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「大阪都構想」とは、結局何だったのか——「反対」多数も差はわずか1.26%。公明協力も覆せず、松井市長は2023年政界引退へ

松井一郎大阪市長(左)と吉村洋文大阪府知事

松井一郎大阪市長(左)と吉村洋文大阪府知事

REUTERS,Getty Images

大阪市の廃止と東京23区のような特別区を設置する「大阪都構想」の賛成・反対を問う住民投票が11月1日に実施され、「反対」が多数となった。

これにより地域政党「大阪維新の会」が結党以来掲げてきた「大阪都構想」の看板は、5年前の住民投票に続いて再び廃案に。政令指定都市「大阪市」が、今後も存続することになる。

「令和2年11月1日執行 大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票の開票結果 確定」

「令和2年11月1日執行 大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票の開票結果 確定」

出典:大阪市

開票の結果、賛成が67万5829票(49.37%)反対が69万2996票(50.63%)。投票率は62.35%。前回より4.48ポイント低下した。

賛成・反対の票差は、「反対」が1万7000票あまり上回ったが、割合で見るとその差はわずか1.26%。最後の最後まで賛否は拮抗した。

住民投票の直前には、大阪市財政局が「市を4つに分割した場合、毎年度の行政コストが約218億円増える」と試算したが、わずか数日で市財政局長は「誤った考えに基づいた試算だった」として撤回した。この試算は毎日新聞などが報じており、一部で反対派も運動で使用。投票直前に波紋を広げた。

「都構想」住民投票で、何が問われたのか?

大阪市のパンフレット『「特別区設置協定書」について』

大阪市のパンフレット『「特別区設置協定書」について』

出典:大阪市

今回の「都構想」で、賛成派(維新、公明)は「二重行政の打破」を掲げた。

成長戦略や観光政策、水道など府と市でバッティングする行政サービスについて、成長戦略などは府が一元化し、保健・社会福祉・教育などの住民サービスは特別区が担うことを目指し、住民投票の実施に踏み切った。

一方、自民の大阪市議団や立憲、共産などの反対派は、都構想に関連する財源を懸念した。大阪市の廃止により市財源の70%が新たに設置が想定された特別区に配分されることになっていたが、反対派は財政規模が縮小することや特別区設置に関わるコストの増加を問題視した。

これに対し賛成派は、大阪メトロの株式配当などの恩恵もあり赤字にならないと訴えたが、反対派は新型コロナ前の試算では信憑性が低いとして、意見が対立した。

結果的に「反対」が多数となったが、有権者の賛否が拮抗したことは事実だ。賛成派に票を投じた人が抱く府政・市政への課題意識をいかに汲み取れるかも、今後問われることになるだろう。

松井市長、2023年に政界引退へ。吉村知事「僕自身が都構想に挑戦することはない」

記者会見する松井一郎大阪市長(左)と吉村洋文大阪府知事

記者会見する松井一郎大阪市長(左)と吉村洋文大阪府知事

YouTube/大阪維新の会

大勢判明後の1日午後11時ごろ、松井一郎・大阪市長(大阪維新の会代表)と吉村洋文・大阪府知事(大阪維新の会代表代行)は揃って記者会見に臨んだ。

松井氏は「僕の力不足」とし、2023年までの市長の残り任期をもって政界を引退すると明かした。

吉村氏は「僕自身、都構想が大阪の成長には絶対に必要だという思いでやってきた」と繰り返し強調。「僕たちの都構想が間違っていたということだろう」として「僕自身が(再び)大阪都構想に政治家として挑戦することはありません」と述べたが、今後の進退は明言しなかった。その一方で、府・市一体の成長戦略の必要性を改めて訴えた。

会見後、松井氏と吉村氏がそれぞれTwitterを更新。松井氏は「皆さん、本当にありがとうございました。感謝感謝感謝です」と投稿した。

吉村氏は「応援して頂いた全ての皆様、心からありがとうございます。皆様の支えがあってここまでやれました。自分の力は出し切りましたが、結果は及ばずでした。全ては僕の力不足です。申し訳ありませんでした。また、悩んで反対に投じた方も多くおられたと思います。全ての大阪市民の皆様に感謝申し上げます」とつづった。

「タブル選」で松井市長・吉村府知事が当選→住民投票では再び敗北

橋下徹氏(2013年7月)

橋下徹氏(2013年7月)

Buddhika Weerasinghe/Getty Images

5年前の住民投票では当時の橋下徹・大阪市長が政界引退へと追い込まれたが、2019年4月の大阪府知事・市長選の「タブル選」では、吉村氏と松井氏が府知事と市長を互いに鞍替えして立候補し、当選を果たした。これによって再び住民投票に向けた「民意」が示されたとし、都構想の実現に向けてアクセルを踏んだ。

ところが今回も「反対」が多数となり、今度は松井市長が政界引退に追い込まれることになった。1年以内にある衆院総選挙を控え、国政政党「日本維新の会」の趨勢にも影響を与える可能性があり、組織の立て直しも迫られることになりそうだ。

日本維新の会の馬場伸幸幹事長(大阪維新の会副代表)は、大勢判明前の読売テレビのインタビューに対し、仮に住民投票で否決されたとしても「(3度目は)選択肢として全くないわけではない」「一つの選択肢として(内部で)議論する」などと述べていた。

「賛成」に転じた公明党、支持者も賛否割れる。

前回の住民投票で「反対」だった公明党は、今回は党の意見が採用されたとして「賛成」に転じた。松井市長が「多大なるご支援」と評したように、山口那津男代表も大阪入り。松井市長らと共に街頭演説に立った。

ただ、朝日新聞によると公明支持者の半数以上が「反対」の意を示した。来年の都議選や衆院総選挙を前に、党内や支持組織の政治的な基盤の弱体化を懸念する向きもある。

(文・吉川慧

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