大学のキャリアセンターも、コロナ禍で異変が生じている。
撮影:今村拓馬
「就活がうまくいっていない学生のフォローができない」 —— 。
就活支援サービスを運営するディスコでは、全国の大学455校のキャリアセンターを対象にアンケートを実施。7割以上が「就活状況の把握が困難」と感じているなど、大学が行うキャリアサポートの難しさが浮き彫りになった。
企業の採用意欲、6割が「低下」感じる
2021年卒の就活生は、「内定状況」が急激に悪化している。
出典:ディスコ『大学の就職・キャリア支援活動に関する調査』
「キャリタス就活」を運営するディスコでは、2020年9月1日から9月25日、大学の就職・キャリア支援担当部署にアンケート調査を実施し、全国の国公立立大学101校、私立大学354校が回答した。
アンケート結果からは、大学のキャリアセンターが把握している内定状況が、急激に悪化していることが分かる。
アンケートでは、前年度と比較した内定状況を質問。2017年以降は「高まっている」「変わらない」が約9割を占め、企業の採用意欲が高止まりしている状況だったが、2021年卒では状況が一変。
2021年卒では「高まっている」はわずか1%で「変わらない」も19%と激減し、内定状況が「低下している」は64%に急増した。
新卒採用市場についても、2020年卒は約9割が「売り手市場だと思う」と回答していたが、2021年卒に関しては、売り手市場と感じているキャリアセンターは、2割にまで減った。
4校に1校「個別の面談数を制限」
キャリアセンターが開催するイベントも中止が相次いだ。
出典:ディスコ『大学の就職・キャリア支援活動に関する調査』
大学のキャリアセンターの就職支援にも、新型コロナが大きく影響している。
「2021卒の就職支援の課題」について、複数回答で聞いたところ、「学生の就活状況の把握が困難」が75%で最も多く、「学内企業説明会の注意による出会いの機会喪失」(70%)、「キャリアセンターからの情報発信手段が限られる」(55%)だった。
また「個別面談人数の制限」は26%で、4校に1校に上った。
「孤立した就活になりやすい」
キャリアセンターでは、例年に比べて就活生のフォローが十分にできていないのが実態だ。
撮影:今村拓馬
キャリアセンターからは、「十分な相談体制が築けていない」という声が上がった。
・個別相談、カウンセリングもオンラインでは手続きが煩雑で、学生も気軽にキャリアセンターを訪問するという感覚ではなく、相談件数が減少している(私立大学)
・オンラインのため、こちらの熱意が伝わりにくく、学生の温度感がつかめないという状況(私立大学)
・学生へあらゆる手段で連絡するもつながらず、どのように接点を作るべきか課題としている(私立大学)
コロナ禍で例年とは違う就活を迫られ、本来サポートが必要とされている、就活がうまくいかない学生へのフォローが機能していない現実もある。
・学生生活がオンライン中心になり、孤立した就職活動になりやすい(公立大)
・対面での相談件数が減少しているので、就職活動がうまくいっていない学生のフォローがしにくい(私立大学)
企業側からのアプローチも減少
2022年卒の就活生を対象にしたイベントに関しては、企業側の動きが見えない状況が続く。
出典:ディスコ『大学の就職・キャリア支援活動に関する調査』
これから就活が本格化する2022年卒(現在の大学3年生)に対し、企業からのアプローチも減っているという。
前年に比べ、7割のキャリアセンターが「オンラインを含めて企業の来訪数が減った」と感じている。
また、「3月以降の学内企業説明会への参加意向」については、「わからない」が約6割に上り、企業側の動きが見えていない状況が続いている。
新型ウイルスによる採用環境の悪化を予想し、就活生の危機感も高まっている。
キャリアセンターが感じている「前年度と比べた就職に対する学生の意識」については、「意識が高くなった」は21%から33%と10ポイント以上増加。
「コロナによる就職環境の悪化を懸念し、早くから動き出す学生が増えているように感じる(私立大学)」という声があったほか、2021年卒と比べ、インターンシップの参加数やキャリアセンターへの相談件数も増えているという。
キャリアセンターへの調査を行ったキャリタスの担当者はこう話す。
「学生との接点が減り、就活生の状況の把握が難しくなっています。各大学のキャリアセンターは、イベントのオンライン化など、コロナ禍での就活への対応を進める必要があると言えます」
コロナ禍の就活生をどうサポートするか。アンケート調査では、コロナ禍でのオンライン就活に、十分にキャリアセンターが対応できていない実態も明らかになった。
しかし、就活生が厳しい雇用環境に置かれているからこそ、キャリアセンターが果たすべき役割が求められている。
(文・横山耕太郎)