Palatinate Stock・nattul・Jonathan Weiss・Ken Wolter / Shutterstock
- フロリダ州の人口は全米第3位。主に観光と農業が有名だが、コロナ禍の影響もあり、事業拡大を目論むIT企業の間では魅力が高まっている。
- IT企業の集積地として知られるカリフォルニアやニューヨークなどと比べると、フロリダの物価は安い。
- 本稿では、2020年にアマゾン、IBM、オラクル、シスコ、ServiceNowがフロリダ州勤務の新規採用者にいくら支払っているかをまとめた。
- 例えば、この5社の中にはテクニカルソリューションアーキテクトに最高25万4000ドル(約2640万円)、ソフトウェアデベロッパーに最高21万2000ドル(約2200万円)を支払う企業も。詳細をレポートする。
フロリダと言えば屈指の観光地であり、また農業が盛んな土地としても知られる。だがこの通称“サンシャイン・ステート”は、常に名だたるIT企業に注目されてきた州でもある。
過去20年、特に2001年の同時多発テロ事件以降に起きた変化はフロリダ経済に深刻な打撃を与えた——そう見ているのは、フロリダ大学にあるフロリダ工学実験所(Florida Engineering Experiment Station)のエグゼクティブ・ディレクター、エリック・サンダー(Erik Sander)だ。
フロリダ大学
BSPollard/Getty Images
「9.11から学んだことの一つは、フロリダ州は本腰を入れて経済を多様化する必要があるということでした」と、Business Insiderの取材に応じたサンダーは言う。
「フロリダは農業や観光業への依存度がかなり高く、IT産業は比較的小規模だったのですが、9.11で流れが変わりました。フロリダ州もIT産業に真剣に取り組む必要があると気づかされたんです」
フロリダ州の人口は全米第3位。カリフォルニアやニューヨークといった従来のIT企業の集積地と比べると物価は安い。だからアマゾン、IBM、オラクル、シスコ、ServiceNowなどの主要IT企業には魅力的なのだ。
サンダーによると、コロナ禍とリモートワークへの急激な移行により、フロリダに事業拠点を置くメリットは今後さらに増す可能性があるという。
「大半の仕事がリモートでもできると業界全体が気づきましたからね。この動きはフロリダ州にとってはメリットでしょう」とサンダーは言う。「リモート勤務は長引きそうですし、多くの企業が検討していることですから」
Business Insiderは、連邦労働省雇用訓練局外国人雇用証明室が2020年に開示した就労目的の永住者および滞在期限付き外国人労働者に関するデータを分析。先に挙げた5社がエンジニア、デベロッパー、データサイエンティストなどの主要な役職に就くIT関連人材に、フロリダでどれくらいの給与を支払っているのかを明らかにした。
H1-Bビザ(特殊技能職に適用される就労ビザ)を取って外国人労働者を雇用する際、企業は給与レンジなどの情報を開示するよう求められる。そのため、主要企業の人材に対する予算が分かるのだ。
現金や株式で付与されるボーナスが開示内容に含まれているとは限らないため、報酬総額が不明である点は注意が必要だが、IT企業が社員に実際にいくら支払っているのかを伺い知る、貴重な手がかりと言える。
2020年、あの企業のフロリダ現地採用社員の報酬額は?
アマゾンはエンタープライズエンジニアを14万5000ドルで採用
アマゾンのジェフ・ベゾスCEO。
Andrej Sokolow/picture alliance via Getty Images
フロリダ州の主要都市、マイアミはアマゾンの第2本社(HQ2)の有力候補地の一つだった。最終的にはバージニア州アーリントンが選ばれたが、アマゾンはフロリダ州内でも特に配送業務を拡大させてきた、とフロリダ大学のサンダーは言う。
「フロリダ州内でのアマゾンは存在感を増す一方です」
フロリダ州で承認された就労ビザ9件の情報から、アマゾンが近年フロリダで採用した社員の給与は下記の通り。
- DevOpsコンサルタント:14万7000ドル
- デジタルメディアクリエイティブ開発担当マネジャーⅢ:14万4000ドル
- プロフェッショナルサービスⅡ:15万ドル
- プロフェッショナルサービスⅢ:14万5000ドル
- エンタープライズエンジニアⅢ:14万5000ドル
- グローバルクリニカルマネジャー:15万5000ドル
- オペレーションエンジニアⅠ:8万5000ドル
IBMが採用したシニアアプリケーションデベロッパーの給与は7万9000〜12万ドル。
IBMのアービンド・クリシュナCEO。
提供:IBM
IBMはエンタープライズ向けIT大手として世界的な存在感を誇る。もちろんフロリダでも2020年にH-1Bビザで20人以上を新規採用した。
IBMの本社はニューヨークにあるが、フロリダ大学などの大学と強いつながりを持つことでもよく知られている。
フロリダ州で承認された就労ビザ25件の情報から、IBMが最近フロリダで採用した社員の給与は以下の通り。
- デリバリープロジェクトエグゼクティブ:9万2000〜16万9000ドル
- シニアアプリケーションデベロッパー:7万9000〜12万ドル
- ITアーキテクト:7万5000〜11万6000ドル
- ITスペシャリスト:6万1000〜9万3000ドル
- ソフトウェアエンジニア:6万2000〜8万9000ドル
- シニアソフトウェアデベロッパー:7万8000〜8万1000ドル
- シニアウェブアプリケーションスペシャリスト:7万1000〜7万2000ドル
- シニアアソシエイトシステムエンジニア:6万3000〜6万5000ドル
オラクルが採用したアプリケーションデベロッパーの給与は、11万1000ドル〜19万ドル。
オラクルのサフラ・キャッツCEO。
REUTERS/Joshua Roberts
オラクルはエンタープライズクラウドの分野での存在感を高めようと、積極的な取り組みを始めている。
シリコンバレーに本社を持つオラクルは、エンタープライズソフトウェア市場でこそ首位だが、クラウドではアマゾン、マイクロソフト、グーグルなどの強力なライバルに立ち向かう挑戦者の立場だ。
フロリダ州で承認された就労ビザ31件の情報から、オラクルが最近フロリダで採用した社員の給与は下の通り。
- ソフトウェアデベロッパー:12万9000〜21万2000ドル
- マスタープリンシパルセールスコンサルタント:12万2000〜19万9000ドル
- アプリケーションデベロッパー:11万1000〜19万ドル
- コンサルティングプラクティスマネジャー:15万6000〜18万9000ドル
- シニアセールスコンサルタント:11万4000〜15万7000ドル
- プリンシパルコンサルタント:11万7000〜15万7000ドル
- サイトリライアビリティデペロッパー:12万9000〜15万1000ドル
シスコのテクニカルソリューションアーキテクトの給与は19万8000〜25万4000ドル。
シスコのチャック・ロビンスCEO。
提供:Cisco
シスコはシリコンバレーに拠点を置くエンタープライズ向けネットワーキングシステム大手。他の古参テック大手同様、シスコも急速に台頭するクラウドコンピューティングに適応中だ。クラウドのおかげで、企業はウェブベースのプラットフォームにネットワークを構築できるようになった。
その結果、シスコは「我が社はクラウドにフォーカスしたエンタープライズプレイヤーだ」と自称しやすくなったと同時に、テクニカル人材を増強する必要が生じた。
フロリダ州で承認された就労ビザ6件の情報から、シスコが最近フロリダで採用した社員の給与は下の通り。
- テクニカルソリューションアーキテクト:19万8000〜25万4000ドル
- ビジネスソリューションアーキテクト:17万6000ドル
- グローバルアカウントマネジャー:11万ドル
- パートナーディストリビューションアカウントマネジャー:10万8000ドル
- マーケティングマネジャー:9万4000〜11万2000ドル
ServiceNowが採用したテクニカルサポートオートメーション担当マネジャーの給与は10万7000ドル。
ServiceNowのビル・マクダーモットCEO。
提供:ServiceNow
ServiceNowはクラウド分野の先駆者だ。同社のプラットフォームは大手企業などの事業を支え、ワークフローの自動化や管理に使われている。本社はシリコンバレーで、コロナ禍でも成長し続けている。
フロリダ州で承認された就労ビザ13件の情報から、ServiceNowが最近フロリダで採用した社員の給与は下の通り。
- テクニカルサポートおよびオートメーション担当マネジャー:10万7000ドル
- シニアパフォーマンスサポートエンジニア:8万8000ドル
- テクニカルサポートエンジニア:8万8000ドル
- アソシエイトサポートエンジニア:7万9000ドル
- パフォーマンスサポートエンジニア:7万ドル
- ユーザーエクスペリエンス担当シニアテクニカルサポートエンジニア:7万ドル
- ユーザーエクスペリエンス担当テクニカルサポートエンジニア:7万ドル
(翻訳・カイザー真紀子、編集・野田翔)