口コミサイト「Retty」上場、コロナ禍でも「勝負」に出た理由

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東京証券取引場で記者会見を開いたRetty社長の武田和也氏。

撮影:横山耕太郎

口コミグルメサービス「Retty」は2020年10月30日、東証マザーズに上場した。

上場時の公開価格1180円に対し、初値は1611円をつけた。時価総額は187億6000万円(10月30日午後3時)となった。

コロナショックで飲食店が大打撃を受けるなか、なぜ今の上場なのか?

特徴は「実名」の口コミ

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Rettyでは点数による評価ではなく、個人名でのコメントが並んでいる。

RettyのHPを編集部キャプチャ

Rettyは2011年にサービスをスタート。他の口コミサービス「食べログ」などとの大きな違いは、実名型という点だ。

実名のユーザーが店舗について紹介し、点数評価も行わない。

Rettyの武田和也社長は記者会見でこう語る。

「誰が評価しているのか分かることを重要視しています。匿名ではなく、この人がオススメなら行ってみようというのがRettyのサービスです」

サービス開始後は順調にユーザーを増やし、2013年に100万人、2015万には1000万人を突破。2020年8月時点のユーザーは4393 万人に成長している。

ただし、順調に成長してきたRettyでも、コロナの影響は大きかったと言える。

上場に合わせて公表した2020年9月期の業績見通しによると、休業飲食店に対する月額利用料免除施策などの影響もあり、通期の売上高22億1300万円(前年比率2.4%減)、最終損失は3億3200万円の赤字(前年は1億5500万円の黒字)となる見込み。

食べログ、ぐるなびも……コロナ苦戦する口コミサイト

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出典:Retty成⻑可能性に関する説明資料

2019年度は月に平均476店舗が、新たに有料サービスの新規契約をしていたが、コロナ後に契約数は激減。6月は解約が相次ぎ、有料サービスの利用店舗は811件減少した。

他の大手口コミサイトも苦戦した。

月間のユニークユーザーが5600万人のぐるなびが発表した2020年4~9月期の連結決算によると、最終損益は54億円の赤字。

国内の大手口コミグルメサイト「食べログ」(月間利用者数9283万⼈)を運営するカカクコムの決算資料(2020年4月〜6月)によると、食べログの売り上げは前年比72%減の17億3500万円だった。

「Go To Eat」も追い風に

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出典:Retty成⻑可能性に関する説明資料

ではRettyはなぜ、この、飲食業界を取り巻く環境が、これほどまでに厳しいタイミングで上場するのか?

背景には利用者数の回復がある。

「広告単価はまだ回復していないものの、8月の利用者数は昨年比104%まで回復しました。コロナ直後は飲食店の閉店によって、登録飲食店数が減ったものの、有料プランの新規の獲得数は昨年の実績よりも増えています」(武田社長)

Rettyが強気な理由は、コロナ後の回復が早かったことにある。

「2011年のサービス開始以来、口コミを積み重ねることを続けてきました。先行投資がかさむビジネスで、3〜4年は赤字だったものの、2015年から黒字化することできた。

コロナ後7月以降には利用者の回復が見え、今後の成長が見込めると判断し上場を決めた」

政府が10月から始めた「Go To Eat」キャンペーンも追い風になった。

「Go To Eat」キャンペーンでは、Rettyを含めた予約サイトを利用する必要があるため、口コミサイトに人が集まる状況が続いている。

ただRettyでは口コミ・予約サイトでは一般的な、予約手数料を徴収していない

その理由について武田氏は、こう説明する。

「中長期的に飲食店が復活することが大事だと考えています。そのために私たちができることが、手数料無料。飲食店が回復し、一緒になって成長できればと思っています」

成長のカギは店舗への課金サービス

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出典:Retty成⻑可能性に関する説明資料

Rettyが今後、成長のカギとみているのが、月額で飲食店に課金する集客支援サービス(FRM)だ。

飲食店がこのサービスを利用すると、Retty上で予約が可能になるほか、ユーザーにメッセージを送るなどの「リピーター対策」も可能になる。

また「恵比寿 イタリアン」などと検索した場合に、課金サービスの利用店は、より上位に表示されやすくなるなどのSEO対策も行う。

武田氏は「新規のお客さんの獲得から、リピート対策まで一気通貫で行える。後方支援するというコンセプトが評価され、顧客を増やしてきた」と自負する。

Rettyでは新規サービスとして、テイクアウトの予約ができる機能を開始。

また店内のQRコードを読み込んで非接触でオーダーや決済ができる「モバイルオーダー」支援も事業化するという。

現在、Rettyの収益減は企業広告が約4割で、集客支援サービスの月額課金が約6割。

コロナによって生まれたデジタル化の需要を取り込み、広告に頼らない基盤作りを進めたいとしている。

有料サービス「まずは5万店舗目指す」

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撮影:横山耕太郎

「日本の飲食店は70万店舗ありますが、現状の有料サービス利用店は約1万店のみ。

他社サービスを利用している店舗をターゲットに、まずは5万店舗を狙いたい」(武田氏)

順調に成長を続けてきたRettyだが、新規事業に挙げた飲食店のデジタル化は、多くの競合もあり、収益源に育てられるかは未知数だ。

「Go To Eat」キャンペーンが終わった後、口コミサイトがどう生き残っていくのかが、注目される。

(文・横山耕太郎

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