香港で新疆ウイグル自治区の人権問題に関して抗議する人々。
REUTERS/Lucy Nicholson
- TikTokのある幹部が中国に批判的なコンテンツを検閲していたことを認めた。
- TikTokのイギリス公共ポリシーの責任者であるエリザベス・カンターは、11月4日、ウイグル人の強制労働に関するイギリス議会の公聴会で検閲していたことを認めた。
- この動画共有アプリが中国政府に批判的なコンテンツを検閲しているかどうかを尋ねられたカンターは、以前はそうだったが、今はそうではないと答えた。
- 検閲は、中国のウイグル人イスラム教徒の窮状に関する内容にまで及んだという。
TikTokのある幹部は、この動画共有アプリが過去に中国を怒らせる可能性のあるコンテンツを検閲していたことを認めたが、現在はそうではないと主張している。
11月4日のイギリス議会委員会の公聴会で、TikTokのイギリス公共ポリシーの責任者であるエリザベス・カンター(Elizabeth Kanter)は、保守党議員ヌスラト・ガーニ(Nusrat Ghani )から、アプリが新疆ウイグル自治区の状況についてのコンテンツを削除したかどうか尋ねられた。そこでは、少なくとも100万人のウイグルのイスラム教徒と他の少数民族がいわゆる「再教育キャンプ」に拘禁されているという。
カンターによると、現在のポリシーではコンテンツを検閲することはないが、以前は必ずしもそうではなかったという。
「TikTokの初期には『鈍器(blunt instrument)』と呼ばれるコンテンツの検閲方法がいくつかあった」と彼女は述べた。
「その時、我々はプラットフォーム上での紛争を許可しないという決定をしたので、特にウイグルの状況に関して、プラットフォーム上でコンテンツが許可されないという事案がいくつかあった」
「現在は、TikTokで『ウイグル』という言葉を検索すれば、関連するたくさんのコンテンツを見つけることができる。中国に批判的なコンテンツもたくさんある」
「我々は、中国に有利になるような方法でコンテンツを検閲したり、規制したりはしない。数年前まではコンテンツ管理のガイドラインがあったとは確かだが、今のポリシーはまったくそうではない」と彼女は述べた。その方針がいつ変更されたのかをガーニに聞かれると、カンターの答えは曖昧だった。「少なくとも1年以上前から我々のポリシーにはなかった」と彼女は述べた。
ガーニは、彼女の主張を検証できるように、TikTokが「アルゴリズム検閲レビュー」に応じるかを尋ねた。「あなたを我々のトランスパレンシー(透明性)センターに招待し、アルゴリズムをレビューしてもらうことができる」とカンターは答えた。
2019年9月、ガーディアン紙はTikTokのガイドラインの詳細をリークした文書を入手し、「あらゆる国の政策や社会的ルールに対する批判や攻撃」を禁止し、削除すべきコンテンツの例としてチベットと天安門事件を挙げていた。TikTokの当時の反応は、問題のガイドラインは時代遅れで、2019年に廃止されたというものだった。
中国の企業、バイトダンス(ByteDance)が所有するTikTokは、中国政府との関係を怪しまれることから中国と距離を置こうと努めている。
TikTokは、8月にアメリカのトランプ政権が、安全保障上の懸念を理由にアメリカの事業を売却しない限り、同アプリを禁止すると宣言したことが大きく報道された。TikTokはこの動きを政治的な動機によるものだと非難し、中国とデータを共有していないと反論した。
TikTokアプリ自体は中国では提供されておらず、Douyinという姉妹アプリがあるだけだ。カンターは証言の中で、TikTokの企業構造は、同社が中国のデータに関する法律に従っていないことを意味すると述べた。
彼女は「中国で事業を行っていないTikTokは、中国当局にデータを提供することはない」と述べ、アメリカのサーバに格納されて、シンガポールでバックアップされてTikTokのデータに対して中国は「管轄権がない」と付け加えた。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)