[更新]JALの通期業績は最大2700億円赤字の見通し……「止血」は1900億円規模に拡大

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日本航空(JAL)は10月30日、2021年3月期第2四半期決算を発表。通期業績見通しについて、純損失2400億円〜2700億円になる見込みを発表した。

10月27日に決算発表したANAホールディングスが、通期見通しで純損失5100億円の巨額赤字の見込みを公表したことに続き、新型コロナに打撃を受けた航空業界の窮状が浮き彫りになった。

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通期業績予想をまとめたページ。旅客収入予想では、国際線が非常に厳しい状況。止血策を踏まえた上で、純損失は2400〜2700億円になる見通しだ。

出典:日本航空

1900億円の止血に走るJAL

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出典:日本航空

決算資料でJALが、いわゆる「止血策」として挙げるのは、「コスト削減」と「投資抑制」だ。

コスト削減については、前回決算での見通し900億円削減から、さらに100億円を積み増す形で、1000億円の削減を目指す。この原資は、おもに「人件費(役員報酬・賞与減額など)」と、「広告費用」などからなる。

投資抑制については、おもに航空機への投資を半減させる。こちらも同様に前回見通しから100億円積み増して、2020年度通期で900億円の抑制を目指す。止血の規模は、合計で1900億円におよぶ計算だ。

人件費も含めた抜本的なコスト対策の一方で、世界と物流・人をつなぐインフラである航空大手で働く社員の雇用をいかに守るかも重要な課題だ。

これについては同日、決算発表したKDDIの髙橋誠社長は、会見の中で「(従業員の受け入れについては)ANA、JAL両者から要請を受けており、パートナー企業として受け入れる方針」と言及している。

JAL広報によると、KDDIとは日頃から人材育成などで交流があり、通常の意見交換のなかで、JAL従業員受け入れについての検討が始まったという。

従業員の受け入れについてはKDDI以外にも、物流大手のヤマトホールディングス、官公庁、教育機関などで、1日あたり500人規模の現場社員が、出向や派遣、業務委託で働き始めているという。現場社員は、客室乗務員、地上係員などを含む。この他にも出向先を検討している。

需要はいつ回復はするのか?

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出典:日本航空

JALは、今後の旅客需要について、図のような回復曲線を想定している。

国内線の回復が先行し、続いて国際線が続くという見立てだが、現時点で2019年度比で50%程度の回復をしている国内線に比べて、国際線の立ち上がりは遅い。国際線におけるワーストケースでは、2022年1月時点でも50%程度の回復にとどまるなど、厳しい状況だ。

また国内線については、Go Toキャンペーンなどをはじめとする国内施策による支援策も得やすいが、国際線については、渡航先の感染拡大状況次第の部分が多く、見通しは不透明と言わざるを得ない。

需要そのものがない、需要があっても入国制限などで人が動きづらいといった国際線の状況が続くなかで、航空大手に立ち込める暗雲は濃くなるばかりだ。

(文・伊藤有)

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