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- この記事はインサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「所得階層別に見た消費者行動(Gauging Consumers Across Income Brackets)」のプレビュー版。レポート完全版(有料)はこちらから
アメリカはこれまでも多くの不況をくぐり抜けてきた。だが、消費者が何週間にもわたり家に閉じ込められ、たまの外出時にも店に入るのに不安を感じるという現象は、これまでなかった。前代未聞のこの状況下で、人々はどのような消費行動をとっているのだろうか? 所得階層ごとに比較すると、その振る舞いには共通する部分もあれば、違いもある。
経済的打撃を受けたのは「低所得者層」
「コロナ禍で高額出費の予定を変えたかどうか」を尋ね、所得階層ごとに集計。赤「取りやめ」、黒「延期」、淡灰色「予定とは別のものを購入・レンタル」濃灰色「変更なし(買う予定がなかった)」青「変更なし(購入)」
eMarketer
「最も大きな経済的打撃を受けているのは低所得者層で、支出額を最も減らしているのは高所得者層だ。多くのお金を使う高所得者ほど節約できる金額も大きい」
インサイダー・インテリジェンスが発行する調査レポート「所得階層別に見た消費者行動(Gauging Consumers Across Income Brackets)」を執筆したeMarketerのプリンシパル・アナリスト、マーク・ドリバー(Mark Dolliver)は上記のように述べている。
また、パーバード大学の研究プロジェクトOpportunity Insightsによると、1〜5月のクレジットカード利用額の減少の3分の2が、所得上位25%の世帯によるものだという。
低所得者層による消費は3〜4月には大幅減となったが、給付金の効果もあり(一時的にせよ)持ち直しており、8月末は1月に比べ1.1%高かった。高所得者層の消費も復調しているが、1月のレベルと比較するとまだ7.5%低い。中間層では、1.9%減となっている。
大きな買い物はしばらく我慢
アメリカの成人がコロナ収束後にお金を使いたいと考えているもの:上から「服」「旅行」「電話などのガジェット」「車」「家」「スポーツ・アウトドア用品」「特になし」。年収別に結果を一覧:左から「5万ドル未満」「5万ドル〜10万ドル未満」「10万ドル以上」「合計」
eMarketer
高所得者を含め、多くの消費者は高額出費を控えている。投資可能な資産が1億ドル以上の人を対象にしたCNBCの調査「Q2ミリオネア・サーベイ」の結果にも、これが反映されている。「高額出費」には不動産、自動車、旅行などが含まれ、この調査によると「こうした買い物に踏み切るまでには、少なくともあと1年はかかるだろう」との予想だ。
モーニング・コンサルト(Morning Consult)による6月の調査でも、同様の結果が出た。しかし、なかには我慢せずにお金を使った人もいるようだ。特に所得分布の最上位でこの傾向が強く、高額出費を控えた人(15%)に比べ、控えなかった人(21%)の方が多かった。
「節約志向」は幅広い層に浸透している
アメリカの世帯年収分布図(2019年10月時点)
eMarketer
パンデミック後の世界で消費者が取りそうもない行動とは、無頓着にお金を使うことだろう。全ての所得層において「お買い得商品を選ぶ」ことは習慣化している。
IRIによる2019年9月の調査では、年収3万5千ドル未満の回答者の79%と、10万ドル以上の回答者の63%が「節約のため低価格ブランドの商品を試すことがある」と回答した。それぞれの所得層の半数かそれ以上が「プライベートブランド商品をよく買う」とした。
倹約精神が広く浸透しているもうひとつの印として、1ドルショップの人気がある。2019年10月から2020年1月の間に行われたCivicScienceの調査では、1ドルショップついて、「好んで買い物する」「どちらとも言えない」「利用したくない」の選択肢が設けられた。
年収5万ドル未満の層では「好んで買い物する」と回答する人(50%)が「利用したくない」と答える人(11%)より多かった。これは予想通りともいえる。しかし、年収5万〜10万ドル未満の層でも「好んで買い物する」と回答する人(37%)が「利用したくない」と答える人(20%)より多いという結果が出た。年収10万ドル以上の層ではこの比率はほぼ半々(31%対30%)となっている。
人々の倹約志向を見る限り、コロナ下での買い控えはしばらく続くと考えられる。2000年代末の大不況から徐々に復活していった頃と同様、特に低所得者層にとってはバーゲン品探しは生活のなかでの重要課題であり続けるだろう。
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[原文:How has the pandemic affected spending across income brackets?]
(翻訳・野澤朋代)