから口座開設も購入もできるので、参考になると思いますよ」と言いながら、いくつかおすすめの記事をピックアップしてくれた。

  • 一通り勧められた記事に目を通しつつ、質問を挟みながら学んでいく。タカラトミーの株主優待を受け取りたい場合、指定された日付に100株を保有していなければならないこと。
  • これはいわゆる単元株と呼ばれるもので、通常の株式取引で売買される単位であること。銘柄によって「単元」とされる数は異なること。
  • 近年は0.9株などの端数単位で購入できる投資サービスも増えてきたが、多くの株主優待は基本的に単元株保有者を前提としていること。
  • タカラトミーの株式は購入時点で1株800円後半だったため、9万円程度の余剰な現金資産があれば、今時点で単元株を購入できること。

自分一人では腰の上がらなかった基礎知識のインプットは、相手がいる状況で驚くほどスムーズに進んだ。

その日は口座の申し込みを行うところまで、購入は手続き完了後という運びになり、後日無事、タカラトミーの単元株を保有するに至ったのだ。

小さなハードルを誰かと一緒に飛び越えるということ

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「小さなハードルを誰かと一緒に跳び越える」ことで良いスタートを切れるかもしれない。

Shutterstock/Sorbis

株式購入の勉強を渋ること5年間。始めてみればなんのことはない、手続きは1時間もあれば終わるもので、理解もさほど難しいものではなかった。

これまで、一人で勉強をしなければ、損をしないようにしなければと、自分で自分に高いハードルを設定しすぎていたのかもしれない

ちなみに今のところ利回り8%なので、長期保有を前提としているとはいえ、初めての購入にしてはまずまずの成功というところだろう。

「株主優待トミカを手に入れたいので、2000円で1時間レクチャーして欲しい」という小さな目標は、私にとって始めやすいものだった。そしておそらく、Nさんにとってもサポートしやすいものだったに違いない。

例えばこれが「投資で1000万円の利回りを出したいので、100万円で1カ月レクチャーをして欲しい」だったとすると、Nさんは引き受けてくれなかったのではないだろうか。

小さなハードルを設定し、それくらいなら一緒に跳び越えますよという人を広く募集してみることで、見えてくる世界がある。

もし皆さんに、やろうやろうと思って数年間始めていないことがあるのであれば、一つの手段として「小さなハードルを一緒に飛び越えてくれる人を募集する」という始め方もあることをお伝えできればと思う。

(文・伊美沙智穂)


伊美沙智穂:1993年生まれ。立教大学卒業、株式会社NTTドコモの法人営業部を経て、現在は株式会社Caster・株式会社bosyuのUIデザイナー、Business Insider Japanライターのほか、個人でもWEBメディアを運営するフルリモート・パラレルワーカー。1児の母。新しい仕組みやテクノロジーが大好きで、育児や家事、仕事など、積極的に生活に取り入れている実体験を元に記事を書きます。

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