脱インテルの一歩。アップルが独自半導体「M1」搭載「MacBook Air」など3シリーズ発表…ノート型は10万4800円から

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出典:アップル

アップルは11月11日(日本時間)、2020年6月に予告していた独自の半導体(Appleシリコン)「M1」搭載Macを3シリーズ発表した。Mac mini、MacBook Air、13インチMacBook Proからなり、国内発売はいずれも11月17日から。すでに予約は開始している。

価格は以下のような構成。

M1搭載Mac mini:

256GBモデル(8コアGPU) 7万2800円
512GBモデル(8コアGPU) 9万2800円

M1搭載MacBook Air:

256GBモデル(7コアGPU) 10万4800円
512GBモデル(8コアGPU) 12万9800円

M1搭載13インチMacBook Pro:

256GBモデル(8コアGPU) 13万4800円
512GBモデル(8コアGPU) 15万4800円

※いずれも税別価格

デザイン変更はほぼなし? 中身を「M1」にアップデート

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M1版MacBook Air。

出典:アップル

M1搭載のMacシリーズは、興味深いことに、従来機種から外観デザインのアップデートはほぼなさそうだ。製品写真やサイズなどのデータをみると、外観はほぼ同じで、中身だけをM1チップ仕様につくりかえたように見える。

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M1搭載Macで最も安価なモデルとなるMac mini。

出典:アップル

例えば、Appleシリコン版と、従来からのインテルCPU版が併売される13インチMacBook Proの場合、それぞれサイズと重量は完全に同一になっている(厳密に言うと、バッテリー容量はM1版が0.2Whだけ多い)。

アップルの発表によるとインテル版との「差」は、主にM1の処理性能と、優れたバッテリー駆動時間(電力効率)にあるようだ。

MacBook Proの場合、M1のCPU処理速度(アプリなどプログラムのビルド処理で比較)は、前世代モデルにあったインテルの「1.7GHzクアッドコアIntel Core i7」搭載モデルより最大3.5倍高速だとしている。

一方、バッテリー駆動時間は、M1版が最大17時間(無線インターネット接続で計測)に対して、併売されるインテル版は最大10時間(同)と、1.7倍長くモバイル利用ができるようになっている。

また、利便性の面では、M1チップはiPhoneやiPadなどと共通のArmベースの設計であるため、iPad向けアプリの多くが、そのままM1版Macでも動作する。iPad版アプリをiOS以外で動作させることはアップルにとっても初の試みで、うまく機能すればMac向けアプリやサービスの活用の幅を大きく広げる可能性がある。

なお、チップの設計は、iPhoneやiPadシリーズに搭載あれるアップルAシリーズの延長線上にあると思われるが、今回全シリーズでLTEや5Gの搭載オプションはない。

シリーズごとの「性能差別化」は?

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MacBook Airに搭載されるM1チップのイメージ。CPU、GPU、ニューラルエンジン、セキュリティーチップといった機能が1チップに入っているが、非常にコンパクトだ。

出典:アップル

10月30日のアップル決算で明らかになったとおり、コロナ禍を経て、Macの需要は大きく高まっている。Macの売り上げは、直近の四半期に前年同期比で30%も成長した。

ビジネスが追い風を受けるなかで、M1版Macの最大の疑問は、「シリーズごとの性能差はあるのか」という点だ。

通常、PC製品は、価格帯に応じて心臓部のCPUやGPU(グラフィックチップ)の性能を変え、それに合わせて価格も変更してラインナップされるのが一般的だ。

シンプルに言えば、安価な製品はそこそこの速さ、高価な製品はより高速な処理能力を持たせている。

一方、M1版Macの3シリーズをみる限り、スペック表上はその差が顕著にあるようには見えない。

どのM1チップもCPUは8コア(高性能コア4コア+省エネの高効率コア4コア)で共通、GPUは10万円強の「一番安価なMacBook Air」が7コアになる以外、8コアGPUで統一されている。

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MacBook Airのオーダー画面。最廉価モデルでも、メモリー容量は上位機同様に増やせるなど、大きく差別化された様子はない。

出典:アップル

メモリーについても、どのモデルも標準8GBで、+2万円のオプションで16GBにアップグレードでき、差別化はなさそうだ。

デスクトップマシンであるMac miniは別として、ノート型MacのMacBook Airと13インチMacBook Proは、かなり似通った性質を持った製品だ。液晶ディスプレイは、いまや両者ともに同じRetinaディスプレイで、解像度も2560×1600ドットと共通。

仮にAirとProに処理性能の大きな差がないのであれば、極端な話、違いは「Touch Barの搭載(13インチMac Book Pro)」「バッテリー駆動時間」「空冷ファンレスかどうか(MacBook Airはファンレス仕様)」程度しかないということになる。

「Pro」をどういう位置付けで「Pro」と名乗らせているのか。アップルにおけるMacの製品戦略は、実機レポートや今後の情報アップデートで改めて言及していきたい。

(文・伊藤有

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