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「DXをバズワードに終わらせない」エン・ジャパンSaaS領域ファンドに出資

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エン・ジャパンの鈴木孝二社長。DXの100億円投資枠の設立には、人材ビジネスとは別に、新たな柱を打ち立てる狙いがある。

撮影:滝川麻衣子

エン・ジャパンは11月13日、SaaS(Software as a Service)領域に強いベンチャー投資企業「One Capital」に5億円を出資したことを明らかにした。エン・ジャパンは2020年7月に100億円の投資枠を設定し、営業やバックオフィスのDXを提供する国内外のベンチャーへの出資を加速している。

投資先ベンチャーのツールやサービスを、本業の人材支援の顧客である15万社の中小企業ネットワークに提供することで、顧客のDX支援を強化。人材ビジネスの顧客である中小企業の経営を活性化し、人材サービスの利用も活発化という「循環システム」を確率する狙いがある。

One Capitalへの出資もこうしたDX支援の一環。One Capital経営陣を自社の戦略アドバイザーとして迎え、SaaS領域の投資先選定で、知見を共有する考えだ。

エン・ジャパンの鈴木孝二社長はBusiness Insider Japanの取材に対し、新型コロナを契機に、日本でも国をあげてDXの必要性が叫ばれる現状を踏まえ、こう話す。

「DXは2020年のバズワードのようになっているが、中小企業にとってはハンコをなくすことや紙を電子化するなど、目の前のデジタル化の話に止まりがち。本来は人材や組織のITリテラシーを上げ、ビジネスそのもののDXによる生産性向上と思考の変革が必要。その支援に力を入れる

人材ビジネスを本業とする同社が、100億規模の大型投資枠を設けた背景には、本業の人材ビジネスが、経済環境に左右されやすいことがある。

リーマン・ショック、新型コロナにの感染拡大など、不可抗力的な厳しい経済環境に対抗するためにも、人材ビジネスに止まらない、新たな収益の柱を打ち立てていく狙いだ

生産性の高い人材を生産性の低い分野に送り込むなど、人材の流動化で企業を支援してきた同社が、DX支援による生産性向上というアプローチを結実させられるか。今後の展開が注目だ。

SaaS領域の目利きをアドバイザーに

WORK STYLE

新型コロナの到来で、従来のビジネスのやり方の見直しを迫られた企業はあまりに多い。

撮影:今村拓馬

エン・ジャパンが今回出資するのは、One Capitalが運営する1号ファンド。One Capitalは、元セールスフォース・ベンチャーズ日本代表の浅田慎二氏と、元ボストン・コンサルティング・グループ Managing Director & Partner の坂倉亘氏が設立した、独立系のベンチャーキャピタルだ。

大企業でのデジタル変革や、日本のSaaS領域での投資戦略に経験豊富な2人をアドバイザーに迎えることで、エン・ジャパンのDX投資戦略を、効率的に進めていく考えだ。

エン・ジャパンの鈴木社長は「まずはSaaSの中でも、セールス(営業)テック領域のスタートアップに出資・協業する」と明言。出資先のサービスを、取引先の中小企業に導入する流れを作る。

というのも、人材ビジネスの取引先はコロナ以降、大きな変化に戸惑っているという。

「一番の困りごとは、今の売り上げをどうやっていくのかだ。やり方を変えていかなければ、急激な変化についていけないという危機感が強い。どんなBtoB企業でも、営業は必須で、マーケット自体も大きい。営業分野のDXにまずは注力することで支援していきたい」(鈴木社長)

社長直轄チームはパイロットファーム

100億円の投資先は、今回のOne Capitalのようなベンチャーキャピタルと、DX分野のサービスやツールを開発するスタートアップの両軸で進めている。投資計画を推進するのは、外資コンサルタントや投資銀行出身者を中心につくる、社長直轄のDXチーム。2020年4月に新設し、現在25人が専属だ。

投資先のスタートアップの選定の際に特徴的なのが、例えばセールステックのSaaSにしても、このDXチームが「パイロットファームのような役割を果たし、実際に使ってみて判断すること」(DXチーム担当者)だという。もともと人材ビジネスではHRテックを強みとし、営業はもとより、各部署のデジタル化を率先してきた社風がある。

「実際に自分たちが、使ってみていいと思ったサービスにしか投資しないし、顧客にも勧められないのは当然のこと」(鈴木社長)

コロナ直撃で中間決算は減収減益

一方、エン・ジャパンが11月12日に発表した、2021年3月期第2四半期(4〜9月期)決算は、売上高が前年同期比26%減の206億円、本業の儲けを表す営業利益が同53%減の29億円、最終利益が同62%減の15億円の、大幅な減収減益決算だった。

新型コロナ感染拡大の影響で、企業の採用需要が低下したことから、求人サイトの広告や人材紹介の売り上げが減少した。

景気に左右されやすい本業に対し、DX投資による新たな収益の柱を立てるという戦略が、どう成果を形作っていくのか。100億円投資枠は、立ち上げから3年間で一定の成果を目指すという。

(文・滝川麻衣子)

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