コロナ禍のオフィスに新しい価値? 世界的なソフトウエア会社の従業員たちは、本部を"農場"にした

畑

ゾーホー本部の畑(一部)。

Zoho

  • 世界的なソフトウエア会社ゾーホー(Zoho)は、アメリカのテキサス州オースティン郊外に広さ360エーカー(約1.5平方キロメートル)の土地を購入した。現地の従業員150人のための新たな本部を建設する計画だった。
  • ところが、ゾーホーの従業員たちは2月に土地を見に行った際、全く違うことをしようと決めた。農場だ。
  • それ以降、ゾーホーの従業員たちはメロンやピーマン、ルッコラなどを作っている。果物の木も育てていて、敷地内にある古いファームハウスは従業員のワークスペースとして修理している。
  • 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で従業員がオフィスから遠ざかる中、ゾーホーのPRコンテンツの責任者ミッキー・スタンリー(Mickey Stanley)氏はしばしば、ポーチから仕事をしているとBusiness Insiderに語った。「誰が来るか、全く分かりません」とスタンリー氏は言う。
  • ゾーホーのチーフ・エバンジェリスト、ラジュ・べジェスナ(Raju Vegesna)氏は、農場がテック企業の従来型の特典に取って代わりつつあるとBusiness Insiderに語った。「一般的なオフィスだと軽食コーナーがありますが、木から直接摘み取れる新鮮な果物があるなら、それに越したことはありません」とべジェスナ氏は言う。

テキサス州トラヴィス郡の外れには、放牧牛がいて、古いファームハウスがあって、完全な農場として機能しようとしている広さ360エーカーの土地がある。

そうは見えないかもしれないが、ここは従業員8000人以上の世界的なソフトウエア会社ゾーホーのアメリカ本部だ。

2019年4月、ゾーホーはオースティンを拠点とする従業員のために、巨大な新オフィスを建てようとこの土地を購入した。従業員たちはそれまで、オースティン南東部のオフィスパークにある賃貸スペースで仕事をしていた。

ところが、20人あまりの従業員たちがオースティン・バーグストロム国際空港から東に約5マイル(約8キロ)ほど先にあるこの土地を見に行った際、かなりの広さの何もないスペースを見つけた。

そこで彼らは農場を始めることにした。

これが2020年2月、新型コロナウイルスのパンデミックでオフィスを閉鎖せざるを得なくなり、テック企業のトップたちが従業員にリモートワークを許すことになるわずか数週間前のことだった。それ以降、ゾーホーの従業員たちは小さくも豊かな農場を作っている。農場は従業員の食料供給源としての役割を果たすだけでなく、パンデミックのストレスや大きな変化からの息抜きとなっている。

農場を作るという取り組みは非常にうまくいっていて、都会の生活に疑問を感じている従業員向けにインド、メキシコ、日本、カナダなどで地方にオフィスをオープンすることにつながった。

「誰が来るか、全く分かりません」

カボチャ、道具

農場で育てているカボチャと従業員が使用している道具。

Zoho

ゾーホーは1996年、CEOのシュリダー・ベンブ(Sridhar Vembu)氏が立ち上げた。財務、営業、マーケティング向けのアプリやツールといったビジネス用ソフトウエアを手掛けている。インドで創業したゾーホーは現在、日本やオーストラリア、メキシコ、オランダを含む9つの国にオフィスがある。同社は非上場を貫いていて、外部投資を受けたこともない。

アメリカではサンフランシスコのベイエリアにオフィスを置いているものの、アメリカの従業員の半数以上はテキサス州オースティンを拠点としている。これはゾーホーの幹部の1人であるラジュ・べジェスナ氏が荷物をまとめてカリフォルニア州をあとにしたことが大きい。

「約17年にわたってベイエリアで生活していましたが、納得できなくて、一度も家を所有したことはありません」とべジェスナ氏はBusiness Insdierに語った。

「家主を裕福にするために自分が一生懸命働いているような感じがして、家を買ったら家持ち貧乏になるような気がしたんです」

べジェスナ氏はテキサス州に移り、約150人の従業員が現在、ゾーホーのオースティンにあるオフィスで働いている。

パンデミックが続く中、アメリカの従業員たちは現在、リモートで働いていて、当分の間、それは続くだろうとべジェスナ氏は話している。

だが、ゾーホーは大半のテック企業にはないものを持っている。従業員が会い、仕事をし、再びつながるための安全な場所だ。

同社のPRコンテンツの責任者ミッキー・スタンリー氏にとって、農場は在宅勤務の単調さを破る役に立っている。農場には古いファームハウスがあって、同社はぞれをオフィススペースに変えるべく修理中だが、スタンリー氏は差し当たり、ポーチにある椅子に座って仕事をこなしている。

「誰が来るか、全く分かりません」とスタンリー氏はBusiness Insiderに語った。

「オフィスに行っても、あなたが会って話をするのは自分と同じ部門の同じ人でしょう。でも、ここでは誰かがやってきて、あなたの隣に座り、自分の仕事をするかもしれないし、そうでなかったら接点がないような同僚と新しい関係を築くことができるんです」

部門の垣根を取り払う

花、スイカ

従業員たちは農場に花も植えている。スイカも育っている。

Zoho

ゾーホーのこの農場は営利目的ではない。小規模な、従業員が主導する活動で、実験的なものだ。

成長は意図的にゆっくりにしている。種はゾーホーの賃貸オフィスの窓に置かれた小さな箱からスタートし、農場に植えつけられた。従業員たちは3列から始め、その後、畑を2つ作った。かんがい用の水路を引くと、畑を4つに増やし、それぞれに果物や野菜、花を10列植えた。畑の奥にはりんごやレモン、オレンジの木を植えた。

「良いアイデア、悪いアイデアの序列はありません」とスタンリー氏は言う。

「アイデアがあるなら、ここにスペースがあるからやってみようという感じです」

だが、従業員に農業の専門知識はほとんどなかったため、その過程で何度かの"つまづき"もあった。スタンリー氏は、最初に植えたトマトは死んでしまったし、ケールはカブトムシたちにほとんど食べられてしまったと語った。思った以上に育ち過ぎてしまったこともあるという。

「わたしはメロンが大好きなので、カンタロープメロンやいろいろな種類のメロンの苗を手に入れようと決めて、それを植えたらものすごく成長して…… でも、自分の小さな区画が育ち過ぎたつるでいっぱいになっているのに気付き始めたんです」とスタンリー氏は語った。

「恐らく何百という数のメロンがとれたんですが、人はどのくらいの数のメロンが本当に欲しいんでしょうね?」

じっくりと収穫したスイカは、夏の新鮮なサラダに入れたり、アルコール入りのスムージーに使うなどしたという。

作物

収穫して余ったものは、ベンチに置いて同僚に"おすそ分け"している。

Zoho

メロンの他にも、ゾーホーの従業員たちはトウモロコシやルッコラ、ラディッシュ、カボチャ、バジル、モリンガ、柿、「大量の」ピーマンや唐辛子を収穫してきた。

作物をめぐる競争はないとスタンリー氏は言う。従業員たちは農場へ行き、自分たちの作物を収穫し —— 友人や家族は自由に連れてきてOK —— 、欲しくないものがあれば誰かのために畑のそばのベンチに置いておけばいい。ゾーホーでは、従業員が畑でとれた作物で作ったものについて情報をシェアし合える新たなチャンネルをSlackに立ち上げている。農場が大きくなってきたことで、従業員たちは地域の人々と交流する手段として、直売所などを作りたいと考えている。

ゾーホーにとって、農場は他のテック企業の特典に取って代わるものだとべジェスナ氏は語った。

「一般的なオフィスにはジムがあるかもしれません。でも、農場があって、そこでやらなければならないことがあると、ジムはいらないんです。一般的なオフィスには軽食コーナーがありますが、木から直接摘み取れる新鮮な果物があるなら、それに越したことはありません」

スタンリー氏にとって、農場はほぼ学習プロセスだ。だが、より良い働き方の象徴にもなっているという。

「農場のメタファーは、"サイロを壊せ"ですよね? つまり、全ての異なる作物を区分することはできないということです。わたしたちが求めているのは、全てが手入れされ過ぎていない、全てがお互いの成長になるような、こうした緩い学習プロセスです。そして、わたしたちは何がうまくいくのかを経験しています」

[原文:Employees at global software firm Zoho have turned the company's Austin headquarters into a fully functioning farm. It's become a respite during the pandemic, and could serve as a model for a new way of working.

(翻訳、編集:山口佳美)

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